737 MAX 8から「737-8」にリブランド?!

737 MAX 8から「737-8」にリブランド?!

ニュース画像 1枚目:ボーイング 737-8-MAX
© Boeing
ボーイング 737-8-MAX

ボーイングは、2020年8月19日(水)付けでポーランドのエンターエアから「737 MAX 8」を受注したと発表しました。新型コロナウイルスで航空業界が影響を受ける中、エンターエアは「737 MAX」の発注で成功を確信していると強調しています。このプレスリリースは、ボーイングが従来「737 MAX 8」と記した機種を初めて「737-8」と表記し、「737 MAX」ファミリーをリブランドする方向性が感じられます。そこで、737 MAXのこれまでの経緯を振り返り、墜落事故後の受注、さらにリブランドする場合の他機種との整合性、さらに今後について勝手に考えてみました。

■737 MAXの経緯おさらい
「737 MAX」は2016年1月に初飛行し、ライバル機種のエアバス製A320neoの2014年9月の初飛行に1年4カ月遅れで登場した機種です。ボーイングのベストセラーで、実績ある「737ファミリー」の最新機種として鳴り物入りで市場に投入されました。

「MAX」は、効率の良い新型エンジンを搭載し、航空会社の収益性を「最大化(MAX)」する機種で、737ネクスト・ジェネレーション(NG)を使用する航空会社の機材更新として、さらに勢力を拡大する格安航空会社(LCC)やさまざまな用途で使用できる機種として売り込まれました。

2017年5月の初号機引き渡し後、順調に納入し、多くの航空会社が使用していました。ところが、2018年10月のライオンエア、2019年3月のエチオピア航空と2件の墜落事故が続き、世界各国の航空当局が運航停止を命じました。多くの受注を得ていたことから生産は続けられたものの、運航停止は1年を超え、大量に納入待ちを控える機体が保管され、さらに発注キャンセルが積み重なり、現在は負のイメージが強くなっています。

■737 MAX墜落後の受注
737 MAXの墜落と運航停止を受け、この機種の受注はあまりありません。墜落後初めての契約は2019年6月に締結されたIAGの200機発注です。この際、ボーイングはプレスリリースで「737 MAX 8」と「737 MAX 10」を受注したと表記していました。しかし、IAGのプレスリリースは「737-8」と「737-10」とボーイングと異なる機種名の表記で、「MAX」のリブランドが噂される証左となっていました。

エンターエアと契約したプレスリリースは、ボーイングが従来「737 MAX 8」と表記した機種を「737-8」と記しています。このプレスリリースでは、タイトル部分を含め、「737 MAX」を5回、「737-8」を4回、それぞれ使用しています。「737 MAX」の用語は、いずれも機種全体を示す言葉として使用しています。

注目される「737-8」は、もっとも目立つタイトル部分に使用しているほか、今回の契約を締結した2機の個別機種を意味する言葉として使用しています。737 MAXの2件の墜落事故とそれに伴う運航停止前、ボーイングはプレスリリースで「737 MAX 8」と表現していた言葉にあたります。

■他機種との整合性
今回の「MAX」ファミリーの「737 MAX 8」改め「737-8」が正式に採用された場合、他機種との整合性も取れそうですが、厄介な部分もあります。新しい機種として日本でも馴染みの深い787ファミリーは、個別機種を「787-8」「787-9」「787-10」と表記しています。「737 MAX 7」は「737-7」、「737 MAX 8」は「737-8」、「737 MAX 9」は「737-9」、「737 MAX 10」は「737-10」と記した場合、大きな違和感は無いようです。

ただし、1世代前の737ネクスト・ジェネレーション(NG)では737-700、737-800、737-900と表記し、個別機種の最後に「00」と記していました。この「00」部分は、ボーイングが独自に設定した顧客企業別に識別するカスタマーコードが入り、例えば、日本航空(JAL)であれば「46」が入り「737-846」、全日空(ANA)であれば「81」が入り「737-881」などと表記されていました。

カスタマーコードは2016年に廃止され、737ではラインナンバー「6082」以降、明確には識別されていません。このため737NGと737 MAXで一部、識別に不明確な部分が残るものの、MAXファミリーの機種を「737-8」にリブランドした場合、NGを「737-800」、MAXを「737-8」と記さないと混同する場面の発生が予想されます。

機数の多いNGと、今後多くなるであろう「737 MAX」で、何らかの区切りや区分けは必要となる可能性があるものの、「737 MAX」ファミリーとしての呼び名を変更することで乗り越えられる課題とも考えられます。

■「MAX」の表現は変わるか注目
ボーイングはこれまで何も発表しておらず、噂レベルで言われてきた「737 MAX」のリブランドですが、この発表は運航再開の時期とみられます。アメリカ連邦航空局(FAA)は、2020年内にも正式に運航再開を認可するとの見通しも一部で伝えられています。

2件の墜落事故と運航停止命令、大量に保管された機体、発注キャンセルと「MAX」のブランドには、負のイメージが強く残ります。ただし、737ファミリーは、さかのぼること53年前の1967年4月9日の初飛行から、長年にわたり信頼を積み重ねてきた機種です。

さらに今回の契約発表で、運航再開に向け改良を加えて販売を継続するボーイングの意思とも読み取れ、ファミリーとして識別した「MAX」を新たな表現に変え、「737 MAX」ファミリーをいかにリブランドするか、大いに注目されます。

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