日本航空(JAL)は戦後初の民間航空会社として、今から70年前の1951年10月25日に定期旅客運航を羽田/伊丹線で開始しました。そのJALの70年を機体塗装のデザインから振り返ります。
JALの機体デザインといえば、赤い鶴が翼を丸く広げた「鶴丸」が描かれているとイメージされる方が多いかもしれません。長い期間、「鶴丸」が登場していますが、過去にはそうでない期間もありました。今回は、JALの歴代塗装のうち、自主運航のダグラスDC-4型以降の変遷を振り返ります。
■初代:1952年〜
JALが最初に購入したダグラスDC-4型には、「JAL」の3文字からかたどった初代ロゴが胴体前方に小さく描かれました。社名表記は、初めは漢字で「日本航空」のみ記されでしたが、国際線を運航するDC-6型導入から英語「JAPAN AIR LINES」が採用されます。社名表記はこれ以降、英語のみは国際線、「JAPAN AIR LINES / 日本航空」と日英併用は国内線を主に投入されました。
胴体のラインは前方が紺と白のストライプ、中央は赤と黄色でした。尾翼は、機体前方と同じ紺と白のストライプに日の丸が描かれていました。最初から鶴が登場していた訳ではありません。
■小さな鶴丸、初登場:1959年〜1970年
「鶴丸」の登場時は、コクピットのうしろに小さく描かれました。今のように尾翼に大きく目立つように描かれてはいません。このデザインは、よく見ると「鶴丸」の中に「JAL」と記され、今に続く略称「ジャル」が誕生しました。胴体と尾翼のストライプは初代と変わりません。
■尾翼に描かれた鶴丸:1970年〜1989年
尾翼に大きな鶴丸が登場したのは、1970年4月に導入されたボーイング747-100型に合わせたデザインです。小さく描かれていた「鶴丸」が尾翼に大きく記され、海外でJALの機体を見ると日本を思い浮かべるのは日本人だけでなく、世界中の人に広まっていきました。
胴体に記されている社名表記は、「JAPAN AIR LINES」と3つのワードは初代から続いています。
■「JAL」3レターロゴ:1989年〜2002年
鶴丸とJALが浸透し、機体には「JAL」の3文字表記のロゴが登場しました。黒の字体で「JAL」と大きく記され、その文字の下にはグレーを差し色に使い、赤がAを支えるデザインになりました。
尾翼の「鶴丸」は、このデザインで残されました。一方、社名表記は「Japan Airlines」と2つのワードに変更されました。
■太陽のアーク:2002年〜2011年
JALと日本エアシステム(JAS)の経営統合で誕生したロゴが「太陽のアーク」です。ロゴ「JAL」の「A」は「ノ」のような形でデザインされ、それ以前の「JAL」3レターに採用された赤とグレーのカラーを引き継ぎ、胴体に記されました。
この「太陽のアーク」で、とうとう尾翼から「鶴丸」がなくなりました。「鶴」が消えた尾翼には太陽を表す赤、それを縁取るようにグレーが細く描かれました。このデザインは「The Arc of the Sun」と言われますが、略して「サンアーク」塗装と呼ばれました。
■「鶴丸」復活!:2011年〜現在
JAL・JAS合併後に経営が厳しくなり、2010年に経営破綻。その経営再建のなか、全ての機材から消えていた「鶴丸」デザインが、社員の手で再生のシンボルとして復活しました。
過去の「鶴丸」との違いは、鶴の翼の部分に切れ目が広がり躍動感が出ていること、クチバシが過去のデザインより上を向いていることなど。鶴丸の中に記されている「JAL」も太い字体が採用されています。胴体の社名表記「JAPAN AIRLINES」も大きく、太い文字で描かれています。
現在、JALの70年の歴史で初めて、赤ではなく金色の鶴丸を描いた最新鋭のエアバスA350-900型が2021年11月末まで1機運航しています。こうしたJALの歴史を知っていると、空港で見かけた「鶴丸」にもいっそう親しみが湧きそうです。