イギリスのエアロスペース・テクノロジー・インスティテュート(ATI)は2022年3月11日(金)、民間航空機の温暖化ガス排出ゼロを推進する「FlyZero」プロジェクトとして、コンセプト機を公開しました。リージョナル、ナローボディ、ミッドサイズと航空機の大きさによる3つタイプの次世代機コンセプトを公表し、運用開始に向けた技術的に重要な要素もまとめています。
リージョナル機はATR72-600型、ナローボディはエアバスA320neo型、ミッドサイズはボーイング767-200ER型をそれぞれのベースに検討し、外観は飛行時の要求を反映したデザインになっています。リージョナル機は6発のターボプロップエンジンを搭載し、ミッドサイズではカナード翼を付けてMDやCRJなどの様にリアエンジンと変更。ミッドサイズは主翼付け根部分のウイングボックス付近を太くする変更が加えられています。
液体水素による飛行実現には、6つの重要な技術的な要素があるとしています。(1)水素燃料システムとタンク、(2)水素ガスタービン、(3)水素燃料電池、(4)電気推進システム、(5)空気力学的構造、(6)熱管理です。これを3タイプの大きさの航空機ごとに実現可能性を検証しています。長距離を飛行する中型機では実現が難しいとされている水素燃料での飛行実現が可能と想定しています。
6つの重要な技術の中でも、特に燃料タンクは重要な課題です。水素燃料は、ケロシン燃料より重量が軽くメリットがあるものの、ケロシン燃料や持続可能な航空燃料(SAF)では必要ない厳重な管理が必要とされます。このため、水素の貯蔵タンクは、機体構造を決める上で重要な要素で、主翼を含めた設計に影響する要素になります。ATIは今後、関連する企業、学術的な研究・調査などで今回のレポート活用と同時に、研究開発を促進する方針です。3月17日(木)には、「FlyZeroウェビナー」も開催し、広く知識の共有を図って行きます。