日本の南西方面への防空任務を担当する航空自衛隊 南西航空方面隊の第9航空団 第304飛行隊 整備小隊に密着。F-15戦闘機の飛行前点検(プリフライト・チェック)が完了し、いよいよ飛行訓練へ向かいます。今回は、離陸へ向かう前に行うプリタクシー・チェックの様子をレポートします。
<前回:【航空自衛隊 那覇基地】F-15機付長に1日密着(1)、“最強”たる飛行隊のプリフライト・チェック>
航空自衛隊 那覇基地 第304飛行隊 プリタクシー・チェック
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飛行前点検完了、パイロット登場
準備が整ったF-15にいよいよパイロットたちが乗り込みます。飛行訓練に際し、パイロットは整備小隊とは別にブリーフィングを行います。その後、飛行訓練の予定時刻にあわせて、ヘルメット、耐Gスーツ、ハーネスを自身で装着し駐機場へ向かいます。
飛行前点検を終えて、一旦休憩を取っていた整備員も機体へ向かいます。そこへパイロットたちも、それぞれの機体へ到着します。
第304飛行隊長 上迫2佐は、今回の訓練では複座式のF-15DJの後部座席に搭乗し後輩指導にあたるそうです。後輩パイロットを育てるのも大きな役割です。
F-15 927号機「航空機番号:12-8927」に搭乗するパイロット 宮川2尉もフライト時間にあわせて到着。機体の隣で整備を担当する近藤3曹から整備状況の説明を受け、問題がないことをパイロット自身で確認します。パイロットと整備員のやりとりの様子は、それぞれが尊重し合うような雰囲気に感じました。いよいよ飛行訓練へ離陸する前のプリタクシー・チェックが開始されます。
整備記録の確認後、パイロットも自ら機体チェックを行います。チェックは機体の右側前方から後方へ、エンジンを目視し、左側後方から前方へ時計回りで行われます。ハシゴを使って、機体上部もチェックします。
自分の目で機体を外部チェックしたパイロットは、いよいよコックピットへ。ラダーを登り、座席のチェックを行い、コックピットに乗り込みます。整備員もラダーでコックピットまで上り、シート周りの確認を行います。そして、キャノピーの支柱を外し、機体から降りるとラダーを外します。いよいよエンジン始動です。
F-15 離陸前の作動確認・プリタクシー・チェック
整備員はイヤーマフ(防音保護具)を兼ねた有線のインターフォンを機体につなげ、パイロットとプリタクシー・チェックを行います。まず2つのエンジンのうち、右エンジンからスタートさせ、次に左エンジンを始動させます。エンジンがスタートすると、パイロットと整備員はコンタクトを取りながら、様々な機体の入念なチェックに入ります。
F100エンジンが始動すると、独特のエンジンスタート音を発し、ほどなくするとイヤーマフがないと近くには居れないほどのエンジン音が響きます。エンジンスタート後、空気を取り込む可変式のエアインテークの動作状況チェックが行われます。
エンジンに取り込む空気の速度がマッハ1を超えると、衝撃波による損傷が発生します。それを防ぐために、空気の速度を調整する可変式のエアインテークは重要だそうです。
両エンジンの始動後、さらに整備員はパイロットと連携し、機体を一周するように、フラップ、エルロン、スタビレーター、スピードブレーキなど、一つ一つ入念に目視チェックします。機体下部からも、目視確認が行われます。
パイロットからの合図にあわせ、コックピットの後ろに備えているスピードブレーキが開いているか、スタビレーター、フラップ、エルロンなどの動作に異状がないか、整備員によって入念な目視確認が行われます。
最大速度 マッハ約2.5で飛行することができるF-15。エンジン排気口のノズルについても、大きく広がるか、正常に絞ることができているか、動作チェックが行われます。通常の飛行中は、ノズルは絞られ、アフターバーナーを利用する場合は、大きく開かれるそうです。
いよいよ、最終的なチェックも終了間近。機体に取り付けていた安全ピンがすべて外されているか、パイロット自身にも目視で確認してもらいます。
以上、整備員とパイロットの連携によるプリタクシー・チェックが終わり、いよいよF-15は飛行訓練へ向かいます。
F-15 いよいよ 飛行訓練へ
整備員の合図・誘導により、離陸のためF-15が滑走路へ移動。動き出してからも整備員の目線は常に機体に向いています。航空機の整備・点検は、パイロットの命に関わる重要な任務であることを感じました。
通常の飛行訓練は、約1時間ほど。F-15を送り出した整備員たちに、束の間の休息時間が訪れます。ただ、整備員の1日は、これで終わることはなく、飛行後の整備や点検が待っているのです。
次回は、F-15が飛行訓練から戻り、その飛行後の整備・点検はどのように行われているのか、レポートします。