全日本空輸(ANA)は2024年3月27日(水)より、ボーイング787-10型機の運航を開始します。運航開始に先立ち、羽田空港ANA格納庫にて国内線仕様機「機体番号:JA983A」がメディア向けにお披露目されました。その模様をレポートします。
"国内線次世代フラッグシップ" ボーイング787-10
ANAは、787-10を国内線の"次世代フラッグシップ"として位置づけています。従来の国内線幹線主力機であるボーイング777型機と比べると約25%の燃費改善が見込まれるなど、経済性・効率性が高い機材です。受領にあたり、アメリカ・チャールストンのボーイング最終組み立て工場に整備士を派遣、最終組み立て後の部品作動検査を実施。派遣されたAMA整備センター機体事業室ドック整備部の坂本雅宏氏によると、ボーイングが定めている受領前の整備に加え、ANAが独自に定めた検査項目による整備も実施しているとのこと。安全性にも最大限の配慮がなされています。
787-10 機体の外観
「JA983A」は格納庫内で整備中の777-200「JA716A」の隣に駐機。両者を見比べてみると、胴体の長さはほとんど同じように見えます。それもそのはず、787-10の全長は787シリーズの中では最長で、777-200よりも約1m長いのです。一方、胴体の幅についてはほかの787シリーズと同一で、かなり細長い印象を受けました。
エンジンについては、ANAが従来787向けに選択してきたロールス・ロイス製のトレント1000から、GE製のGEnxに変更。エンジンナセルに描かれたGE社のロゴが特徴的です。787-10のテスト飛行を担当したANAフライトオペレーションセンターB787部機長 谷口凉氏によると、エンジンの違いを意識したオペレーションを行うことにより、より省燃費かつ経済性の高い運航が実現するとのことです。
787-10国内線仕様の座席数
787-10国内線仕様の座席数は、プレミアムシート28席、普通席401席の2クラス合計429席。ANAが現在国内線で使用している機材の中では、777-300に次ぐ2番目の収容力を誇り、777-200の座席数(最大405席)を上回ります。一方、普通席のアブレスト(席の配置)は3-3-3、プレミアムクラスは2-2-2と、それぞれ777シリーズ(普通席3-4-3、プレミアムクラス2-3-2)と比較すると1列少なくなっています。
787シリーズ同士の座席数を比較すると、普通席の数は787-10が最多で、787-8と比べると約80席も増加しています。一方、プレミアムクラスの数は787-10と787-9(78G仕様)が28席で最多タイ。ただし78G仕様の787-9の普通席は347席と787-10よりも50席以上少なく、787-10の収容力の高さがうかがえます。
■ANA 787国内線仕様 座席数比較
クラス | 787-8 | 787-9(789) | 787-9(78G) | 787-10 | ※参考777-200(772) |
---|---|---|---|---|---|
プレミアムクラス | 12 | 18 | 28 | 28 | 21 |
普通席 | 323 | 377 | 347 | 401 | 384 |
合計 | 335 | 395 | 375 | 429 | 405 |
プレミアムクラス
28席用意されているプレミアムクラスのシート。座席の横幅は国内線最大クラスの56インチ(アームレスト内部のくぼみを含む)が確保されており、かなり大きくゆったりとした座り心地です。また、隣席との間には大きな仕切り(ディバイダ―)もあり、国内線でありながらも一定程度のプライベート空間が確保できます。
背もたれとレッグレストの角度は、いずれも手元のリモコンで操作することが可能。パーソナルモニターのサイズも15.6インチと国内線では最大です。プレミアムクラスはすべてが"大きい"仕様で、近距離国際線のビジネスクラスと比較しても遜色のない座席といえるでしょう。
普通席
機内の大半を占める全401席の普通席。目を引くのが座面後部に配置された大きなパーソナルモニターで、サイズはこちらも国内線機材では最大の13.3インチ。加えてモニター下部にはUSBポートが、シート下にはPC電源も用意されており、国内線普通席としては充実した客室装備が揃っています。
シートは大画面モニターが埋め込まれているとは思えないほど薄型ですが、座り心地は薄さを感じない国内線としては十分すぎるほど快適なもの。骨盤を支える背もたれ、身体にフィットするシート形状に加え、特徴的な形のテーブルやアームレストの高さや角度など、随所に快適性を追求した設計が行われています。また、カップホルダーの形状もクローバー型に変更され、紙コップが取り出しやすいよう改良されています。
787-10国内線仕様の運航初便は、羽田発新千歳行のNH59便で、使用機材は初号機である「JA931A」を予定。今後は、国内線フラッグシップとして11機導入し、777-200、300を置き換えていきます。