U-2大改修したNASAのER-2、3年ぶり任務再開 コクピット高度低減対応

U-2大改修したNASAのER-2、3年ぶり任務再開 コクピット高度低減対応

ニュース画像 1枚目:NASAのER-2、アメリカ空軍ではU-2として知られる
© NASA/Carla Thomas
NASAのER-2、アメリカ空軍ではU-2として知られる

アメリカ航空宇宙局(NASA)のER-2高高度観測実験機「No.806」は、3年をかけた大改修、大規模メンテナンスを経て、2022年4月7日(木)に再び飛行任務に戻りました。ER-2は、アメリカ空軍ではU-2「ドラゴンレディ」として知られる高高度偵察機で、NASAは資源調査、天体観測、大気調査、海洋研究など地球環境の調査目的で、上空からの情報収集活動に使用しています。NASAが保有するER-2は2機で、機体記号(レジ)では今回改修された「N806NA」に加え、「N809NA」を飛行させています。

改修された「N806NA」は、NASAが1991年に取得したER-2の1号機です。2018年10月に機体を分解する作業が実施されて以来、およそ3年半ぶりとなる2022年3月21日(月)に再び飛行しました。今回の分解を伴う整備で最も大きな改修は、コクピット内の高度低減対応でした。U-2/ER-2は、70,000フィート(高度21,000メートル超)の高高度を飛行するため、パイロットの安全性確保が重要です。今回の改修により、パイロットはNASAがER-2を運用する65,000フィート(高度20,000メートル未満)での飛行時、コクピット内の高度気圧を9,000メートル弱に下がり、高高度飛行時に発生する可能性のある減圧症を防ぐことができます。

ニュース画像 1枚目:コクピットが高度低減の対策が施されても宇宙服の様なパイロットスーツ等を纏って任務にあたる
© NASA/Carla Thomas
コクピットが高度低減の対策が施されても宇宙服の様なパイロットスーツ等を纏って任務にあたる

さらに、「N806NA」にはADS-Bシステムが搭載されました。これにより、自機の位置をコクピット内で特定でき、他の航空機との認識も高められることから安全な飛行につながります。

NASAのER-2高高度観測実験機は、成層圏の飛行で直接採取することでオゾン濃度の研究に貢献しているほか、熱帯低気圧(ハリケーン)のデータ収集でその発達・進路・上陸の影響の研究、衛星に搭載するセンサー開発やシミュレーションでの利用などに役立てられています。こうした目的の飛行時は、20,000フィートから70,000フィート(通常の旅客機は40,000フィート)の高度で運航されています。離陸から20分以内には、高度65,000フィートに達し、巡航速度410ノット(750キロメートル)で飛行します。任務はおよそ8時間で、5,500kmを飛行します。また、U-2との大きな違いは、衛星に搭載するセンサーなどを格納できるエリアなどが設けられ、最大1.1トンの機器を搭載して飛行できます。

ニュース画像 2枚目:ER-2は主翼のポッドをはじめ、機首や胴体に研究用の機器を搭載できるように改修されている
© NASA
ER-2は主翼のポッドをはじめ、機首や胴体に研究用の機器を搭載できるように改修されている
ニュース画像 3枚目:U-2ドラゴンレディ
© U.S. Air Force photo by Senior Airman Ramon A. Adelan
U-2ドラゴンレディ

※当初配信した記事に誤記がありました。修正し、改めて公開しています(2022/05/27 0:13)

メニューを開く