6月16日は、語呂合わせで「無重力(6=ム、16=ジュウロク)の日」。無重力は宇宙空間にアクセスすると体験できますが、地球上でも実験施設が設けられているほか、航空機を使った体験も可能です。航空機を使う場合、上昇後に下降する放物線を描く飛行で無重力の環境を作り出し、これをパラボリックフライトと呼んでいます。こうしたパラボリックフライトを専門、または実現する特殊な飛行機を紹介します。
■アメリカ・NASA
アメリカ航空宇宙局(NASA)は、様々な用途の航空機を保有しています。パラボリックフライト用途の機体として、かつてアメリカ空軍で使用されたボーイングKC-135を2機、運用していました。NASAは、この2機をレジ「N930NA」「N931NA」として登録。この2機が2004年に退役すると、後継機としてマクドネル・ダグラスDC-9-30旅客機、その後に軍用モデルのC-9Bに改修された機体を取得。「N932NA」として登録し、2014年までパラボリックフライト向けに使用しました。現在は、この用途のフライトは民間に委託されています。
NASAが無重力飛行を実施する場合に契約する企業は、ゼログラビティ社です。この企業はNASAの実験にとどまらず、無重力状態の結婚式開催など事業は多彩で、実際に特殊な空間を体験できます。使用する航空機は1976年にブラニフインターナショナルに納入され旅客機として活躍したボーイング727-200型を皮切りに、その後貨物機に改修された機体を使用しています。現在は、レジ「N794AJ」で登録されています。
■ヨーロッパ
フランス国立宇宙センター(CNES)とドイツ航空宇宙センター(DLR)が共同で使用するエアバスA310-300型をベースにした機体の「Zero-G」。現在、機体記号(レジ)「F-WNOV」としてフランス国籍で登録され、胴体には「AirZeroG」とその役割をはっきりと記している機体です。
1989年4月に初飛行、6月に旧・東ドイツの国営企業インターフルークに納入された機体。東ドイツの崩壊に伴い営業を終了し、機体は1991年にはドイツ空軍の「10+21」として引き継がれました。主に政府専用VIP機として使用され、飛行時間が短く、機体の状態が良かったため、仮想宇宙状態「マイクロ・グラビティー(微重力)」の環境を再現する新たな役割が与えられました。
この微重力環境を作り出すため、最大で50度の軌道で短時間に上昇と下降による放物線を描くフライトをしなければなりません。戦闘機とは異なる操縦で、「毎回、チャレンジングだ」とパイロットはその経験を語っています。
■カナダ・NRC
カナダ国立研究機構(NRC:National Research Council Canada)が運用する機体は、ダッソーのビジネスジェット、ファルコン20C型をベースとした機体です。レジは「C-FIGD」で登録されています。パラボリックフライトのため、油圧システム、燃料システムなどが改造されています。
この機体は、小型のため「マイクロ・グラビティー」をおよそ15秒から25秒の間、再現します。この機体は、小規模な実験のデータ収集に使用されることが多いようです。
■日本・JAXA
日本では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が航空機を利用した無重力実験を実施しています。このうちJAXAから日本宇宙フォーラム(JSF)が「航空機による学生無重力実験コンテスト」の活動を引き継ぎ、航空機実験を担当しています。
この運航はダイヤモンド・エア・サービスの三菱MU-300型とグラマン製ガルフストリームII型の2機が使用されていました。ただし、ガルフストリームのレジ「JA8431」は2020年に退役。今後はMU-300、レジ「JA30DA」の1機のみとなります。この機体には「マイクロ・グラビティー・フライト(MICRO GRAVITY FLIGHT)」と用途が記されています。
ちなみにそのチャーターのお値段は、JSFが過去に3~4大学がフライトをシェアし、1回の実験を行う2フライトで各チームの負担額は200万円程度と案内しています。ツアーでも300万程度で体験が可能です。この機体を定置場の名古屋空港で見かけた時には、こうした想像を膨らませても楽しそうです。