日本航空(JAL)は2023年12月12日、ボーイング777-200型機(トリプル200)の完全退役を完了させました。最後の1機は「機体記号:JA703J」で、11月12日のJL916便 那覇/羽田線をもって通常運航を終了。12月12日に特別ツアーとして乗客を乗せ、アメリカ・カリフォルニア州ヴィクターヴィルへのフェリーフライトを行いました。JALのトリプル200は日本からその姿を消しました。
トリプル200は、1996年から導入を開始し、合計26機を導入しました。完全退役を前に、27年間活躍したJALトリプル200の歴史とその特別塗装機を振り返ります。
「トリプル200」の歴史を振り返る
- 総導入数 26機の歴史 -
■ 第1グループ 5機
1996年3月から1997年5月にかけ、国内線専用機として「JA8981」〜「JA8985」までの5機を導入。「STAR JET (スタージェット)」として各機に、シリウス、ベガ 、アルタイル、ベテルギウス、プロキオンと星の名が付けられ、機種部分に描かれました。2008年5月31日には、JJ統合の象徴、太陽のアーク塗装への塗り替えが進み最後の鶴丸機となった「JA8985」のラストフライトで注目を集めたことも。一貫して国内線で運航されましたが、2014年から退役が始まり、2020年には全機が姿を消しました。Pratt & Whitney (P&W) エンジン搭載機。
■ 第2グループ 7機
1996年12月から1999年5月にかけて、日本エアシステム(JAS)が導入したボーイング777-289型機「JA8977」〜「JA8979」、「JA007D」〜「JA010D」の7機。一般公募で機体デザインが決定した「レインボーセブン」の愛称で親しまれました。アーク塗装や鶴丸塗装を経て、長い期間運航されたグループです。2020年から退役が始まり、2022年に全機が退役。型式番号に刻まれたJASのカスタマーコード「89」以外にも、JAS時代の痕跡を探す楽しみがありました。P&Wエンジン搭載機。
■ 第3グループ 3機
最後まで運用されたトリプル200は「JA701J」「JA702J」「JA703J」の3機。いずれも、2002年度から初めて導入された国際線仕様「ER」型の1〜3号機です。エグゼクティブクラス「SEASONS」を63席、全席個人用モニター付きのエコノミークラス239席を配した「W32」というコンフィギュレーションで中距離国際線で活躍。後に SKY SUITE III (ビジネス)、SKY PREMIUM (プレミアムエコノミー)、SKY WIDER (エコノミー) の3クラス制となり、2021年にビジネスとエコノミーのみの2クラス制として国内線に転用されました。「JA701J」「JA702J」は2023年5月に、「JA703J」は11月に退役。GEエンジン搭載機。
■ 第4グループ 8機
2003年度から2005年度に導入された、ER型4号機以降「JA704J」〜「JA711J」の8機は、エグゼクティブクラス「SEASONS」でも、シェルフラットシートで56席、エコノミークラス210席を配した「W50」などのコンフィギュレーションで長距離国際線などで活躍。「JA709J」と「JA710J」が、ER型1〜3号機と共に国内線に転用されました。2022年12月までに全機退役済み。GEエンジン搭載機。
■ 第5グループ 3機
2003年5月導入の「JA771J」、2005年4月導入の「JA772J」、2007年5月導入の「JA773J」の計3機。新しい機体であることからか、特別塗装率が非常に高い最終グループでした。2021年から2022年にかけ、全機が退役。ERではない「無印トリプル」と一部では呼ばれたことも。 P&Wエンジン搭載機。
- 特別塗装機の歴史 -
トリプル200は、長年主力機として活躍しただけあって、特別塗装機(スペマ)の歴史も深い。第1グループ、5機の「STAR JET (スタージェット)」に始まり、さまざまな塗装機が登場しました。「たまごっち」「相武紗季」「嵐」「ディズニー」「サッカーワールドカップ」「TOKYO 2020」など、その時代で一世を風靡した人気のものたちが、機体を彩りました。歴代のJALトリプル200の計29枚の写真で、スペマを紹介します。
- 退役へ -
いずれも導入から20年以上が経過し、経年化が退役の一番の理由であることは明白。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大による航空需要の低下と、2020年12月に「JA8978」がエンジン不調で那覇空港に引き返すトラブル。その後、2021年2月に同じP&W社のエンジンを搭載したユナイテッド航空機のエンジン不調をきっかけに、世界的に同機種の運航が停止されるという事態に見舞われ、退役のスピードが上がったことも、また間違いないと思われます。
2023年12月現在、JALは13機の777-300ER型機を運用中。まだ1機も退役していませんが、2024年初頭より後継機であるエアバスA350-1000型機が運航開始予定。"鶴丸"の"トリプル"が日本の空から消える日は、着実に近づいています。
機体記号 | 型式番号 | 運用期間 | JA8981 | 777-246 | 1996/02 〜 2014/06 |
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JA8982 | 777-246 | 1996/03 〜 2014/11 |
JA8983 | 777-246 | 1996/09 〜 2015/05 |
JA8977 | 777-289 | 1996/12 〜 2020/09 |
JA8984 | 777-246 | 1997/04 〜 2020/02 |
JA8985 | 777-246 | 1997/05 〜 2020/08 |
JA8978 | 777-289 | 1997/06 〜 2023/01 |
JA8979 | 777-289 | 1997/11 〜 2022/01 |
JA007D | 777-289 | 1998/04 〜 2022/03 |
JA008D | 777-289 | 1998/06 〜 2022/02 |
JA009D | 777-289 | 1998/09 〜 2022/01 |
JA010D | 777-289 | 1999/05 〜 2022/05 |
JA701J | 777-246/ER | 2002/07 〜 2023/05 |
JA702J | 777-246/ER | 2002/09 〜 2023/05 |
JA703J | 777-246/ER | 2003/02 〜 2003/11 |
JA771J | 777-246 | 2003/05 〜 2022/06 |
JA704J | 777-246/ER | 2003/05 〜 2021/10 |
JA705J | 777-246/ER | 2003/07 〜 2022/04 |
JA706J | 777-246/ER | 2003/12 〜 2021/05 |
JA707J | 777-246/ER | 2004/04 〜 2022/04 |
JA708J | 777-246/ER | 2004/06 〜 2022/04 |
JA709J | 777-246/ER | 2004/09 〜 2022/12 |
JA772J | 777-246 | 2005/04 〜 2022/11 |
JA710J | 777-246/ER | 2005/07 〜 2022/10 |
JA711J | 777-246/ER | 2005/08 〜 2022/12 |
JA773J | 777-246 | 2007/05 〜 2021/12 |
*この記事は2023年3月18日に配信した内容を更新し、2023年12月13日に再公開しています。