1.航空機の発注から組立開始

航空機のオーダーからデリバリーまでの流れ(スクート編)

航空機のオーダーからデリバリーまでの流れ

スクートに2015年1月、同社初めての787がデリバリーされました。そのデリバリーフライトに同乗する機会がありました。今回は、この取材に基づき、航空会社が航空機を発注しデリバリーまで流れ、さらにデリバリーフライトについて、一般的な流れをスクートに引き渡しされた機体を例にまとめました。

1.航空機の発注から組立開始
2.航空機の最終組立
3.航空機の塗装、テストフライトから契約まで
4.航空機デリバリーの準備とデリバリーフライト

最終更新日:2015/07/29

1.航空機の発注から組立開始

1-a 航空機の発注

シンガポール航空は787-9を用いた機材計画
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シンガポールを拠点にする中・長距離路線を運航する格安航空会社(LCC)のスクートは、2012年6月に就航した航空会社です。スクートが受領した787は、親会社のシンガポール航空が2006年10月、787-9を20機発注したものです。その発注当時、シンガポール航空は787-9を用いた機材計画を策定したものの、ボーイングの製造時期が近づき、同社の計画に合わないと判断されました。

シンガポールを拠点にする中・長距離路線を運航する格安航空会社(LCC)のスクート
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シンガポール航空が787を発注した時点の想定より、ファースト、ビジネスなど上級クラスのスペースが広くなり、エコノミーは十分な座席数を設置できないと考えられました。このため、子会社として新たに設立したスクートに787を購入する権利が譲られました。スクート、シンガポール航空、ボーイングは、発注者の契約を変更し、その内容も787-9を10機、787-8を10機としました。

今回の787-9は2012年の発注時点で、機種変更が出来ず、確保されている製造ラインの787-9を最初に導入し、6機受領後に787-8を導入することとなりました。

この一連の契約と契約変更により、1,000機超の発注の中でも220機ほどの時点と、比較的早い時期の納入が実現しました。シンガポール航空の発注から数えると、787の開発の難航もあったことから約8年3カ月、ローンチカスタマーの全日空(ANA)にデリバリーされた2011年9月25日から数えても1,217日、約3年3カ月後の納入となりました。

Scootへの787受け渡し
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一般に、航空機の発注は数年先の事業展開を予想し、発注が行われています。単通路機で、機数の多い737、A320などの場合は、発注から納入まで2年から3年という場合もあります。ただし、シンガポール航空が契約した時点から数え、機体の開発が進められていた787は、比較的長い歳月を要しました。

このため、発注後の航空業界の競争激化や、発注時に想定していなかった長距離路線LCCの展開、シートの大型化という顧客サービスの変化に遭遇しますが、難しい局面をうまく乗り切り、導入に至った良い事例の1つともいえるでしょう。

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1-b 航空機を形作る部位づくり

ロールスロイスのエンジン
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発注を受け、航空機メーカーは、機体製造に入ります。この製造は、ボーイング以外に様々な国の企業が携わっています。メーカーであるボーイングに直接納入する部品では、アメリカでは胴体前部の前方、主翼固定部分と可動前縁、胴体後部、垂直尾翼、エンジンナセル、カナダでは翼胴フェアリング、イギリスで降着装置、イタリアで中央胴体と水平安定板、フランスで客室扉、スウェーデンで貨物室扉、オーストラリアで主翼可動後縁、さらに韓国で主翼端が製造されています。

ボーイングに直接納入する日本のティアワン(Tier1)メーカーを見ると、川崎重工が胴体前部の後方部、主翼格納部、主翼固定後縁、富士重工は中央翼と川崎重工が製造した主脚格納部を組み合わせ、そして三菱重工が主翼後縁を除いた主翼全体を担当しています。

このうち、川崎重工で製造する胴体前部は、炭素繊維複合材料を使い、従来の航空機と異なり継ぎ目のない一体構造として胴体が製作されています。さらに、構造にフレーム取り付けをはじめ、配管、ダクト、配線など艤装も行われ、ボーイングに納入されています。

ティアワンメーカーは2015年1月末現在、787の月産10機体制に対応する供給体制を整えています。今後は787-10の開発、生産が予定されており、ボーイングは2014年末で月10機のところ、2016年に月12機、2020年には月14機へ増産する計画です。

こうした部位は、日本では中部国際空港(セントレア)からボーイングのシアトル近郊のエバレット工場、あるいはサウスカロライナ州チャールストン工場に輸送されています。この空輸には747-400を改造した「ドリームリフター」という特別な貨物機を使い、ボーイングの工場へ運ばれています。

747-400を改造した「ドリームリフター」
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この部位供給の安定化をめざし、2014年3月、セントレアに保管庫「ドリームリフター・オペレーションズ・センター」が供用されています。このセンターはドリームリフターが天候不順などの理由から、予定していたスケジュールで飛来できない場合でも製造された787の部位を引き取り、一時保管ができます。これにより、ティアワンメーカー、日本からアメリカへ輸送するドリームリフターともに安定的な供給体制を築くことができ、ひいては最終組立ラインの月間生産数が安定し、ボーイングも生産機数の引き上げに対応できるようになります。

胴体前部の製造を担当する川崎重工の名古屋第一工場
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ちなみに、スクートはこのティアワンメーカーの中から、胴体前部の製造を担当する川崎重工の名古屋第一工場を2014年10月に訪問しました。訪問時には、日本の伝統的な神事が執り行われ、宮司により787の胴体をお清め、おはらい、さらに787を導入、運航するスクートの成功、成長が祈願されました。セントレアでは、こうした日本企業で作られた部位の積み込みや787の生産に欠かせない輸送機のドリームリフターを見学できる日本での唯一の場所として、今後も楽しむことができます。

次回は、「航空機のオーダーから、デリバリーまでの流れ(2.航空機の最終組立)」をお伝えします。

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