#597 (I442) 初マンダリン。高雄の鈴鹿サーキット!?へ - マンダリン航空 口コミ・評価

航空会社 マンダリン航空

2024年01月03日に撮影されたマンダリン航空の航空機写真

© HLeeさん

台湾
IATA | ICAO
AE | MDA
アライアンス
スカイチーム

搭乗レビュー
#597 (I442) 初マンダリン。高雄の鈴鹿サーキット!?へ

航空会社
マンダリン航空
便名
AE7932
エコノミー
搭乗日
2016/05
路線
花蓮 → 高雄
機体記号
B-16821
機材
Embraer ERJ-190-100 IGW (ERJ-190AR)
総評:3
3ッ星
機内食・ドリンク
3ッ星
座席(シート)
2ッ星
機内スタッフサービス
3ッ星
エンターティメント
2ッ星
トイレ・洗面台
無評価
機材コンディション
3ッ星
地上サービス
2ッ星
口コミ投稿者
westtowerさん
アクセス数
834
投稿日
2016/08/09

搭乗写真

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総評

ベトナムに渡ってからというもの機会がなくとんと御無沙汰しておりますが、嘗てはモータースポーツを趣味としておりました。台湾・高雄市に、本邦 株式会社モビリティランドが公式プロデュースした鈴鹿サーキットの1/10スケールの本格的なカートサーキット『Suzuka Circuit Park』がオープンしたと聞き、早速体感すべく高雄へ飛びました。

出発地 花蓮から高雄へは一日一便のみ、初搭乗となるマンダリン航空(AE)を利用。チャイナエアライン(CI)の子会社で、1991年の設立以降、政治・外交的理由でCIが就航できない諸外国へのKagemushaとして就航していましたが、現在はCIの羽田縛りも解けたようにそのような制約もなくなり、中国本土/香港路線を中心に就航させています。

【チェックイン】
この日 花蓮空港発の台湾国内線は朝イチのAE 高雄便以降は、全てトランスアジアの台北行きです。一日一便のために自社スタッフを抱えておくのは非効率過ぎるようで、チェックイン手続きはトランスアジアに委嘱していました。出発時刻のきっちり1時間前から搭乗手続きが始まりました。これ以上早く空港に到着しても、その時刻にカフェやショップは全閉しておりますので手持無沙汰になってしまいます。ご注意ください。

【搭乗機・機材コンディション】
B-16821 ERJ-190-100 IGW (ERJ-190AR)
2007年05月 マンダリン航空 登録の機齢9歳。シートは使い込まれた感がありますが、それ以外の内外装は問題なし
エンジンは2 x GE CF34-10E6

エンブラエル機は日本航空(ジェイエア)とフジドリームエアラインズが導入しており今は馴染みのある機材ですが、中長期的には日本航空はMRJへの移管を進めていくものと思われ、ERJの希少性が高まっていくものと思われます。

同シリーズはエンブラエル170(Yモノクラス72-78席)、エンブラエル175(同78-88席)、エンブラエル190(同100-114席)、エンブラエル195(同116-124席)の4種類。170と175、190と195はコンポーネントやパーツの90%が共通化され粗同一機と捉えても差し支えない(190と195で最大座席数差はたったの10席)ですが、航空会社が導入を決める際の“決め手”は何なのか、興味があるところです。

【機内概況・座席(シート)】
ブラジル産の機材に乗るとブラジルを旅したときのことを懐かしく思い出しますね。記録を辿ってみますと、直近でエンブラエル機にのったのは、
2014年04月 JL1224 三沢➢羽田 ERJ170
【搭乗レビュー/ #521 (D146) 偶然が偶然を呼んだ三沢への旅(復路)。空自F2が目前でスクランブルのハプニング!】http://flyteam.jp/airline/j-air/review/26282

その前は
2013年08月 AD4045 ヴィラコッポス➢ポルトアレグレ ERJ195
【搭乗レビュー/#508 (I366) LCCの風雲児 AD ERJ-195に初搭乗】http://flyteam.jp/airline/azul-linhas-aereas-brasileiras/review/25922
でした。
ご興味のある方はその時のERJの乗り味も参考にしてみてください。

2+2=4アブレスト、Yモノクラス104席仕様と余裕のある配置で、真正面に足を組める余裕のシートピッチは快適そのもの。

【客室乗務員】
チャイナエアラインと同じ制服と思われました。3名乗務されていました。

【機内食・ドリンク】
ショートホールにしてサンドイッチとコーヒーの提供がありました。以前中国東方航空のビジネスクラスでインスタントコーヒーが出てきたのにはびっくりしましたが、マンダリンはドリップコーヒーだったところはよかった、と言っておきましょう。

【エンターティメント】
機内誌 “mAnDARIn”(無錫特集)

【総評】
花蓮を発った機は暫く東部海岸沿いに南下するルートを飛行しました。「中央山脈を越えて直線的に縦横断すれば近いのに、何故こんなに遠回りするのだろう」と不思議に思いました。

後で地図を観て理由を以下の通り推察しました。
台湾本島の中央から東海岸にかけて玉山(標高3,952m)を最高峰とする山脈が南北にそびえ立っており、平地の少ない東海岸に位置する花蓮から直線的に山脈を越えるに足る高度を稼ぐことが航空機の性能上は可能でも運用上そぐわない、からではないかなと。

上記推察が正しいとすれば、以下南米チリ・サンチャゴ発ブラジル・サンパウロ行きのアンデス山脈越えの飛行経路と似ていると言えます。

【搭乗レビュー/#413 (I292) ラン(チリ)航空でアンデス山脈を越える】http://flyteam.jp/airline/lan-airlines/review/22779

フライトログ

搭乗の詳細データです。

座席番号
22D
搭乗クラス
Y
区間マイル
128
出発予定時刻
07:50
搭乗時刻
07:39
出発時刻
07:51
到着予定時刻
08:45
到着時刻
08:50
予定飛行時間
0:55
出発空港 天気・気温
出発ゲート・スポット
3
離陸滑走路
03
離陸時刻
08:03
到着空港 天気・気温
到着ゲート・スポット
29
着陸滑走路
09
着陸時刻
08:45

コメント

  • 2016/08/09 18:04:42

    westtower様

     台湾は楽しんでいらっしゃいますでしょうか?HB-JMBでございます。

     ERJ170か175のどちらにするか、あるいはERJ190と195のどちらにするかを航空会社が決めるいわゆる「決め手」についてですが、前にもA320のV2500かCFM56にするか、あるいはデルタがボンバルディアのCS100シリーズ導入をした理由に触れたように、発注後、いつ航空会社に納入されるかという納入順(別の言い方をすると納入待ち期間)は重要ではないかと毎度のごとく個人的な見解で恐縮ですが、そのように見ています。

     納入順を私が重要ではないかと考える理由としては、ERJ170と175、ERJ190と195では運用中の機数にかなり差があるためです。
     2016年8月9日のFlyteamのデータのよると
     ERJ170:167機
     ERJ175:341機
     ERJ190:518機
     ERJ195:141機

     これらのデータだけで直接ERJ機の売れ行きを判断していいかという問題はありますが、参考にはなるはずです。

     例えばERJ170かERJ175で迷っているカスタマー(航空会社)があったとして、本当はERJ175が欲しいがERJ170の方が売れ行きが悪いため、納入待ち期間が短いとすれば、多少キャパシティーが小さくなることを承知でERJ170を発注という可能性もなくはないでしょう。納入待ち期間が長いということは、実際飛行機を受け取っていないのに、飛行機購入資金の金利の発生する期間が長くなる、つまり余分に金利を払う必要が生じますから経営面でも大変です(この説明は外部から資金調達して自社導入する場合の話ですが、オペレーションリースの場合でも、金利負担についての考え方は基本的には同じはずです)。航空機は価格の安くないものですから、金利の対象期間がちょっと長くなったとしても、あるいは金利が0.1%でも高くなっても航空会社にとってはかなりの負担増になるはずです。

     逆に一定年数経過後、中古機として売ったときに価格が高くなる可能性が高いのは、現在運用中の機材が多い方だとみて、長い納入待ち期間による金利負担が多少大きくても、一定期間後に中古機として販売したときの価格が高いと期待できるので採算が取れると判断してあえてERJ175を選ぶという選択肢もありえます。特にオペレーションリースで飛行機を貸し出す場合には、中古機価格が高くなると期待される機種が好まれる傾向があります。というのは通常、エンブラエルに払う航空機購入価格に金利と諸経費を足した金額から、リース期間終了後に期待できる中古機として販売したときの販売見積価格を差し引いた金額をリース期間で回収できるようにリース料設定をするといわれているためです。ただし、一定期間経過後に期待される中古機として再販売可能な価格の見積りを誤ると大きな損害が発生し、それこそリース会社の存続にかかわる話にすらなりかねませんが・・・。

     ERJ190/ERJ195の選択にしても考え方は同じはずです。機体の小さいERJ190の方が売れ行きがよく、機体の大きいERJ195の方が売れ行きが悪いですが、この場合でも、納入待ち期間の差による金利負担額の差に加え、使用期間中あるいはリース期間中予想される燃料消費量と着陸料の差(着陸料は最大離陸重量の大きさに比例するため)を追加で考慮すればよいため、機種選択の際の判断方法の基本が大きく変わるわけではないものと考えられます。

     もちろんそれだけ売れ行きに差がありますと、メーカーでも売れ行きの少ないほうの機種を買おうとしている航空会社には通常より大きな割引を提供しようとしたりする可能性もあります(エンブラエルの営業担当部署に直接聞いた話ではないので、実際のところはどうだかは私の推測の域に過ぎませんが・・・)。

     私が勝手に考えた仮説なので、専門的にどこまで正しいかは保証の限りではないですが、「航空会社が導入を決める際の“決め手”」が分かる参考にはなりましたでしょうか?

     HB-JMB

  • 2016/08/09 18:29:10

    westtower様

     HB-JMBでございます。

     航空会社がある航空機の機種を導入するにあたり、どの要素を重視して導入機種を決定するかは解答は(というか正解は)1つではなく、航空会社によって異なることは申し添えておきます。そこが航空会社がどの機種を入れたかを見るときの面白みであります。

     例えば、フィリピン航空が1996年に一時運航停止になったあと、エアバス機主体のフリートに更新した例などは、金利や手持ち資金の状況を優先した選択なのではと思われます(フィンエアーのMD機からエアバス機への更新もこれに近いでしょう)

     スカンジナビア航空で2007年にDHC-8-400が連続事故で導入していた27機すべての運航を停止し、その後の機材更新あたりは、納入待ち期間の最小化に重きを置いた選択でしょう。日本航空でMRJと同時にERJの追加発注したことは、MRJでは納入まで時間がかかるので、当面はMRJ以外の機種が必要だが、自社系列会社で運航実績があり、かつ納入待ち期間も短いことからそのような判断になったのではと思われます。

     航空機メーカーから好条件のディスカウントを引き出すことを優先しているといわれているのは、エミレーツ航空などが典型的でしょう。

     また、1機種に頼るとその機種で問題があるときに影響を受けるため、あえて機種統一しない例もあったりします。ベトナム航空でA350とB787を同時導入したり(もちろんファイナンス上の理由もありますが)、ボーイングの下請けとして航空機メーカーとしての顔もある大韓航空が、ボーイングにB777-200やB767というラインナップがあるのに中型機にあえてA330-300や-200を導入している例もここに当てはまるのではと思われます(もちろんB767では大韓航空の路線構成には適さないという事情はあるしょうが・・・。なお、大韓航空では何機かB777-200(LR型除き、ER型含む)の導入履歴はあったはずですが)

     逆に1機種に統一することで運航費用最小化に重きをおいている例はジェットスターグループなどLCCにかなりの例があったりします。香港など英国統治領であったところが、ロールスロイスエンジン搭載機にそろえているのもここに当てはまるでしょう。

     補足が長々になってしまって恐縮ですが・・・。HB-JMB

  • 2016/08/09 23:27:02

    僕の抱える疑問にはHB-JMB先生が答えてくれる、との期待と甘えが拭いきれないwesttowerです。
    いつも本当に有難うございます。

    確認が困難な実機のexactlyなお値段&コストパフォーマンスは一先ず横に置くとして、表面的な設置可能座席数に囚われて想像力を欠いていましたが、納期、金利負担、リセールバリュー、運用コスト、そしてディスカウント・レート等様々なファクターが機材選択に影響を及ぼしていること、よく理解できました。

    非常に明快なご解説につき例を挙げるまでもないのですが、僕のような庶民の一大決心、自動車購入のケースと似通っているところもあるなぁと思いました。
    例えば、
    設置可能座席数=家族構成や仕様シーンに応じたシート数(定員数)は基本要素
    納期=一度決めたら早く乗りたい(活用したい)のが人情
    金利負担=自動車レベルでも金利の0.1%はインパクト大
    リセールバリュー=買い換えの際の原資は高い方が良し。残価設定型ローンにも関連
    運用コスト=燃費は今や最大の関心事。自動車税(≒着陸税)は安いに越したことなし
    ディスカウント・レート=より有利な条件を引きだすためディーラーを行ったり来たり
    ニュアンスが違いましたらどうぞお許しください。

    追加でいただきましたコメント、「航空会社がある航空機の機種を導入するにあたり、どの要素を重視して導入機種を決定するかは解答は(というか正解は)1つではなく、航空会社によって異なる。そこが航空会社がどの機種を入れたかを見るときの面白み」。

    本当におっしゃる通りだと思います。
    本件に話が及ぶと長くなってしまいますので、今晩はこれで失礼いたします。
    また後日改めて返信申し上げます。

    westtower

  • 2016/08/18 17:00:42

    westtower様

     お返事が遅くなってすみません。HB-JMBでございます。

     航空機の購入時における資金をどうするか?という問題については、westtower様がお書きになったとおり、基本的な仕組みをざっくり言えば、自家用車とか住宅購入時のローンのよう(金額は違いますが)な考え方ではという見方、さすが目のつけどころがよいです。ただし、航空機は価格が非常に高いので、ファイナンスリースを行う際、航空会社の自己資金(社債発行も含め)と銀行など金融機関の融資する資金に加え、一般の投資家にも航空機代金の一部を出してもらう方法もあったります(自分の自家用車の購入あたりでは一般投資家に資金を募ることは普通はないでしょうから・・・)。この方法はいわゆる「レバレッジドリース」という方法で、出資してくれた一般投資家には出資の条件に従って、出資額に利息を付加した金額を一定の期間に支払うことになります。

     余談はここまでにして、花蓮~高雄間あるいは、サンディアゴ~サンパウロ間の飛行経路が遠回りにすることについて「直線的に山脈を越えるに足る高度を稼ぐことが航空機の性能上は可能でも運用上そぐわない」理由ですが、いつものごとく私の推測で恐縮ですが、次のような説明になるのではと思われます。
     機内急減圧時の緊急降下を行う場合において、緊急降下するターゲットとなる安全高度より高い高度を飛ばざるを得なくなるが、当該航空機がそ操縦席およびキャビンの酸素マスクから供給できる酸素の量の制約から、安全高度より高い高度の飛行可能時間には時間制限が厳密に設けられております。万一安全高度より高い高度を一時的に飛ばざるを得ない場合でも、絶対に超えてはいけない高度の制限も厳しく定められていたはずです(運航マニュアルやその機種の飛行性能表というのは外部秘が原則なので生を直接私が見たわけではないですが・・・)。そのため、直線的に急上昇すると、機内急減圧の際の緊急降下においてこれらの制限に抵触する飛行区間が発生してしまうため、遠回りをせざるを得ないのではと思われます。

     長くなりそうなので、与圧機の仕組み等々について補足したいことは次の稿にて。HB-JMB

  • 2016/08/18 18:16:26

     westtower様
     
     HB-JMBでございます。
     さきほどの補足(とっても説明はかなり複雑にならざるを得ないので長くなってしまうの)ですが・・・

     1.緊急降下時における供給できる酸素の量ですが、基本的には、操縦室で急減圧を認識してから直ちに降下操作を開始し、その際の降下率はその航空機の性能上許される最大値に近い値をとりますから(各航空会社ではその際の降下率をどのくらいにするかはマニュアルで規定されているはずです)、供給可能な酸素量は多くありません。おおよその目安は30000ft巡航時に緊急降下時で安全高度14000ft(後述するように一例です)に降下するには2分程度とされています。したがって、酸素マスクで酸素を供給可能な時間はおおむね15分~20分程度に設定されているはずです。

     2.緊急降下が必要となる場合は、おおまかな流れは「緊急降下決定→パイロットが1人ずつ酸素マスク装着→客室への酸素マスク展開→降下操作→安全高度でパイロットが1人ずつ酸素マスクを外す」となります(本来は緊急降下決定時に管制に緊急事態宣言するとともにどの機種方位とどの高度まで降下する旨を通報するとか、降下操作には他のトラッフィックのない可能性が一番高い機種方位に操作することなども含んではいますが・・・)

     3.最終的に降下すべき安全高度は運航国および機種により多少違いますが、10000ft-15000ft程度に設定されていることが一般的です。日本では高度計規正値が変更(要はフライトレベルと定義される気圧高度計補正値29.92インチ、つまりQNEから俗にエリアQNH言われるその飛行エリアにおける気圧の値に高度計を補正すること)必要な14000ftまで必ず一気に降下させ、状況によって可能ならばさらに安全な10000ftを最終的な目的高度にする方法が一般的なようです(なるべく低い高度まで早く降下することで、急減圧時に意識を失うリスクをなるべく回避することを狙っているものと推測されます)。
     余談ですが、アメリカではQNEにセットすべき高度(つまり高度を言うときに「フライトレベル」と称する必要がある高度)は18000ftですから、緊急降下時に巡航高度から酸素マスクがなくても当面は生命の危険が限りなく少ない18000ftまでは一気に降下し、その高度で一旦レベルオフさせ最終的な安全高度(おおむね10000ft)まで徐々に下ろすという手順の国や航空会社もあるようです(18000ftから段階的に10000ftに下げることにより気圧差により鼓膜にかかる負担を減らすとともに、急減圧時における減圧症回避、つまり気圧差により血管内に空気の気泡を入れないことに重点を置いた方法といわれています)。

     4.酸素マスクが下りてきて緊急降下する場、シートベルト着用サインも同時に点灯されるのは、1.で述べたような急激な降下を行うためという理由に加え、機内から機外に吸い出されるのを防止するという理由もあったりします。例えば、ドアの閉まりが悪くて急減圧になった際、シートベルトをしていないと人間でさえ閉まりの悪いドアに吸い込まれていく危険もありますので・・・。

     なお、これは本当の余談ですが、世界の航空路線で絶景といわれる北京~パキスタン路線(昔は成田から北京経由でパキスタンまでパキスタン航空の便があったそう)では標高の高いヒマラヤを超えるが、遠回りで高度も稼げないため、運航方式が大変に特殊で、どの時点で急減圧した場合にはどこにどの高度で向かい、その後どこに緊急着陸するかということが、飛行位置によって相当厳密に定められ、それを運航管理者とパイロットでフライト前やフライト中十分に確認するといわれています(もちろんETOPS運航下でもどの位置ならどの空港をオルタネートにするかを、運航管理者とパイロットとのブリーフィングを行う際に、チャート上にペン等で着色しなかが確認する方式と言われていますが、北京~パキスタンのいわゆるヒマラヤ越えフライトではETOPS適用のフライト以上に厳密とさえ言われています)。余談ですが北京~パキスタン路線では上述の制限から使用可能機種に制約があると言われ、パキスタン航空のパキスタン~北京~成田線においてB777-200LRなどの新型機が導入後も、この路線では長らくA310のままだっとと言われています。例えば、A310からB777-200LRに機種変更しようとすると、ヒマラヤ運航に足りる機材の信頼性を証明する必要があるだけでなく、B777-200LRに対応したヒマラヤ通過時運航要領を作成した上で関係国より認可を受ける必要があり、通常路線での使用機種変更よりも相当な手間がかかるとされるためです(もちろんA310からB777以外の機種に変更する場合でも同じです)

     説明が難しすぎなければよいのですが・・・。HB-JMB

    P.S.急減圧時に緊急降下すべき安全高度の問題以外にも、その機種で保証されている上昇率の最大値では直線的な針路を取ると実現できないからという理由もあるでしょうが、こちらの説明は割愛します。なお、上昇性能はは画一的な数字で示すことはできず、外気温や機体重量などの要素により大きく変化しますので、複数の表やグラフで示されることになります。もちろん最大値だけでなく機体およびエンジン寿命の観点、あるいは燃料消費率からみた推奨値の設定も実際にはあるはずです。

  • 2016/08/19 10:27:17

    westtower様

    HB-JMBでございます。読み返してみてちょっと補足しないといけないところがあり・・・。

     先の高度ですが、緊急降下における高度は基本的には「海抜高度」(英語ではabove the sea level)で考えます(一応は「相対高度」とみなされる)が、地表からの高さ(いわゆる「絶対高度」)も一定程度以上という条件があるはずです(あまりに低すぎるとGPWSや地形データベースを機上に搭載して、現在位置と照合できる機能が付加されたE-GPWSが作動したりしますし・・・)

     緊急降下時にとる機首方位についてですが、原則的には90度以上変更した上で行うようですが、「安全高度までの降下における運航時の制限事項」の中には、「その地点における緊急降下時において取りうる機首方位の範囲が一定以上」という制限は全飛行区間で満たしているという条件も含まれているものと考えられます(標高の著しく高い山脈、例えばアンデス山脈とはヒマラヤ山脈の海抜より低い高度が安全高度という地点を飛行している場合に、いくら安全高度が規定されているからといって、そのまま山に突っ込むわけにはいきませんので・・・)

     急峻な山岳を含む経路の運航はそれなりに大変であります。アンデスやヒマラヤ越え以外で日系航空会社が飛んでいた山岳地帯により特殊な運航が必要という例では、今は飛んでいませんがJALの成田~ミラノ(イタリア)線でのミラノ着陸時(機種は744)などがあります。着陸時は通常の1分間1000-2000ftでは降下すると山にあたるため(運航開始時の某雑誌の搭乗レポではFMSが示すTop of Desent、つまりT/Dの地点では降下できない旨が書いてあり)、山を越えてからミラノに向けて一気に降下するようです。運航マニュアルのことは書いてありませんでしたが、どの地点までは巡航高度を保つとか、そのとき急減圧が発生したらどうするかの規定は別に設けられていたのではと思われます(今でも他社のドイツや北欧発着のミラノ線は多数あり、ミラノへのアプローチでは上述のような運航方式になっているものと思われます)

     いつものごとく、余談が余談でなくなって恐縮ですが。HB-JMB

  • 2016/08/20 08:06:58

    HB-JMB様
    飛行経路と運航レギュレーションについて3編に亘る詳細なご解説をいただき、誠に有難く感謝いたします。只今居留地を離れており、熟読し理解を深めたうえで上で後日きちんとした返信をさせていただきます。取り急ぎ御礼まで、いつも有難うございます。
    westtower

  • 2016/08/27 17:53:41

    HB-JMB様
    ホーチミンに戻って参りました。

    なるほど、飛行ルート選定の上で、万が一の際の緊急降下、又ダイバートの候補空港も考慮に入れてシミュレーションしななければならないということですね。
    この点については考えが及びませんでした。

    確かに台湾島の脊梁である中央山脈の上に一旦昇ってしまうと、地形的特性上2分以内に高度14,000ft以下に緊急降下することは難しいと思われます。ダーイバートするにしても、急降下を伴う東海岸への引き返し、若しくは距離がある西海岸の台中、嘉義、台南のどちらを選択するにしてもリスクを伴うでしょう。

    地図上で計測してみますと、花蓮/高雄間の山脈越えの直線距離は約200km、東海岸沿いを南下し山脈の南端を廻り込むルートも230km程度と、それほど差がないことが分かりました。

    安全運用を最優先すると、必然的に迂回ルートの選択になるということですね。

    返信が遅れ申し訳ございませんでした。

    westtower

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