2019年秋の帰国旅行4便目-経営破綻から10年、JAL「New Sky Project」の大胆な客室戦略 - JAL (日本航空) 口コミ・評価

航空会社 JAL (日本航空)

2024年04月19日に撮影されたJAL (日本航空)の航空機写真

© 狛犬さん

第2次大戦後の1951年8月1日設立。1951年10月25日...
日本
IATA | ICAO
JL | JAL
アライアンス
ワンワールド

搭乗レビュー
2019年秋の帰国旅行4便目-経営破綻から10年、JAL「New Sky Project」の大胆な客室戦略

航空会社
日本航空
便名
JL414
エコノミー
搭乗日
2019/10
路線
ヘルシンキ → 成田(東京)
機体記号
JA863J
機材
Boeing 787-9
総評:4
4ッ星
機内食・ドリンク
5ッ星
座席(シート)
5ッ星
機内スタッフサービス
2ッ星
エンターティメント
4ッ星
トイレ・洗面台
5ッ星
機材コンディション
5ッ星
地上サービス
4ッ星
口コミ投稿者
MaplecroftInnkeeperさん
アクセス数
1,339
投稿日
2019/11/15

搭乗写真

  • 写真の種類:搭乗時の写真一般
    これは前のフィンエアーを降りた際にす... 続き
  • 写真の種類:搭乗時の写真一般
    搭乗口付近の待合場所。木目が暖かい雰... 続き
  • 写真の種類:座席(シート)
    シートピッチも十分で快適な座席でした... 続き
  • 写真の種類:機内エンターティメント・アメニティ
    エンタメも、ピカイチとは言えないまで... 続き
  • 写真の種類:機内食・ドリンク
    機内食は洋食の魚を選びました。これ自... 続き
  • 写真の種類:機内食・ドリンク
    JALのワインはオリジナル。食事に合... 続き
  • 写真の種類:機内食・ドリンク
    到着前の朝食。選択肢はなく、鶏のそぼ... 続き
  • 写真の種類:機窓・風景
    この小さい写真からわかるかどうか・・... 続き

総評

2便目のレビューにも書きましたけど、今回の日本帰国旅行は、逆向きに飛んでヨーロッパのどこかでちょっとだけ寄り道をするという考えで計画を進めたので、日本までの航空便も、別にどこの空港からでもよかったわけで、もっと安いチケットも確かにあったのですが、値段がやや高めになっても、今まで乗ったことがなかったJALの国際線に乗ってみたいという思いが湧いてきたのです。

ヨーロッパでJALが就航している都市はそれほど多くはなく、ロンドン、パリ、フランクフルト、ヘルシンキ、モスクワの5カ所だけです。ヨーロッパへは、ニューヨークからアムステルダムへ飛ぶ案を考えたので、アムスから比較的近いフランクフルトに目を付けました。JALは、フィンエアー、ブリティッシュエアウェイズと共に、2014年から欧州路線でジョイントベンチャーを組んでいるので、どのサイトでも、JAL便の入った経路のチケットが買えますが、少しでも多く新しい体験を入れてみたいと思って、乗ったことのないフィンエアーと組み合わせたものを選びました。この経路のチケットを、フィンエアーとJALのサイトで見てみると、フィンエアーの方が値段が少し安かったのですが、そちらで買うとJALの便の座席は選べません。JALの方で買うと、フィンエアーの便の座席は選べないものの、JAL便の座席は選べます。もちろん、一番安い「エコノミー・セーバー」ではなく、「エコノミー・スタンダード」にした場合です。ならば、やっぱり長距離便の座席が選べる方がいいと思って、今回はちょっと高いのには目をつぶって、JALのサイトでチケットを購入しました。

このヘルシンキ線は、JALのヨーロッパ路線としては多分一番新しく、2013年7月に就航しましたが、成田-ヘルシンキ路線は、それよりもずっと前の1983年に、フィンエアーが、西ヨーロッパと日本を結ぶ初めての直行便として就航しており、それ以来、便数を増やして、現在ではフィンエアーの成田発着は1日2便、それ以外にはセントレアや関西から毎日1便就航しており、さらに今年12月から千歳空港発着便もJALとのコードシェアとして就航予定ですし、来年3月からは羽田線が就航予定です。意外ですけど、日本からヘルシンキまで行く便は、ロンドンやフランクフルトよりも多いのですね。西ヨーロッパでは日本から一番近い都市という売り込みなのでしょうけど、確かに千歳空港からだと8時間台なので、近く感じるかもしれませんが、ヘルシンキがねえ…と不思議な思いです。

だけど、今回乗継でこのバンター空港を利用してみたら、わりとこじんまりとした空港で、木目が多く使ってあって暖かみを感じる雰囲気だし、フランクフルトとかパリとかロンドンとか、だだっ広くてごった返している空港とは違います。乗り継ぎ時間に余裕があったので、がらんとした搭乗口待合所で、時間が余ってボーッとして座っていました。だからきっと、入国もスムーズだろうし、そういう意味では、ヨーロッパへの足掛かりとしては便利なのかもしれませんね。

さて、初めてのJAL国際線なので、いよいよ搭乗という時には胸が躍ります。機材はB787です。B787といえば、ANAがその開発にも協力したローンチカスタマーだったのをすぐに思い出しますが、ANAは2011年10月に初めて成田-香港線でB787を飛ばしました。JALはそれよりもやや遅れて、2012年4月に、新しく開設されたボストン線にこれを導入しています。当初は、ビジネス42席、エコノミー144席、合計188席という仕様でした。JALは、2010年1年に会社更生法を申請して倒産となり、翌2月には株式の上場も廃止となってしったのですが、経営の立て直しを目指したJALは、新しい路線の開拓や機材の導入を進め、このB787導入やボストン線開設なども、その一環だったのか、倒産2年後のことでした。

JALは倒産後間もなく、経営立て直し戦略として、新シートの開発にも乗り出します。倒産したエアラインにとって、新しい機材やインテリアの導入というのは、客を引き付ける手段であるだけでなく、やる気を失くしてしまっている乗務員たちにも希望を与えるものなんでしょうね。経営側や、開発者たちだけでなく、機内で働く人たちも、そういうのに希望を託して歯を食いしばったんだろうなと思います。

そして2013年1月、JALは「New Sky Project」の一環として、2年以上をかけて開発したシートを配置し、全クラスリニューアルして生まれ変わったB777-300ERを、SKY SUITE 777として初めて成田-ロンドン線に投入しました。ファーストクラス「JAL SUITE」は、木目調のインテリアや、大型化したモニターを採用するなど、ビジネスクラス「JAL SKY SUITE」は、2-2-2のコンフィギュで、全席通路にアクセスできる完全フルフラットベッド、エコノミー席は「SKY WIDER」と呼ばれて、シートピッチを最大10センチ拡大して、「男性でも足を組める広さ」というのが売り物でした。当然、全体の座席数をかなり減らしてしまったのですが、何とかして座席数を増やして売上をあげようとする航空会社が多い中、ずいぶん大胆な試みだなと思ったのを覚えています。それが、会社更生直後のことだったことを考えると、かなり勇気の要るすごいことだったのですね。しかし、それが評価されて、JALは、Skytraxの2013年度ビジネスクラス・シート部門で世界一にランクされました。

その後、2013年12月には、SKY SUITE 767として、同様に全クラスリニューアルされたB767-300ERが、成田‐バンクーバー線に就航しました。このB767専用として開発されたビジネスクラスのシートは、SKY SUITE IIと名付けられました。ビジネスは1-2-1のコンフィギュでした。

国内線の分野でも、2014年5月から、SKY NEXTなるものが登場しました。機内のインテリアが刷新され、LED照明を採用したり、シートに本革が使われたり、エコノミーのシートを薄型化してシートピッチをそれまでよりも5センチも拡大したり、機内インターネットやエンタメの無料コンテンツを導入したりと、かなり大きな改革が実施されました。それから順次刷新が進み、2016年の終わりまでには国内線全機材がこれに切り替わっています。

国際線の舞台ではさらに2014年12月、今度はSKY SUITE 787として、同様にリニューアルされたB787-8が、成田‐フランクルフト線に投入されました。このB787のエコノミークラスのシートは、B777と同じものではなく、この飛行機のために新しく開発されたもので、 SKY WIDER IIと呼ばれ、シート幅(アームレスト間)が、他の機材に比べて広くなっています。(B767=45㎝、B777=47㎝、B787=48㎝)新仕様のB787は、ビジネスクラス38席、プレエコ35席、エコノミー88席、合計161席と、合計188席だった当初の仕様に比べて座席数がかなり減っていますが、その翌年2015年に、JALはSkytraxのエコノミークラス・シート部門でも世界一の座に輝きました。

今回搭乗したのはB787-8ではなく、9の方ですが、これは787-8よりもやや胴体が長いバリエーションとして、2015年の7月から成田-クアラルンプール線に導入されました。胴体が長い分、座席数も、ビジネスが6席、エコノミー席が28席ほど増えています。(プレエコは同じ35席)。

JALのシート開発はそれからもさらに進み、2016年7月には、新しいビジネスクラス、SKY SUITE IIIを導入したB777-200ERが、羽田-バンコク線、羽田-シンガポール線などに投入されました。このビジネスクラスでは、初めて1-2-1-のへリンボン式コンフィギュが採用されました。中央の2席を足元で上下に交差させることで、より広いスペースを確保した画期的アイデアが特徴ですね。エコノミーのSKY WIDERも、珍しい3-4-2というコンフィギュを採用し、色々と工夫が凝らされていました。

そして、2017年7月から、B787-9 にこの新ビジネスクラスのシートを配置した新しいSKY SUITE 787が誕生し、成田‐クアラルンプール線、成田‐大連線などに投入されました。

さらに今年8月から、B777-300ERのSKY SUITE 777のデザインが順次刷新されています。これは9月から国内線に導入されたA350 を意識してのことなのかもしれませんが、シートの配色がやや地味な落ち着いた感じになっているように見えます。

ただ、この「スカイスイート」というネーミングですが、機材全体のインテリア仕様を指して使う場合と、ビジネスクラスのシートを特に指して使う場合とあって、紛らわしいですね。今回乗ったB787-9の仕様「SKY SUITE 787」には、SKY SUITE III(ビジネスクラス)、SKY PREMIUM(プレエコ)、とSKY WIDER II(エコノミー)の座席が配置されているということでしょうか。それに加えて、B777などに配置されているファーストクラスのシートもJAL SUITEという名前らしいので、ますます紛らわしいです。

JALの経営破綻からもうすぐ10年がたとうとしていますが、こうしてザッと見てみると、この10年で機内のインテリアがほぼ全部ガラッと刷新されたことになりますし、新しい機材もいくつか導入されました。利用者の立場からでは、表面的なことしか目につきませんが、裏では色々な苦労があったのかもしれませんね。でもその努力が実って、今年ついにエコノミークラスの総合で世界一の座に輝くなど、世界の利用者に広く認められて評価が高まる結果につながっています。赤い鶴丸をあしらった機体からも、JALは今でも日本の顔だと感じさせるし、これからも頑張って欲しいと思います。

出発したのは夕方5時半で、飛び立つ頃にはもう夕暮れも過ぎて、すっかり暗くなっていました。思えば、今日は朝早く起きて、ケルンから列車で約50分かけてフランクフルトの空港まで行き、そこからフィンエアーで2時間半、ヘルシンキの空港で待つこと約2時間、長い一日でした。飛行機は無事に夜の空に向かって離陸し、ホッとした気分で日本の事や、JALの10年間の苦労の一面を思い出しながら、ふと自分の座っている座席を改めて見回してみると、確かに広さが違うし、座り心地もよく、満席で隣に人が座っていても、さほど圧迫感を感じないほどだし、JALの赤い色が温かみを醸し出していて、これが10年間の努力の結晶か・・・と思わせられます。9時間半のフライトもこれなら快適に過ごせそうな気がしました。

ここでサービス面の不満を一つ言わせてもらうと、私は後ろから3列目の席にいたのですが、機内食のカートが前からナメクジが這うようなペースで近づいてくるのを、指をくわえて見ていて、やっと来たと思ったら、自分のところでカートが空になってしまったのか、カートを一旦後ろに下げてしまい、メニューのカードをもってどっちにするか聞いた後、手で食事のトレーを運んできました。自分が選んだのは洋食の魚の方で、それにはパンがついてくるはずで、実際前の席まではパンを一緒にカートから配っているのが見えていたのに、自分はパンも省略され、赤いカップもトレーには置いてありませんでした。
食事を配るのにもたついていて、自分の席まで来るのにかなり時間がかかってしまったせいか、自分はまだ食事も受け取っていないのに、前の方では食べ終わった人もいて、デザートのアイスクリームをどんどん配っていました。後ろの方で食事を配っていたCAさんがそれを見て、後ろの方はアイスクリームはまだ待ってくれと言ったらしく、かごに入れてアイスクリームを配っていたCAさんは、前の方に一旦戻っていきましたが、自分がアイスクリームをもらった頃は、かなり溶けて柔らかくなっていました。
さらに、食事を下げるとき、やっぱり前の方からカートに食後のコーヒーやお茶を載せて配りながらトレーを下げていたのに、自分のところに来たらやっぱりカートがいっぱいになってしまったらしく、またしてもカートは後ろに下がってしまい、後から手でトレーを下げに来たので、コーヒーも省略されました。
そうやって、最後だからってサービスを省略されてしまうなんて、五つ星のエアラインらしからぬことで、やや不満が残りました。そういう理由で、機内スタッフの評価を下げさせていただきます。

飛行機は無事に、定刻よりも20分程度早く到着しました。着陸前に、富士山がきれいに見えたのには感激しました。

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