福岡でのA320前脚損傷で走行不能、エアバス整備マニュアル見直し

福岡でのA320前脚損傷で走行不能、エアバス整備マニュアル見直し

ニュース画像 1枚目:重大インシデント発生時の前脚
© 運輸安全委員会
重大インシデント発生時の前脚

運輸安全委員会は2021年2月18日(木)、2018年3月にピーチのエアバスA320型機が着陸後、前脚損傷により地上走行が不能になった重大インシデントについて、調査報告書を公表しました。この事案を受け、エアバスは技術通報(SB)を発出しているほか、航空会社などに整備マニュアルの改訂も周知しています。

この事案は、2018年3月24日(土)にAPJ151便として運航していたA320の機体記号(レジ)「JA805P」が福岡空港へ着陸後、速度を40ノット(およそ時速74キロメートル)まで落としたところ、細かい振動を感じたため操縦していた副操縦士から機長に交代したところで発生しました。

この際、機長は誘導路に入るため、ステアリングを操作したものの進行方向を変えることができず、振動が大きくなり、ブレーキを使い滑走路上で機体を停止させました。機首は滑走路16の中心線に対して左方向に約15度偏いて停止し、地上走行ができなくなりました。なお、出発地の関西国際空港では、副操縦士が外部点検を実施し、異常は確認されておらず、地上走行時のステアリング操作も正常でした。

この事案は調査中、運輸安全委員会が航空局へ情報提供を実施しています。前脚の上下のトルクリンクを接続していたピンがリンクから脱落し、滑走路上で発見されたことを受けた対応です。ピン脱落で前輪のステアリング制御が不能になり、前輪が90度横を向いて、自走できなくなったと報告書では推定しています。

ピン脱落の要因は、ピンのねじ部に腐食が発生し、ねじ山の強度が低下し、ステアリング操作時にトルクリンクからナットに伝わる荷重に耐えられず、ナットが抜けたと考えられています。腐食発生の要因は、機体製造後に整備でピンとナットの取付け・取外しが複数回実施され、トルクリンクが誤って組み立てられカドミウムメッキが損傷し、耐腐食性が低下したとみられています。

この事案を受け、エアバスは整備マニュアルを見直しています。ピンの詳細点検の手順部分で、クリーニング方法を分かりやすくし、腐食の点検方法を追記する改訂が行われています。組み立てで誤ったと想定されるピンの取付け手順は、グリースの塗布方法、塗布範囲が明確化されました。エアバスはこの事案の詳細と整備マニュアル改訂の周知に加え、当該部の初回検査と繰り返し検査を推奨する技術通報(SB)を発行しています。さらに、耐腐食性を向上させたピンとナットの開発も計画しています。

ピーチは、自社で運航するA320のピンを一斉点検し、腐食が疑われる場合は交換しました。グリースの状況をモニターと再塗布も実施しましたが、SB後は書面に従った検査を設定しています。また、機体の重整備を他社へ委託していたため、ピンの点検作業はピーチの検査員による立会い検査項目とし、安全性を担保しています。

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