三沢F-35A戦闘機の墜落事故、パイロットが空間識失調に陥ったか

三沢F-35A戦闘機の墜落事故、パイロットが空間識失調に陥ったか

ニュース画像 1枚目:F-35A墜落時の航跡概要図
© 航空自衛隊
F-35A墜落時の航跡概要図

航空自衛隊は、2019年4月9日(火)に発生した第3航空団、三沢基地所属のF-35A戦闘機「79-8705」の墜落事故について、操縦していた細見彰里3等空佐が平衡感覚を失った「空間識失調」に陥り、そのことを本人が意識していなかった可能性が高いと推定原因を公表しました。これを受け、再発防止に向けたF-35A操縦者への教育や訓練など対策を徹底する方針です。

墜落は4月9日(火)19時26分30秒ごろと推定、青森県東方太平洋上で、三沢基地の東方およそ135キロメートル付近の洋上で発生しました。「79-8705」は4機編隊の1番機として三沢基地を離陸し、訓練空域でF-35Aの4機で対戦闘機戦闘訓練を実施中、通信が途絶、レーダー航跡が消失しました。

空自は、調査にあたりF-35Aのデータリンクや地上レーダーなどの記録も使用し、原因解明にあたりました。判明した流れは、墜落直前に地上管制機関から、アメリカ軍機との離隔距離をとるための降下指示を受け、当該機は「はい。了解」と送信し、31,500フィート付近で左降下旋回を開始しました。

その後、離隔距離をとる左旋回の指示を受け、左旋回後に落ち着いた声で「はい、ノック・イット・オフ(訓練中止)」と送信されました。この間、平均降下率が時速およそ900キロ以上の急降下姿勢で高度を下げ、さらに時速およそ1,100キロ以上の急降下姿勢が継続し、直後に墜落したと推定されています。緊急脱出の形跡も確認されず、機体は激しく損壊し、部品や破片などが海底に散乱していました。

こうした状況から、急降下姿勢で、有効な回復操作が可能な最低高度に至っても回復操作がみられず、「空間識失調」に陥り、本人が意識していなかった可能性が高いとみられます。

空自はこれを受け、F-35A操縦者に対する空間識失調の教育を実施するほか、空間識訓練装置やシミュレーターによる訓練を行います。また、可能性が極めて低いものの要因として完全に否定できない重力に起因する意識喪失(G-LOC)への対応として、防止の教育やエンジン制御、操縦や電気系統について機体の特別点検を実施します。

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