63年前(1958年/昭和33年)の5月27日(火)、アメリカ海軍の要求を受け、のちにF-4ファントムIIとして日本でも親しまれる航空機が初飛行しました。開発を手がけていたマクドネル社は、「XF4H-1」として飛行。その開発を継続する中、マクドネルが第2次世界大戦で製造したジェット艦上戦闘機「ファントム」にあやかり「ファントムII」の愛称を付け、現在に至っています。
日本では1968年、アメリカ空軍向けF-4Eを日本仕様F-4EJとして、航空自衛隊への導入が決定しました。この年は、アメリカ海軍の世界初の原子力空母「エンタープライズ」が日本初訪問で佐世保に入港、また同じ年に小笠原諸島が日本に返還。その当時、導入は104機としていましたが、その後沖縄返還が実現し配備数が140機に増加しました。その全てが現在、退役しましたが、コロナ禍が落ち着いてから各基地に展示されている実機を見て、歴史を振り返ってみるのも良いでしょう。
翼を折り畳めるファントムII 開発の歴史を思う
F-4ファントムIIは開発時、空母に搭載するため、主翼折り畳み機構が採用されました。空母内の格納庫はスペースが限られ、最大限に空間を有効活用するため、第2次大戦期からアメリカ海軍の艦載機は主翼の折り畳み機構が採用されています。最新のステルス戦闘機、F-35ライトニングIIでも海軍仕様のF-35Cは主翼折り畳み機構が採用されていますが、F-35A/Bにはありません。
F-4ファントムIIは開発時に海軍仕様が先行し、油圧式の主翼折り畳み機構が採用されました。後に開発されたアメリカ空軍仕様は、この機構が残されたものの、複雑な仕組みを避け、軽量化のため油圧式から手動に変更、空自F-4も手動で折り畳みできました。航空祭などでその様子を見た方も多いかもしれません。退役した現在、その主翼に付く折り畳みできるヒンジを近くからじっくり見てみるのも良いでしょう。
主翼折り畳み機構は軍民関係なく採用されており、今後はより身近に感じる可能性があります。現在、ボーイングが開発を進め、全日本空輸(ANA)が発注したボーイング777X型は、主翼が71.8メートルと現在の777の最大64.8mより7m長くなります。この主翼長は、空港での駐機時に隣の機体と干渉する恐れがあり、現在の空港施設では改修が必要になります。このため、777Xは駐機時に現在の777と同じ64.8mに収まるよう主翼先端部に折り畳み機構が採用されています。
このため、空港施設は改修することなく現行通り、777Xを受け入れできます。実際に777Xが運航された際は、乗降時に客室内から、駐機時には主翼先端部が上方向に折り曲げられている様子を見ることができるでしょう。軍民問わず、主翼折り畳み機構が採用される最大の理由は、スペースの問題のようです。
コロナ後に訪問したいF-4たち
空自で戦闘機・偵察機として活躍したF-4ファントムIIは2021年3月17日(水)、全機退役しました。偵察機としてのRF-4E、RF-4EJは2020年3月、対領空侵犯措置任務でスクランブル(緊急発進)するF-4EJ、F-4EJ改は2020年12月、そして岐阜基地の飛行開発実験団に配備された機体も退役しています。
日本で最後に飛行したファントム3機から、1機は岐阜基地に近い岐阜かかみがはら航空宇宙博物館に展示される予定です。展示機はF-4EJ改の「07-8431」になると予想されます。空自に初めて導入された「17-8301」なども今後、いずれかの基地で見ることができれば、アメリカでの開発の歴史、さらに空自での活躍を振り返ることができそうです。
これまで基地内で展示されていた機体、退役前に展示用に移動した機体などを以下にまとめています。航空祭は新型コロナウイルスの影響で開催には厳しい状況ですが、今後、落ち着いた時には近くのエアショーへ足を伸ばす際に見学してみてはいかがでしょう。
■各基地で展示中・展示予定のF-4ファントムII機番 | 所在地 | コメント |
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47-8345 | 千歳基地 | 第302飛行隊マーク |
57-8375 | 県立三沢航空科学館 | 第8飛行隊マーク |
17-8302 | 百里基地(雄飛園) | 2012年度航空祭時の40周年記念塗装 |
57-6906 | 百里基地(雄飛園) | 偵察機仕様 |
37-8319 | 茨城空港 | 第302飛行隊マーク |
87-6412 | 茨城空港 | 偵察機仕様 |
87-8404 | 小松基地 | 右)第306飛行隊、左)第303飛行隊マーク |
17-8440 | 浜松広報館エアーパーク | ファントムII世界最終製造機 |
87-8409 | 岐阜基地 | 各務ヶ原飛行場創設百周年記念デジタル迷彩 |
57-8360 | 新田原基地 | 第5航空団第301飛行隊マーク |
37-8321 | 那覇基地 | 第8飛行隊マーク |
17-8439 | 美保基地 | 展示予定 |
07-8429 | 築城基地 | 展示予定 |
97-8418 | 百里基地 | 尾翼のみ |
27-8305 | 新田原基地 | 尾翼のみ |
17-8301 | 岐阜基地 | 未定)日本ファントム初号機 |
07-8431 | 岐阜基地 | 未定)EJ改初号機 |