インドで小麦が都市排出を上回るCO2を吸収 JALの航空機観測で明らかに

インドで小麦が都市排出を上回るCO2を吸収 JALの航空機観測で明らかに

ニュース画像 1枚目:成田上空とデリー上空のCO2濃度季節変化の比較
© 国立環境研究所
成田上空とデリー上空のCO2濃度季節変化の比較

国立環境研究所と気象庁気象研究所は2016年12月、日本航空(JAL)の航空機を利用した温室効果ガス観測プロジェクト「CONTRAILプロジェクト」によって、インド・デリー周辺の冬小麦が都市排出を上回る二酸化炭素を吸収していることが明らかになったと発表しました。

「CONTRAILプロジェクト」は、JALが定期旅客便で運航する777-200ER、777-300ERに自動大気サンプリング装置(ASE)や二酸化炭素濃度連続測定装置(CME)を設置し、大気中の二酸化炭素濃度を測定、地球規模でデータを採取し、その解析結果を地球温暖化に関する研究のためのデータとして役立るプロジェクトです。

国立環境研究所の発表によると、二酸化炭素は本来、夏が終わると、人為的な排出に加えて、植物の呼吸活動が光合成の活動を上回るため、濃度は地表面から上昇を始める傾向があるものの、インド・デリー上空では1月から3月までは地表面付近であっても非常に低い濃度が観測され、デリーの地表付近には1月から3月にかけて二酸化炭素を吸収するメカニズムが存在することが考えられると指摘しています。

さらに国立環境研究所は、低い濃度が観測される時期は、冬小麦の生育時期と一致していることから、デリー周辺の冬小麦の栽培によって、人為放出量の2倍近くの二酸化炭素が吸収されていることを見いだしたとしています。この事実は、穀物による二酸化炭素の吸収が地球上の炭素循環を理解する上で無視できない量であることを示していると指摘、CONTRAILは既存の地上観測ネットワークでカバーされていない広い地域を高頻度に観測しており、今後も民間航空機の活用をさらに推進することで炭素循環の解明に大きく貢献できるとしています。

なお、この研究の成果は、2016年11月に、アメリカ地球物理学会発行の「Geophysical Research Letters」に掲載されています。

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