フィリピンのナショナル・フラッグキャリア、そして同国唯一のフルサービスキャリア(FSC)として日本でもなじみ深いフィリピン航空。実はアジアで最も歴史ある航空会社で、運航開始はなんと太平洋戦争開戦前の1941年3月15日、戦時下での商業運航停止や2度の経営破綻を挟みながらも、84年に渡って空を飛び続けています。
フラッグキャリアらしく、ジェット化以降は一貫して垂直尾翼にフィリピン国旗をモチーフにした赤と紺のデザインが施されてきました。今回は、そんなフィリピン航空の塗装デザインを、ダグラスDC-8型機を導入しジェット化した1960年代から振り返っていきます。
■1960年代 DC-8
創業当初から1960年代にかけては、銀色に青いチートラインを施した、現在のイメージとは少し違う塗装が施されていました。大きく変化したのが、初のジェット機であるダグラスDC-8を導入、国際線に初参入した1960年代中頃で、初めて国旗をモチーフにした赤と紺の三角形が重なるデザインが施されました。黄色い太陽のデザインがない点、垂直尾翼上に「PAL」のロゴが書かれている点が特徴的です。上が紺、下が赤のチートラインも引かれ、コクピット付近でシャープに収束。胴体の社名ロゴも現在と異なり、細いフォントで「PHILIPPINE AIR LINES」と記されています。■1970年代 DC-10
BAC1-11や初のワイドボディ機であるDC-10を導入した1970年代、塗装にも若干の変化が起こりました。コックピット手前でチートラインが途切れ、終端部とつなげる形でフィリピン国旗がデザイン。これにあわせ、色の比率も赤と紺が同じに変わっています。また、垂直尾翼上の「PAL」のロゴも消え、胴体のロゴも太字の「Philippine Airlines」に変化し、少しずつ現在の塗装に近づいてきました。■"The Love Bus" エアバスA300
1979年11月に導入されたエアバスA300型機には、"The Love Bus"の愛称が付けられました。塗装も少し変化し、コックピット手前の国旗がなくなり、チートラインが機体を一周するデザインに。また、導入当初はコックピット横に"The Love Bus"のロゴが描かれました。ちなみに、この"The Love Bus"ロゴは、エアバスA350-900型機「機体番号:RP-C3507」(退役済み)「RP-C3508」にも受け継がれています。■「ジャンボジェット」ボーイング747
1979年12月に「ジャンボジェット」ボーイング747-200型機の初号機を受領、翌80年1月に運航を開始しました。A300と同様、チートラインが機体を一周しており、他の機体よりもラインが太くなっているのが特徴です。■1986年~ 現在のCI導入
1986年、フィリピン国旗の3要素を組み込んだ新たなコーポレート・アイデンティティ(CI)を導入、現在まで約38年に渡ってこのデザインを使用しています。垂直尾翼の紺色の部分に黄色の太陽をモチーフにしたデザインが加わり、よりフィリピン国旗らしいデザインに変更。対照的に胴体はシンプルになり、「Philippine」のロゴが記されるのみのデザインに変わりました。ロゴの位置は概ね機体前方ですが、A300やアッパーデッキが長い747-400などの一部機材は、ドア位置等の関係で機体中央寄りに配置されています。羽田、成田、関空、福岡などをはじめ、日本各地で見ることができるフィリピン航空の飛行機。ワンポイントのステッカーなどを除くと特別塗装機も少ないこともあり、フィリピン航空といえばこれ、というイメージが定着しています。一目でフィリピンの航空会社と分かる、これぞ「ナショナル・フラッグキャリア」の塗装といえるのではないでしょうか。