JALが設立する中長距離LCCの就航地は?記者会見から考えてみた

JALが設立する中長距離LCCの就航地は?記者会見から考えてみた

ニュース画像 1枚目:JALが描くターゲットとなる就航地
© JAL
JALが描くターゲットとなる就航地

日本航空(JAL)は2018年5月14日(月)、新たに国際線の中長距離格安航空会社(LCC)の設立を発表、赤坂社長、西尾常務・経営企画本部長が記者会見で説明を行いました。就航地について多くの質問が寄せられたものの、「路線は具体的に決めていない、決まった段階で発表」と具体的な地名は明言されませんでした。利用する機材は787-8で、現在のJALが787で200席、海外LCCが300席程度であることを参考に、座席数は現在のJALから40%から50%増との考えが示されています。

このうち、中・長距離路線として展開する場合、拠点とする成田空港を中心に787のカタログ上の航続距離は15,200キロメートルですが、JALの計算では13,000キロメートルを想定しています。北米はフロリダ州を除くほぼ全て、オーストラリア、アジア、中東、ヨーロッパ、エジプトやモロッコなどアフリカ北部がカバーされます。この範囲に入る目的地であれば、新会社の就航地として期待されます。

上記の内容と、会見で語られた内容を基に、中長距離LCCの就航地を予測してみます。もちろん、正式発表ではないため、就航先が決定されるまでの予想の一つとして楽しんでください。

<記者会見で路線を想像する際に参考になる主な発言>
1:低価格のみに特化するのではない、低価格で提供していく
2:参考にしたLCCは、中長距離を展開するヨーロッパのLCC、具体名はノルウェイジャン
3:JALで観光利用もあるが利用率75%から80%で推移、旅行会社や一般客から予約が取れないとの声をいただいていた
4:日本発の価格志向の中長距離、まずは需要喚起で北米・欧州等からの訪日客にも潜在需要がある
5:航続距離の長さから就航地の可能性は多くの選択肢があり、短距離とは違いチャレンジする機会もできる:ここは長距離LCCの魅力でもある

<1:低価格で提供>
この発言からは、ルフトハンザドイツ航空がユーロウイングスで長距離路線を展開する際に述べたことを想起させます。低価格ながら、求められるサービスを適宜に提供していくスタイルです。ユーロウイングスの長距離路線は、ミュンヘンとケルン発着のバンコク線、アメリカではマイアミ、ニューヨーク、フォートマイヤーズ、ラスベガスなどです。JALとのカンニバリズムを避けるため、アメリカ方面ではラスベガスなどは新規就航の地点として考えられるでしょう。また、JAL路線の移管については明言が避けられましたが、レジャー需要も多いバンクーバー線などは移管される可能性が考えられます。

<2:ノルウェイジャン>
ビジネスとして検討されたノルウェイジャンは、787-9や737で大西洋路線を展開しています。特に、ノルウェー・エアUKはロンドン・ガトウィックを拠点に、アメリカ路線を中心とした路線を構成し、アジアにはシンガポール、さらにブエノスアイレス線を展開しています。JALのLCCに置き換えた場合、ノルウェイジャンの北米路線が東南アジアやASEAN各国、シンガポールとブエノスアイレス線は北米とヨーロッパの1路線と考えられる可能性がありそうです。

<3:旅行会社や一般客から予約が取れない>
JALにはこうした声が寄せられており、すでにある需要の取りこぼしが発生していた可能性があります。こうした需要をカバーすることを考えると、現在、JALが運航している路線から、新会社がいくつかを引き継ぐ可能性が考えられます。フルサービス航空会社が設立したLCCでは、スクートがあり、これまでの事例からすると、シンガポール航空が運航していた路線の移管を受ける例も少なからずあります。スクートの場合、シンガポール/アテネ線をシンガポール航空から譲り受けています。

<4:価格志向・需要喚起・訪日客>
中距離「格安航空会社」という「格安」の言葉に引きづられると、見え難くなりますが、例えば先に述べたユーロウイングス、ノルウェイジャン、スクートなど、いずれも価格志向の旅客を集めているものの、「常に最安価格」ではないという実態に気づいている方は多いと思います。

航空券は、全体的に安いものの、最安価格はフルサービスキャリアの場合もあり、相対的に安い価格、フルサービス航空会社のサービスを全てはいらないから費用対効果が良い航空券を選びたいという人に焦点を当てることが示されているものと考えられます。

東南アジアと日本の経済格差が縮小しつつあるものの、「価格志向・需要喚起・訪日客」をバランスよく保つためには東南アジアを厚く展開するには危険がありそうです。一方で、東南アジアでは直行便の就航していないレジャーデスティネーション、例えばタイ・プーケット島、マレーシアのランカウイ島、インドネシアでは世界遺産のあるボロブドゥールなどは候補になる可能性があります。日本からは安く訪れることができ、需要喚起が期待できます。

また、訪日客でお得感が感じられるのは、やはり北米、ヨーロッパの先進国になる可能性があります。ただし、首都ではなく、第2の都市に就航することが重複を避ける場合には考えられそうです。

<5:多くの選択肢があり、チャレンジも>
「チャレンジ」という意味では、チャーター便を展開している目的地は、可能性がありそうです。例えば、夏・冬共に一定時期に過去数年に渡ってチャーター便を運航しているアラスカ、さらに独特な旧市街の魅力が多くの人を惹きつけるドブロブニクを含む中欧チャーター便など、JALはこれまで旅行商品を展開してきました。もちろん、これらの地点も新LCCの就航する可能性としては含まれていると言えるでしょう。

なお、日本で人気の高いホノルルを代表とするハワイは、関空発着でスクート、エアアジアが就航しており、マイル利用の観点からも就航地を検討するとのことが述べられています。こうしたことからすると、JALの既存路線からの移管はレジャー中心の路線、特に首都やビジネスの中心地以外の地点に就航している路線、さらにレジャーの需要喚起ではプーケットやランカウイといったJALが就航していない目的地なども期待できそうです。

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