飛行機の安全を支えるMRO Japan、整備員のキャリアパスは?!【Part2】

飛行機の安全を支えるMRO Japan、整備員のキャリアパスは?!【Part2】

ニュース画像 1枚目:MRO Japan 整備格納庫内での電装整備の様子
© FlyTeam ニュース
MRO Japan 整備格納庫内での電装整備の様子

沖縄・那覇空港を拠点に航空機整備を行うMRO Japanに潜入取材の第2弾。同社は、航空機のMaintenance(整備)、Repair(修理)、Overhaul(オーバーホール)を専業に事業を展開しています。現在、日本の航空会社は自前で機体整備・メンテナンスを行なっているものの、廉価な海外のMRO会社に重整備を委託せざるを得ない状況とのこと。そのため、日本国内の優れた技術⼒の維持や人材育成が課題になっているそうです。現在、MRO Japanでは400名を超えるスタッフが勤務しています。人材育成には力を入れていて、航空機整備に関する国家資格取得へのバックアップなどを積極的におこなっています。整備格納庫内での作業の様子を伝えた前回に続き、今回は整備員のキャリアパスを紹介します。

【前回の記事:飛行機の安全を支えるMRO Japan、航空機の重整備に潜入〜どんな作業が?!【Part1】

■整備といっても、さまざまな役割が!

全社員429名のうち「整備部員」は約300名(2023年12月時点)。3つの部門「塗装整備部」「構造整備部」「機体整備部」に大きく分かれます。さらに「機体整備部」は“機体整備1~4課”、“客室整備課”、“電装整備課”と専門部署が設けられています。本人の希望や各部の状況により配置が決まりますが、別部署への異動もあるそうです。部署ごとに、その役割や取得できる国家資格が異なります。国家資格取得は本人の希望によるものですが、個々の社員のチャレンジには会社から最大限のサポートが行われています。

MRO Japanでは2016年より新卒採用を開始し、2019年に伊丹空港から那覇空港へ拠点を移しています。現在では新卒入社の185名が活躍しており、その内沖縄県出身者が9割を超えているそうです。

同社ではキャリアパスとして社内資格制度を設けています。まず、整備基礎訓練を経て“ワークマン(Workman)”と呼ばれる第一ステップからスタート。4年ほどで“作業員(Certified Mechanic)”の社内資格を取得、整備経験を重ねます。その後、“検査員”、“管理職”へのステップが用意されています。

ニュース画像 1枚目:MRO Japan 整備格納庫内でのミーティングの様子
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MRO Japan 整備格納庫内でのミーティングの様子

■塗装整備部

塗装整備部はその名の通り、機体の塗装・洗浄・下地処理や剥離の修繕やデカールなどの貼り付け作業などを行います。ANAで運航中のボーイング767-300ER「鬼滅の刃じぇっと -弐-(機体記号:JA608A)」のデカール貼り付けや、AIRDOボーイング767-300ER型機「ロコンジェット北海道(機体記号:JA607A)」の塗装を担当しました。

ニュース画像 2枚目:MRO Japan 整備格納庫内での塗装整備の様子
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MRO Japan 整備格納庫内での塗装整備の様子
ニュース画像 3枚目:MRO Japanが担当したロコンジェット ボーイング767-300ER「JA607A」
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MRO Japanが担当したロコンジェット ボーイング767-300ER「JA607A」

「塗装整備」では、約4年で社内資格の“作業員”を目指します。その後、社外資格の国家資格としては“一級塗装技能士”へチャレンジが可能です。おおよその目安として、3年目で“二級塗装技能士”を取得し、“一級塗装技能士”を6年目に取得することが可能とのこと。現在、2016年入社の第ー期生以降で1名が“一級塗装技能士”を取得し活躍中。そのほかの社外資格としては、2年目から“有機溶剤主任者”、“特化物主任者”、“調色技能士”なども目指すことができます。

■構造整備部、機体整備部

構造整備部では胴体、主翼、尾翼、エンジンや脚の取付け部など構造部材の点検・修理、交換に関わる整備を担当します。機体整備部では機体の点検、分解・組立、洗浄、修理、部品交換、給油、作動チェックを行います。さらに、客室や電装品に関する整備も担当します。

ニュース画像 4枚目:MRO Japan 整備格納庫内でのフラップの取り外しての整備・点検の様子
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MRO Japan 整備格納庫内でのフラップの取り外しての整備・点検の様子

まず機体整備・構造整備でも、1年目に整備基礎訓練を経て“ワークマン”の取得。その後、2〜3年目は整備に必要な知識や経験を積み重ね、4年目に社内資格の“作業員”の審査へ臨みます。その後は“作業員”として実務をこなしながら、国家資格へのチャレンジ。国家資格として主に「構造整備部」は“航空工場整備士”、「機体整備部」は“一等航空整備士”を目指します。5年目より学科試験・技能審査へ進み、6年目に航空局審査を行い、国家資格取得への流れだそうです。

現在、第ー期生の5名を含め、6名の“一等航空整備士”が活躍中。一期生の平安名さんは「2016年に入社し2019年に那覇に拠点が移り、着実に会社が大きくなっていることを実感しています。食堂も当初より随分大きくなり、昼食の時間帯以外はカフェとして勉強スペースにもなり、社員へのサポートも充実している。」と、話していました。

ニュース画像 5枚目:MRO Japan 社食でのランチの様子
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MRO Japan 社食でのランチの様子

■整備工場見学ツアー

MRO Japanでは、今回紹介した整備員たちの作業風景を“生”で見学できるツアーを実施しています。見学ツアーでは、大きな航空機に目がいきがちですが、日々飛行機の安全を守る整備員たちの作業にも注目してほしいです。整備格納庫内では、さまざまな資格や経験を有している整備士が働いています。同社では整備士のヘルメットに注目すると、その色などで経験や資格を見分けることができるそうです。ヘルメットの色が黄色は1〜2年目の新人さん、白色は3年目以上です。さらに、ヘルメット頭部のラインの色でもその社内資格の状況を確認することも。黄色は“ワークマン”、青色は“作業員”、緑色は“検査員”、黒色は“管理職”を示すそうです。見学ツアーに参加する機会があれば、ぜひチェックしてみてください。

以上、飛行機の安全を支えるMRO Japanの整備員のキャリアパスを紹介しました。整備士のみなさんは「実際に自分が整備をした飛行機を空港で目にすると、整備の時の様子を思い出します。自分の手で整備した機体には、一機一機思い入れがある。」と話します。整備員の思いが、日々の安全な飛行機を支えているのだと感じました。

MRO Japanの本業である航空機整備をレポートしましたが、実は様々なところでも活躍しているそうです。次回は、同社の意外な取り組みを紹介します。

【前回の記事:飛行機の安全を支えるMRO Japan、航空機の重整備に潜入〜どんな作業が?!【Part1】

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