2019年10月コクピット窓損傷、パイロット・チェックリスト改訂

2019年10月コクピット窓損傷、パイロット・チェックリスト改訂

ニュース画像 1枚目:ウィンドシールド アーキング痕の状況
© 運輸安全委員会
ウィンドシールド アーキング痕の状況

運輸安全委員会は2020年10月1日(金)、アイベックスエアラインズの機体記号(レジ)「JA11RJ」、CRJ-700で発生した重大インシデントの報告書を公表しました。飛行中、コクピット窓にひびが入り、飛行中に機内の気圧が異常低下し、乗客用の酸素マスクが自動展開したフライトでした。この事案を受け、設計・製造者はパイロットが万一の事態に対処するチェックリストを改訂しています。

この事案は2019年10月30日(水)、仙台発福岡行きIBEX16便として飛行中、パイロットがコクピット窓のひびを認識し、航空管制上の優先権を要請して福岡空港に着陸しています。乗員・乗客にけが人などは発生しませんでしたが、緊急降下中に乗客用の酸素マスクが自動展開しました。

当該機は仙台空港を16時31分に離陸、福岡空港へ飛行中の17時56分ごろに機長が機長席前方の窓にひび割れを発見し、チェックリストの手順に従い対応しました。指示通りに手動操作で対処し、機内の気圧を低下させたところ、客室高度が上昇しました。システム異常をパイロットに知らせる「EICAS(エンジン計器・乗員警告システム)」に客室の異常を示す「CABIN ALT (Caution)」が表示され、すぐに「CABIN ALT (Warning)」になりました。これを受け、17時59分ごろ機長は再びチェックリスト通り、高度1万フィートまで緊急降下しました。

さらに18時2分にEICASは「PASS OXY ON (Caution)」が表示され、客室内で酸素マスクが自動展開しました。この間、飛行高度は1万フィートを維持したものの、客室高度は12,400フィートから14,000フィートに上昇しました。さらに飛行を継続し、石見空港付近で飛行高度1万フィートを維持しながら、客室高度も1万フィートに下がり、その後に緊急事態を宣言して福岡空港へ着陸しました。

報告書では、チェックリストに従って対処したものの客室高度が急上昇し、機内与圧の異常な低下が発生したと推定しています。このチェックリストは、窓の損傷程度、飛行高度を考慮せず、一律に最大上昇率で客室高度を上昇させる操作が求められており、報告書では高高度で飛行する場合に同様の事態が発生すると機内酸素マスクが自動展開することは不可避と指摘しています。

これを受け、設計・製造者に対して、飛行高度に応じた客室高度を調整する手順、その要領の追加と、機内与圧が異常な低下に陥らないチェックリストの改訂を求め、実施されています。

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