日本航空(JAL)は32年前の1990年1月26日、ボーイング747-400型「ハイテクジャンボ」の1機目を受領しました。2011年10月19日に退役するまで21年8カ月間にわたり、JALを代表する機材として国内、海外で活躍しました。JALは初期型のボーイング747-100型などを含むボーイング747型を計114機保有、その中でも747-400は最も多い44機を導入しました。ボーイング747型は機体前方だけ2階席が設けられた独特の機影と大きさで親しまれ、その中でもJALの747-400と退役後の現在までを振り返ります。
JALが導入した747シリーズで最後の機種として導入された747-400は、開発当時の最新技術が盛り込まれ「ハイテクジャンボ」の愛称が付けられています。747-400以前のボーイング747は「クラシックジャンボ」と呼ばれ、外観は機首部分からおよそ7メートル(m)ほど続く2階建て部分の姿は同じです。
大きな違いは、外観よりもコクピットにあります。それまでのクラシックジャンボは航空機関士が必要で3名体制で運航されましたが、747-400は当時最新のエレクトロニクス技術や自動化されたシステムが採用され、パイロット2名で運航が可能になりました。
JALは1990年1月に受領した旅客機の機体記号(レジ)「JA8071」を皮切りに、2004年10月に貨物機の「JA402J」まで、14年間で計44機を受領しています。機体の塗装は、1989年〜2002年の「JAL」3レターロゴ、2002年〜2011年の太陽のアークが施されました。
受領時の仕様は国際線34機、国内線8機、貨物専用2機で、国内線では旅客需要の多い羽田/伊丹線や羽田/新千歳線などの主要幹線、国際線では欧米路線に投入され、ニューヨークやロンドン、パリなどの路線で運航されました。国際線仕様として使用された34機のうち、6機がJALで貨物専用機として、のちに改修されました。
この747-400は2010年にJALが経営破綻、その再建に向けて燃費効率の悪い機材を一掃し、効率的な機材に更新する積極的な施策として旅客機、貨物専用機とも退役が決まりました。国際線では340席超、国内線では540席超を搭載。現在の国内線のフラッグシップ機のエアバスA350-900型が369席のため、747-400は約1.5倍の座席を搭載して、多くの旅客を輸送していました。搭乗体験のある人も多く、退役前に実施された記念フライトには多くの人が集まり、別れを惜しみました。
JALが導入した44機は退役後、他の航空会社で旅客機として、あるいは貨物機として現在も活躍している機体が存在します。
■元JA8912: イラン航空「YI-AQQ」
2010年8月にJALを退役、同年10月にイラク航空へ移籍し、現在も旅客機として運航。機齢は28年目に入るものの、イラク発着で中東各地に運航されています。
■元JA8909:カリッタ エア「N744CK」
JAL導入時は旅客機でしたが2006年に貨物機に改修。2010年12月にJALを退役、同月にカリッタエアへ移籍し、現在も貨物機として活躍中です。新型コロナウイルスの流行で、航空各社がマスク塗装を機体に施した際、この機体も青のマスク塗装が施されました。
■元JA8086:ナショナル・エアラインズ「N936CA」
JALでは旅客機として運航され、2010年10月に退役。エバーグリーン航空で2012年に貨物機へ改修。2016年にグローバル・スーパータンカー・サービシーズへ移籍し、世界最大の消防飛行機「スーパータンカー」へ改修され活躍。2021年に再び貨物機に戻り、ナショナル・エアラインズが運航中。現在は、ナショナル・エアラインズの30周年記念と「スーパータンカー」時代を残した塗装で運航されています。
活躍中の貨物機は、今も日本へ飛来する機会があります。成田、名古屋(セントレア)、関西など主要空港をはじめ、JAL時代には離着陸することのなかった横田基地や嘉手納基地などにも飛来しています。