アメリカのスタートアップ企業、LEAP Aerospace(リープ・エアロスペース)が2021年8月、新たな超音速旅客機の開発を進めると発表しました。「ソニックブーム」だけでなく、騒音も抑制し、外観ではV字尾翼を採用するマッハ2の超音速旅客機で、2029年後半にも実現する目標を掲げています。リープ・エアロスペースの登場で、超音速機開発は一段と注目される航空機開発の分野になっています。
リープ・エアロスペースが開発を目指している超音速旅客機は「L.E.A.P EON-01」の名称が付けられています。全体的な印象はコンコルドと似た外観です。大きな違いは、V字尾翼の採用と、主翼のウィングレットの装着があげられます。
搭載できる座席数は65席から88席とリープ・エアロスペースは想定。イメージ画には32枚の窓が描かれていることから、もっとも座席数が少ない場合は1席あたり窓1つで、座席配列は「1-1」になることが想定されます。コンコルドは「2-2」で約140席を搭載しており、単通路でシンガポール航空の最上級シート「スイート」タイプの搭載なども考えられそうです。後ろから見たイメージ画1枚からすると、エンジンはコンコルドと同様に4基搭載を想定しているようです。
今後のビジネス展開は、2022年初めごろまでに貨物輸送事業を手がける企業に事前販売を開始。その後、70席前後を搭載する大型の航空機開発に着手する考えです。開発する機体は、巡航高度はおよそ60,000フィート、音速の2倍で飛行。炭素排出量は実質ゼロを実現し、ヘリコプターの音と比べ最大100倍の静粛性を備え、環境に配慮された機体を目指します。すでに設計と研究開発チームを立ち上げ、超音速航空機で史上初のブレードレス技術の確立、エンジン故障時の安全に着陸する技術など、多岐に渡る方面で活動をはじめています。
超音速機として商業飛行したコンコルドと比べると、巡航高度や速度などはほぼ同様のレベルが想定されています。座席数はコンコルドの約140席と比べ、概ね半分となります。実現するとニューヨーク/ロンドン間の直行便は3時間以内、北京/ヨハネスブルグ間の直行便はおよそ3.5時間で運航できます。
アメリカでの動向は、ビジネスジェットを手がけていたアエリオンが2021年5月に事業停止したものの、ベンチャー企業のハーミアス(HERMEUS)が「クォーターホース」、ブーム・スーパーソニックが「Overture(オーバーチュア)」など、コンコルドに続く次世代超音速機の開発を進めています。
アメリカ航空宇宙局(NASA)も2022年にX-59 QueSSTで初期飛行試験を開始する予定。アメリカ連邦航空局(FAA)と国際民間航空機関(ICAO)へソニックブーム低減のデータ提供し、新たな超音速機の登場に期待が高まっています。