ユナイテッド航空が発注した超音速旅客機「Overture(オーバーチュア)」で再び、3発ジェット旅客機「トライジェット/トリジェット(Trijet)」に注目が集まっています。3発「Tri」のエンジンを持つジェット旅客機といえば、DC-10やMD-11をすぐに思い浮かべる方は多いと思います。そこで今回は、写真とともに3発ジェットエンジンを搭載する旅客機を振り返ってみます。
トライデント
ホーカー・シドレーHS-121トライデントは1962年1月9日(火)に初飛行。垂直尾翼付近のエンジンと、機体尾部の左右に付けられたエンジンが特徴です。ブリティッシュ・ヨーロピアン・エアウェイズが開発を打診し、製造されました。中国民航もこの機体を運航していました。
ボーイング727
ボーイング727型はトライデントからおよそ1年遅い、1963年2月9日(土)に初飛行。これに先立つボーイング707型の4発機から改良する意図も含み、短・中距離用に開発されました。1,800機超が製造されており、基本の727-100を発展させ、胴体を長くした727-200も登場し、トライジェットとして最も成功した機体と言えるでしょう。全日本空輸(ANA)が初めて導入したジェット機で、のちに727-200も導入しています。
DC-10/MD-11
3発エンジンの旅客機といえば、この機種を思い起こす人は多いでしょう。マクドネル・ダグラスDC-10は1970年8月29日(土)に初飛行。垂直尾翼にエンジン1基を備えているのはトライデント、727と同じですが、左右の主翼下パイロンにエンジンを懸架する方式を採用しています。
DC-10を発展させ、1990年1月10日(水)に初飛行したMD-11も同様のエンジン配置を採用しています。MD-11は現在も貨物機として運航されており、ルフトハンザ・カーゴが3機を2021年中にも退役させる予定です。日本ではフェデックス、UPS航空などが運航する機体を見ることができます。
ロッキードL-1011トライスター
1970年11月16日(月)に初飛行したトライスターは、全日空(ANA)が導入した機体です。ロッキード事件をめぐる機種としても知られています。300名を輸送でき、3発ジェット旅客機でも多くの旅客を乗せることができるANAでは初のワイドボディ機でした。この機種をきっかけに現在まで続くトリトンブルー塗装が登場、当時「スチュワーデス」と呼ばれていた客室乗務員の制服デザインは「トライスター・ルック」と呼ばれました。
超音速旅客機に登場するトライジェット
超音速ビジネスジェットの開発を手がけるアエリオンは、AS2超音速ビジネスジェットでエンジンの配置を初期段階では垂直尾翼に1基、機体尾部の左右にそれぞれ1基ずつを搭載するイメージを公開していました。2020年には、垂直尾翼に1基配置は変わらないものの、左右のエンジンは主翼下に懸架する形で公開していました。しかし、この開発は資金難を理由に2021年5月、中止されました。
超音速旅客機の開発を手がけるブーム・スーパーソニック(Boom Supersonic:正式社名はブームテクノロジー)が開発する超音速旅客機「Overture(オーバーチュア)」は、新たなトライジェットとして注目されています。実証機のXB-1は左右の主翼下に加え、尾部にエンジンが確認でき、これまで公開されているさまざまな資料でも同様のイメージ図が紹介されています。2021年に初飛行が予定されているXB-1の試験飛行で、詳細設計に向けて徐々に詰められて行くと見られますが、新たな音速機としてだけでなく、現在は新造機の無いトライジェットが復活するか、今後の開発進捗が楽しみです。