全日本空輸(ANA)が導入したハワイ路線向けエアバスA380型の「FLYING HONU(フライングホヌ)」は、エンジン4発を搭載した大型機で、その全面に描かれた塗装が空を飛び、迫力ある姿から人気を集めています。現在、運航されている全面特別塗装機では、スカイマークのボーイング737-800型にポケモンの人気キャラクター「ピカチュウ」を描いた「ピカチュウジェットBC」も子どもから大人まで人気を集めています。こうした機体全体を特別塗装する先駆けとなったのが1993年9月12日、世界初の全面特別塗装機として登場した「マリンジャンボ」です。今回は、現在運航中の特別塗装機と、そのルーツと言える「マリンジャンボ」を紹介します。
フライングホヌは、2016年に世界各地から応募された2,000を超える作品から「ウミガメの家族」をコンセプトに「ハワイの青い海でゆったりとくつろぐホヌ(ウミガメ)の親子」のデザインに決定。特別塗装機の愛称は、「空飛ぶウミガメ」を意味する「フライングホヌ」となりました。2019年3月にブルー、2019年5月にエメラルドグリーンが日本に到着。2021年にはサンセットオレンジも到着予定で、3機体制になります。現在、コロナ禍でハワイ線での運航は限られているものの、日本国内の遊覧飛行で親しまれています。
2021年6月から運航するスカイマークの特別塗装機「ピカチュウジェットBC」は、ポケモン25周年の「そらとぶピカチュウ」プロジェクトにあわせ登場。胴体には風船を持つピカチュウ10匹が描かれているだけでなく、隠れキャラもあり、見ているだけで楽しくなる機体です。
こうした全面特別塗装機の先駆けとなった「マリンジャンボ」は、デザインを一般公募。当時小学6年生だった大垣友紀惠さんが「鯨や魚たちは海より広い大空を泳いでみたいと思っているよ」というテーマで描いた作品です。航空会社の機体塗装を一般公募したことも新鮮で、作品は2万2,000件を超す応募が寄せられました。その愛称は、「海」を意味するマリンに加え、「ジャンボ」はボーイング747-400型に由来しています。機体記号(レジ)は「JA8963」です。
747-400の大きな機体いっぱいにクジラが、機体右側の主翼付近に子クジラが、機体左側には海に住むさまざまな魚たちが描かれました。左右の異なるデザインで見るものを楽しませ、両サイドに描かれた愛くるしいクジラの姿、空を飛ぶクジラと海の様子は、子供から大人までを魅了しました。
この「マリンジャンボ」は、国内線で運航されました。エンジン4発を備えた大きな機体のため、描かれたクジラのデザインは迫力があり、現在のフライングホヌのようなインパクトがありました。あまりの人気で全国でお披露目会が開催された際には各地で多くの人が訪れました。
ただし、「マリンジャンボ」があまりにも人気を集めたため、運航できない地域からも乗り入れ希望が寄せられました。このため、乗り入れできる空港に制限のあるジャンボより多くの空港へ飛ばすため、ボーイング767型による「マリンジャンボJr.」が登場。こちらも日本全国で人気を博しました。
「マリンジャンボ」の登場にあわせ、特別塗装機に因んだグッズ販売も始まりました。このグッズ販売は、現在の機内販売の先駆けと言われています。ちなみに、就航当時に販売されていたグッズのうち「マリンジャンボウォッチ」など、一部のグッズはメルカリなどで入手できます。ちなみに1993年に登場した「マリンジャンボ」「マリンジャンボJr.」はおよそ2年の運航後、1995年8月には特別塗装を終了し、それぞれ当時のANA塗装になりました。
【「マリンジャンボ」特別塗装機 航空フォト一覧】
【「マリンジャンボJr.」特別塗装機 航空フォト一覧】
特別塗装機と同様に、そのグッズはフライングホヌやポケモンを描いた「ピカチュウジェットBC」でもモデルプレーン、フライトタグなど様々な商品が販売されています。コロナでお出かけできない環境が続きますが、グッズで楽しんだり、たまには近くの空港でこうした特別塗装機を眺めてみてはいかがでしょうか。