F-4ファントムII初飛行から63年、日本で全機退役 見学できる場所は

F-4ファントムII初飛行から63年、日本で全機退役 見学できる場所は

ニュース画像 1枚目:語るところが多く、人それぞれ思うポイントも違うファントム (SYさん撮影)
© FlyTeam SYさん
語るところが多く、人それぞれ思うポイントも違うファントム (SYさん撮影)

63年前(1958年/昭和33年)の5月27日(火)、アメリカ海軍の要求を受け、のちにF-4ファントムIIとして日本でも親しまれる航空機が初飛行しました。開発を手がけていたマクドネル社は、「XF4H-1」として飛行。その開発を継続する中、マクドネルが第2次世界大戦で製造したジェット艦上戦闘機「ファントム」にあやかり「ファントムII」の愛称を付け、現在に至っています。

日本では1968年、アメリカ空軍向けF-4Eを日本仕様F-4EJとして、航空自衛隊への導入が決定しました。この年は、アメリカ海軍の世界初の原子力空母「エンタープライズ」が日本初訪問で佐世保に入港、また同じ年に小笠原諸島が日本に返還。その当時、導入は104機としていましたが、その後沖縄返還が実現し配備数が140機に増加しました。その全てが現在、退役しましたが、コロナ禍が落ち着いてから各基地に展示されている実機を見て、歴史を振り返ってみるのも良いでしょう。

ニュース画像 1枚目:NASAのマクドネルF-4AファントムII、海軍では145313
© NASA
NASAのマクドネルF-4AファントムII、海軍では145313

翼を折り畳めるファントムII 開発の歴史を思う

F-4ファントムIIは開発時、空母に搭載するため、主翼折り畳み機構が採用されました。空母内の格納庫はスペースが限られ、最大限に空間を有効活用するため、第2次大戦期からアメリカ海軍の艦載機は主翼の折り畳み機構が採用されています。最新のステルス戦闘機、F-35ライトニングIIでも海軍仕様のF-35Cは主翼折り畳み機構が採用されていますが、F-35A/Bにはありません。

ニュース画像 2枚目:空母カール・ビンソン甲板でのF-35CライトニングII
© U.S. Navy Photo by Mass Communications Specialist 3rd Class Erin. C. Zorich
空母カール・ビンソン甲板でのF-35CライトニングII

F-4ファントムIIは開発時に海軍仕様が先行し、油圧式の主翼折り畳み機構が採用されました。後に開発されたアメリカ空軍仕様は、この機構が残されたものの、複雑な仕組みを避け、軽量化のため油圧式から手動に変更、空自F-4も手動で折り畳みできました。航空祭などでその様子を見た方も多いかもしれません。退役した現在、その主翼に付く折り畳みできるヒンジを近くからじっくり見てみるのも良いでしょう。

ニュース画像 3枚目:アメリカ空軍のRF-4C、展示のため翼を折り畳み道路で移動
© U.S. Air Force photo by Airman 1st Class John R. Wright
アメリカ空軍のRF-4C、展示のため翼を折り畳み道路で移動

主翼折り畳み機構は軍民関係なく採用されており、今後はより身近に感じる可能性があります。現在、ボーイングが開発を進め、全日本空輸(ANA)が発注したボーイング777X型は、主翼が71.8メートルと現在の777の最大64.8mより7m長くなります。この主翼長は、空港での駐機時に隣の機体と干渉する恐れがあり、現在の空港施設では改修が必要になります。このため、777Xは駐機時に現在の777と同じ64.8mに収まるよう主翼先端部に折り畳み機構が採用されています。

ニュース画像 4枚目:全日空に導入される777Xで主翼先端部が折り畳みされる様子を頻繁に見ることができるかもしれません
© Boeing
全日空に導入される777Xで主翼先端部が折り畳みされる様子を頻繁に見ることができるかもしれません

このため、空港施設は改修することなく現行通り、777Xを受け入れできます。実際に777Xが運航された際は、乗降時に客室内から、駐機時には主翼先端部が上方向に折り曲げられている様子を見ることができるでしょう。軍民問わず、主翼折り畳み機構が採用される最大の理由は、スペースの問題のようです。

コロナ後に訪問したいF-4たち

ニュース画像 5枚目:百里基地・雄飛園に展示されている「17-8302」(FT51ANさん撮影)
© FlyTeam FT51ANさん
百里基地・雄飛園に展示されている「17-8302」(FT51ANさん撮影)

空自で戦闘機・偵察機として活躍したF-4ファントムIIは2021年3月17日(水)、全機退役しました。偵察機としてのRF-4E、RF-4EJは2020年3月、対領空侵犯措置任務でスクランブル(緊急発進)するF-4EJ、F-4EJ改は2020年12月、そして岐阜基地の飛行開発実験団に配備された機体も退役しています。

日本で最後に飛行したファントム3機から、1機は岐阜基地に近い岐阜かかみがはら航空宇宙博物館に展示される予定です。展示機はF-4EJ改の「07-8431」になると予想されます。空自に初めて導入された「17-8301」なども今後、いずれかの基地で見ることができれば、アメリカでの開発の歴史、さらに空自での活躍を振り返ることができそうです。

これまで基地内で展示されていた機体、退役前に展示用に移動した機体などを以下にまとめています。航空祭は新型コロナウイルスの影響で開催には厳しい状況ですが、今後、落ち着いた時には近くのエアショーへ足を伸ばす際に見学してみてはいかがでしょう。

ニュース画像 6枚目:EJ改初号機「07-8431」 (Katyさん撮影)
© FlyTeam Katyさん
EJ改初号機「07-8431」 (Katyさん撮影)
■各基地で展示中・展示予定のF-4ファントムII
機番所在地コメント
47-8345千歳基地第302飛行隊マーク
57-8375県立三沢航空科学館第8飛行隊マーク
17-8302百里基地(雄飛園)2012年度航空祭時の40周年記念塗装
57-6906百里基地(雄飛園)偵察機仕様
37-8319茨城空港第302飛行隊マーク
87-6412茨城空港偵察機仕様
87-8404小松基地右)第306飛行隊、左)第303飛行隊マーク
17-8440浜松広報館エアーパークファントムII世界最終製造機
87-8409岐阜基地各務ヶ原飛行場創設百周年記念デジタル迷彩
57-8360新田原基地第5航空団第301飛行隊マーク
37-8321那覇基地第8飛行隊マーク
17-8439美保基地展示予定
07-8429築城基地展示予定
97-8418百里基地尾翼のみ
27-8305新田原基地尾翼のみ
17-8301岐阜基地未定)日本ファントム初号機
07-8431岐阜基地未定)EJ改初号機
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