JA85ANの2016年重大インシデント、空調装置の不具合認識されず

JA85ANの2016年重大インシデント、空調装置の不具合認識されず

運輸安全委員会は2018年9月27日(木)、全日空(ANA)の機体記号(レジ)「JA85AN」での重大インシデント認定事案について報告書を公表しました。この事案は、2016年5月27日(金)に運航した羽田発高知着ANA561便で、警報装置が作動したため羽田空港へ引き返したもので、機長と乗務員5名、乗客164名の計170名が搭乗しており、このうち乗客1名が軽傷を負いました。

当時、「JA85AN」は離陸、上昇中に客室与圧の低下を示す警報装置が作動し、引き返しました。詳細に点検したところ、機体構造に損傷などありませんでしたが、左右のエンジンから抽気した空気を各空調装置に取り入れるそれぞれのバルブが、一時的に両方とも故障、閉じていたことが確認されています。

報告書では、左側空調装置が一時的に停止する不具合が運航乗務員や整備士に認識されないまま、機体の運用が継続されており、当該便の離陸時に左側空調装置の停止に続き、使用時間や使用環境が同じ右側の空調装置も停止し、与圧が確保されなくなったものと推定しています。

左右の空調装置とも停止した理由として、空調装置への空気流量を調整するバルブ(eFCV)の内部にあるリファレンス・レギュレーターが固着し、ブリード圧の上昇によってeFCVが閉じ、空調装置へ空気が供給されなくなったとみています。

再発防止策として、ボーイングはソフトウェアを改修し、eFCVを製造するハネウェルはレファレンス・レギュレーターが開状態で固着しないよう改修を推奨、737 MAXに開発されたeFCVはフェイル・セーフ設計が採用され、ボーイングもこの改良を提案しています。

ANAも再発防止策として、eFCVの閉状態を運航乗務員に知らせる機能を追加するなど暫定の対策を講じたほか、eFCVの換装し、リファレンス・レギュレーターに異常が生じないことを確認しています。なお、eFCVの換装は終了しており、暫定対策も解除済みとなっています。

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