飛行機の安全を支えるMRO Japan、航空機の重整備に潜入〜どんな作業が?!【Part1】

飛行機の安全を支えるMRO Japan、航空機の重整備に潜入〜どんな作業が?!【Part1】

ニュース画像 1枚目:MRO Japan 整備格納庫内のAIRDO ボーイング737-700型機「JA07AN」
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MRO Japan 整備格納庫内のAIRDO ボーイング737-700型機「JA07AN」

「MRO」という言葉をご存知ですか?Maintenance(整備)、Repair(修理)、Overhaul(オーバーホール)の略で、航空機の安全に欠かせない役割の略語です。そんな“MRO”サービスを専門に提供する日本唯一の会社が、那覇空港に所在する「MRO Japan」です。第1滑走路に隣接する整備格納庫(ハンガー)は、那覇空港を利用する際に目にすることができます。飛行機の安全運航には欠かせない整備や修理が行われている巨大なハンガーに潜入し、その様子をレポートします。

MRO Japanとは?

ニュース画像 1枚目:那覇空港に隣接するMRO Japan 整備格納庫
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那覇空港に隣接するMRO Japan 整備格納庫

主に伊丹空港で全日本空輸(ANA)の航空機整備を行う会社として、2015年に設立されました。その後、2019年に拠点を沖縄・那覇空港に移転する際に、ジャムコや三菱重工、沖縄地元企業なども出資し、航空産業・沖縄の地域に根ざした企業へ変化しています。事業内容は、航空機の定期検査や整備、修理に関わるドック整備を主な柱としています。その他にも、空港内での到着から出発までの間に行うライン整備も行っています。

この記事の様子は、一部を動画で見ることが可能です。

■ドック整備

MRO Japanではボーイング737・767・777・787・747-8、エアバスA320、DHC-8-400型機に関する国土交通省航空局(JCAB)の整備認定を受けており、航空会社で運航する航空機の整備を行っています。また、2022年には欧州航空安全庁(EASA)のA320・A321型機の整備認定を受けています。

同社のハンガーは那覇空港 第1滑走路に隣接し、大きな航空機を丸々3機格納できる広大な施設で整備や修理が進められています。そのハンガー内部には整備を行うための足場やクレーンなどを備えています。“重整備”と呼ばれる一定の飛行時間やサイクルを経過した際に行われる大規模な整備、軽度な整備、機体の修理作業が日々行われています。

取材時には、ANAのボーイング767-300型機「機体記号:JA615A」、AIRDOのボーイング737-700型機「JA07AN」、ANAウイングスのDHC-8-400型機「JA846A」 の重整備が、3機並行して行われていました。

■ANA ボーイング767-300型機「JA615A」
ニュース画像 2枚目:MRO Japan 格納庫内で塗装を行うANA ボーイング767-300型機「JA615A」
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MRO Japan 格納庫内で塗装を行うANA ボーイング767-300型機「JA615A」
■AIRDO ボーイング737-700型機「JA07AN」
ニュース画像 3枚目:MRO Japanで重整備中のAIRDO ボーイング737-700型機「JA07AN」
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MRO Japanで重整備中のAIRDO ボーイング737-700型機「JA07AN」
■ANAウイングス DHC-8-400型機「JA846A」
ニュース画像 4枚目:MRO Japan 整備格納庫内のANAウイングス DHC-8-400型機「JA846A」重整備の様子
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MRO Japan 整備格納庫内のANAウイングス DHC-8-400型機「JA846A」重整備の様子

整備には専門的な知識や経験が必要になるため、整備員はそれぞれ「塗装整備部」「構造整備部」「機体整備部」の3つの大きな専門部署に所属しています。「機体整備」はさらに、「機体整備1~4課」「客室整備課」「電装整備課」に分かれています。部署は分かれているものの、点検・整備の実務では連携して作業することも多いそうです。整備員にとって最も大切なこととして、MRO Japanの岩本さんは「“コミュニケーション”がとても大切です。」と話します。今回重整備を行なっていた3機は、それぞれ点検・整備を行う項目は一機ごとに異なり、それぞれ1か月ほどの時間をかけて、重整備を行なっている最中でした。

ニュース画像 5枚目:MRO Japan 整備格納庫内 岩本さん
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MRO Japan 整備格納庫内 岩本さん

綿密なスケジュール計画に基づき、各部署が連携しながら作業を進めますが、整備中にはさまざまな困難もあるそうです。想定外の修理や交換品が必要になることも。その場合には、各部署で作業の順番の見直しなどを行い、納期に間に合わせるように連携がとても重要だと話していました。

■塗装整備

機体の塗装・洗浄・下地処理や剥離の修繕やデカールなどの貼り付け作業などを行います。整備格納庫内には、ANA 767-300「JA615A」の“ANA”のロゴとブランドステートメント“Inspiration of JAPAN”の塗装が施されている最中でした。その隣の格納庫には、機体全体の再塗装が完了したAIRDOの737-700の姿が。ウィングレットに描かれたマスコットキャラクター「ベア・ドゥ」もピカピカに生まれ変わっていました。

ニュース画像 6枚目:MRO Japan 整備格納庫内 ANA ボーイング767-300型機「JA615A」の再塗装の様子
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MRO Japan 整備格納庫内 ANA ボーイング767-300型機「JA615A」の再塗装の様子
ニュース画像 7枚目:MRO Japan 整備格納庫内でのAIRDO ボーイング737-700 ウィングレット
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MRO Japan 整備格納庫内でのAIRDO ボーイング737-700 ウィングレット

■構造整備

飛行機の胴体、主翼、尾翼、エンジンや脚の取付け部など構造部材の点検・修理、交換に関わる作業を行います。ちょうどANA767-300型機の主翼からフラップを取り外し、点検を行う作業が進行中でした。

同社では整備作業に携わるため社内資格制度があり、“ワークマン(整備基礎訓練済)”、“作業員”、“検査員”など、役割や作業内容が規定されています。そのような知識・経験を備えた整備員たちにより、整備が進められています。

ニュース画像 8枚目:ANA ボーイング767-300型機「JA615A」、フラップを主翼から取り外す様子
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ANA ボーイング767-300型機「JA615A」、フラップを主翼から取り外す様子

交換されたAIRDO737-700型機では再塗装の他に、ランディングギアの交換が行われていました。交換したランディングギアは廃棄されるわけではなく、専門会社へ引き渡されて再利用されるそうです。

ANAウイングス DHC-8-400。PW150Aエンジンのエンジンカバーも取り外し、点検・整備が行われます。主翼部分の燃料タンク、着氷を防ぐ防氷ブーツや電熱線など、点検項目は多岐にわたります。

ニュース画像 9枚目:MRO Japan 整備格納庫内のANAウイングス DHC-8-400型機 エンジンの整備・点検の様子
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MRO Japan 整備格納庫内のANAウイングス DHC-8-400型機 エンジンの整備・点検の様子
ニュース画像 10枚目:MRO Japan でのANAウイングス DHC-8-400型機「JA846A」整備の様子
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MRO Japan でのANAウイングス DHC-8-400型機「JA846A」整備の様子
ニュース画像 11枚目:	MRO Japan 整備格納庫内のANAウイングス DHC-8-400型機 主翼の保管・点検の様子
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MRO Japan 整備格納庫内のANAウイングス DHC-8-400型機 主翼の保管・点検の様子

■機体整備(客室整備・電装整備)

機体整備(客室整備・電装整備)では主に、飛行機各部位の点検、分解・組立、洗浄、修理、部品交換、給油、作動チェックを行います。

機体内部の点検を行うため、ANAウイングス DHC-8-400に搭載されている74席のシート、窓枠など、すべてが取り外されていました。さらに、シートも1台ずつ点検・整備・修理が行われます。整備格納庫では、“高温多湿”という沖縄ならではの気候による苦労もあるそうです。取り外した部品は、湿気から守るための特別なビニールハウス内での格納が行われています。

ニュース画像 12枚目:MRO Japan 整備格納庫内のANAウイングス DHC-8-400型機のシートの保管・点検の様子
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MRO Japan 整備格納庫内のANAウイングス DHC-8-400型機のシートの保管・点検の様子
ニュース画像 13枚目:MRO Japan 整備格納庫内のANAウイングス DHC-8-400型機のシートの保管・点検の様子
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MRO Japan 整備格納庫内のANAウイングス DHC-8-400型機のシートの保管・点検の様子
ニュース画像 14枚目:	MRO Japan 整備格納庫内のANAウイングス DHC-8-400型機 機内設備の保管・点検の様子
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MRO Japan 整備格納庫内のANAウイングス DHC-8-400型機 機内設備の保管・点検の様子

無線や計測機、その他の電子電気関連の整備・点検を行います。さらに、航空機内に張り巡らされている電気・電子配線などの点検作業も。DHC-8-400のレドーム内の気象レーダーやアンテナも点検・整備対象です。特に、精密機械であるため、静電気などを抑えるシートや専用の作業台などが使われていました。

ニュース画像 15枚目:	MRO Japan 整備格納庫内のANAウイングス DHC-8-400型機 電装品の保管・点検の様子
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MRO Japan 整備格納庫内のANAウイングス DHC-8-400型機 電装品の保管・点検の様子

以上、さまざまな点検・整備項目を高度なスキルと専門知識をもった整備員の手によって、一つ一つ行われていることを目の当たりにしました。航空機の安全はこのような整備・点検によって、担保されているのだと実感しました。

現在、MRO Japanでは400名を超える整備員が従事しています。次回の記事では、その高度なスキルと専門知識を有する整備員のキャリアパスをご紹介します。

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