2020年 JALのボーイング777エンジントラブル、製造工程がブレード破断の要因

2020年 JALのボーイング777エンジントラブル、製造工程がブレード破断の要因

ニュース画像 1枚目:疲労破壊が発生したファンブレード
© 運輸安全委員会
疲労破壊が発生したファンブレード

日本航空(JAL)のボーイング777-200型機「JA8978(機体記号)」が2020年12月にJAL904便として運航し、那覇離陸後に発生したエンジン破断の重大インシデントについて、運輸安全委員会は報告書を公表しました。調査の結果、亀裂発生は製造時の事象が要因とした疲労破壊で、再発防止策として定期検査のサイクルを短縮化すること、エンジンの構造強化などが施されることを条件に、飛行が認められています。

JAL904便の事案は、那覇を離陸し、羽田へ向けて上昇中、左側エンジンのファンブレードが破断し、エンジンの部品やエンジンカウルの一部が脱落し、飛散した部品で機体が損傷しました。ファンブレードの破断は、製造時の研磨工程で内部表面に溶着した小さな粒状の塊「ノジュール」から亀裂が発生した疲労破壊と推定されています。エンジンメーカーのプラット・アンド・ホイットニー(P&W)、航空機メーカーのボーイングが指定する期限で実施する定期検査で発見できず、運航が継続されたため、疲労破壊につながった可能性があるとしています。このインシデント後に、ユナイテッド航空が運航する777でも同様のトラブルが発生し、ボーイング777のP&Wエンジン搭載機は運航停止の措置が取られました。

ニュース画像 1枚目:事故後に確認された機体の損傷箇所
© 運輸安全委員会
事故後に確認された機体の損傷箇所
ニュース画像 2枚目:ファンブレード各所に変形確認
© 運輸安全委員会
ファンブレード各所に変形確認

再発防止策として、P&Wはファンブレードの非破壊検査方法「熱音響イメージング(TAI)検査」を6,500飛行回数(FC)ごとから1,000FCごとに短縮し、超音波探傷検査による追加の定期検査を275~550FCごとに実施するよう変更しました。ボーイングも、ファンブレード破断時にインレットやファンカウルなどの保護を強化する改修の実施や、ファンカウルの健全性を確認する水分混入検査を加えました。

アメリカ連邦航空局(FAA)は、2022年3月に耐空性改善命令(AD)を発行し、国土交通省航空局も安全措置を適切に実施した場合に限り、日本の領空を飛行できることとしました。

現在、JALはP&W製エンジンを搭載したボーイング777は全て退役しています。全日空(ANA)が777-200型が10機、777-300型が5機について再発防止策を講じ、徐々に定期便に戻しています。

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