搭乗レビュー
2016年帰国旅行6便目-ワインさえあれば・・・
- 口コミ投稿者
- MaplecroftInnkeeperさん
搭乗写真
総評
南ア航空は残念ながら日本に就航していないので、香港止まりです。香港便は1974年にセイシェル経由でB707によって就航しました。その後、たぶんB747が投入されていたのだろうと思いますが、2000年代後半にフリートを一新してから、長距離便はすべてエアバス機に変わっていて、B747に取って代わったのがA340です。中でもA340-300の最新型であるA340-300 Enhancedは、南ア航空がローンチカスタマーで2003年に世界の空にお目見えしました。現在この機種を運用しているのは、南ア航空とエア・モーリシャスの2社だけだそうです。なぜかあまり普及しなかったということですね。エアバスは受注分を全部デリバリしたとして、2011年にA340の製造を終了しました。貴重な4発機ですけど、もう製造されなくなって、これからどんどん退役していくだけなのですね。そんなことを思いながら、カフェの窓際のテーブルに座って、停泊中の飛行機をガラス越しにボーっと眺めていました。
オリバー・タンボの名前で知られるヨハネスブルグ空港は、1952年にできましたが、当時はヤン・スマッツ空港という名前が付けられました。スマッツ氏は1948年まで南アフリカの首相をしていた人で、当初は人種隔離政策を擁護していましたが、後になって緩い姿勢に代わり、48年の選挙で強硬派が政権を握り、アパルトヘイト政策が始まりました。スマッツ氏はその2年後に死去しています。1994年にマンデラ氏が大統領に就任した際に、この名前は廃止され、ただの「ヨハネスブルグ国際空港」となりましたが、ちょうど10年前の2006年にオリバー・レジナルド・タンボ氏の名前を取って「ORタンボ空港」と改名されました。タンボ氏はネルソン・マンデラ氏の大学時代からの長い親友で、一緒に法律事務所を経営したり、アパルトヘイト廃止に向けて熱心に政治活動に携わった人物です。残念ながら、マンデラ氏の大統領就任を目にすることなく、前年の1993年に死去してしまいました。南アフリカの近代史を象徴するような名前の空港ですね。
だけど歴史は歴史、今は今というふうに割り切って欲しいものですけど、ターミナル内は本当に古い感じです。この便のゲートはA0(ゼロ)と、今まで聞いたことない番号で、国際線ターミナルの袖の一番端にあります。まだ搭乗時間までは間があるけどとりあえず場所を確認しておこうと思って行ってみたら、殺風景というか、なんだか色気もそっけもない殺伐とした雰囲気で、窓らしい窓もない薄暗い廊下のようなところに中国人が疲れた顔してずらっと座っています。そんなところに1時間も座る気にはどうしてもなれないので、見ただけでくるっとUターンしてカフェの窓際に座り、欲しくもない紅茶とスコーンを注文して居座ることにしました。ガラス張りの見晴らしのいい場所で、ここからは向こうの方にこれから乗る飛行機が停泊しているのが見えます。それ以外にも、色んな飛行機が離陸したり着陸したりする様子も良く見えました。
この空港は標高が1,700メートルと大変高く、気温も高いので、空気が薄くて離陸するのに余計に時間がかかるし、高度を上げるのにも時間がかかります。なので搭載する燃料を減らしたりして、飛行機を減量するのだそうです。日本では、一番標高の高い松本空港でも657メートル程度ですね。アメリカではコロラド州のデンバー空港が約1,650メートルで同じくらい、世界で最も標高の高い空港は中国のチャムド・バンダ空港で、4,400メートルもあります。飛行機が飛び上がるからくりは、スピードを出して前進する際に、翼の上部と下部の形の違いにより空気の流れ方を変え、上部の空気圧が下部よりも低くなるように空気圧の差を作り、後ろに流れていく空気を下に押し下げることで、翼の形がその一番の役割を果たしています。つまり重い空気の上に乗って軽い空気の方に上がっていくのですね。そのため空気が薄ければ機体を持ち上げにくくなります。飛行機の性能仕様は、海抜ゼロメートルで気温15℃を基準にしているため、標高、気温ともに高くて空気が薄く、さらに低気圧に覆われてしまったりすると、飛行機の性能が大きく影響を受け、パイロットは苦労することになります。あと、飛行機が古いとそれだけ性能が悪くなっているし、スポットアウトする頃には雨が降っていたので、やっぱり低気圧だったということですね。飛行機に乗りこんで自分の席につき、そんなことを考えながら、なんだか悪条件が重なっているなと思うと、離陸の時には不安がよぎって、思わず息を呑んでいました。でもそんな場所を根拠地にしている南ア航空のパイロットさんたちは、よほど訓練が行き届いているのだろうなとも思いました。
無事に離陸してほっとした気分でいると、その機長の優しそうな声が聞こえてきました。香港も低気圧で雨のようだが、なるべくスムーズなフライトになるよう努力する、今のところ定刻で到着する予定だが、もしかしたら香港の着陸に少し待たされるかもしれない。だけど安心してフライトを楽しんで欲しい、といった内容です。この便はオンタイム率があまりよくなく、2時間や3時間の遅れも珍しくないので、まあ定刻で出発できただけでもよしとしましょう。機長の言葉を聞いて安心したのか、すこしくつろいだ気分になってきました。
空がすっかり暗くなった頃、機内サービスが始まり、まず飲み物のカートがやってきました。赤ワインをお願いしたら、まず何も言わないのに水のペットボトルと、ワインを気前よくポンポンと2本くれて、しかもカートの引き出しを置くまでごそごそと物色して、違う種類のワインをくれました。メニューカードなどは配られませんでしたが、あらかじめアナウンスで、一つはビーフラザーニャ、もう一つはポークとジャスミンライス、ブロッコリー添えということで、それ以外にベジタリアンのチョイスもあるとのこと。3種類用意しているというのは立派ですね。ポークは中華らしいので、ラザーニャをいただくことに。目の前のテーブルにトレーをポンと置いて、CAさんはカートを前に押していきました。ゆっくり丁寧に注意深くビニールを破って中の紙ナプキンを膝の上に広げ、蓋を取って下に敷き、中身が見えるようにして、横に置いてあったカメラを取ってカシャ。メインの中身を見ると…、ラザーニャだけど、野菜がない…。サイドディッシュもパスタサラダ…。ラザーニャは一応ひき肉たっぷりで、やや脂っこいですけど、一口食べてみると…、まあこんなものか、という感じですね。まずくはないですけど。でも食器類はアルミのメイン以外はちゃんとメラミン製だし、カトラリーも薄いけど一応金属。それだけでも、食べている時の気分はずいぶん違います。
あと嬉しいのは、ワインが全部南アフリカ産です。自分の国のワインを自信と誇りを持って出せるエアラインって、考えてみたら少ないですね。いわゆる5つ星エアラインで、自分の国のワインを出しているのは多分1社もないのではないでしょうか。南ア航空は、ビジネスクラスでも、ちょっと前までフランスのシャンパンを出していたのが、自分の国のスパークリングワインに変えるなど、かなり自分の国をアピールしていて、機内で出すワインを選ぶのに、南ア国内のワイナリーから数百もの銘柄がエントリーされ、ソムリエチームがその中から厳選する、選ばれた銘柄を表彰するなどの大きなイベントを開いています。それだけでも心がこもっているような気がします。カートの引き出しの中を物色した結果赤ワインは3種類出てきて、全部南アフリカ産でした。ケープタウンの周辺は地中海性気候で、ブドウの栽培に適しているし、ワイン作りの歴史は300年以上もさかのぼります。「ピノタージュ」(ピノノワールとエルミタージュを掛け合わせた品種)という、1925年に開発された南ア原産のぶどうもあって、世界に通用する素晴らしいワインが作られています。2本もらったワインの一つもピノタージュでした。ということで、ワインをたっぷりといただいて、ちょっとシアワセな気分になりました。
途中のおやつのサービスがなかったのが、自分としてはやや残念で、長い夜間フライトではやや手持無沙汰を感じる時間もありました。フライトの間機内はかなり真っ暗になっていましたが、読書灯をつけてカチャカチャと物を書いていたら、CAさんがやってきて、まぶしいと文句を言っている人がいるから、消してくれと言われました。でも読書灯を消してしまうと、キーボードの文字が見えない…。しょうがないから、ものを書くのはあきらめて、また睡眠を試みることにしました。
オリバー・タンボの名前で知られるヨハネスブルグ空港は、1952年にできましたが、当時はヤン・スマッツ空港という名前が付けられました。スマッツ氏は1948年まで南アフリカの首相をしていた人で、当初は人種隔離政策を擁護していましたが、後になって緩い姿勢に代わり、48年の選挙で強硬派が政権を握り、アパルトヘイト政策が始まりました。スマッツ氏はその2年後に死去しています。1994年にマンデラ氏が大統領に就任した際に、この名前は廃止され、ただの「ヨハネスブルグ国際空港」となりましたが、ちょうど10年前の2006年にオリバー・レジナルド・タンボ氏の名前を取って「ORタンボ空港」と改名されました。タンボ氏はネルソン・マンデラ氏の大学時代からの長い親友で、一緒に法律事務所を経営したり、アパルトヘイト廃止に向けて熱心に政治活動に携わった人物です。残念ながら、マンデラ氏の大統領就任を目にすることなく、前年の1993年に死去してしまいました。南アフリカの近代史を象徴するような名前の空港ですね。
だけど歴史は歴史、今は今というふうに割り切って欲しいものですけど、ターミナル内は本当に古い感じです。この便のゲートはA0(ゼロ)と、今まで聞いたことない番号で、国際線ターミナルの袖の一番端にあります。まだ搭乗時間までは間があるけどとりあえず場所を確認しておこうと思って行ってみたら、殺風景というか、なんだか色気もそっけもない殺伐とした雰囲気で、窓らしい窓もない薄暗い廊下のようなところに中国人が疲れた顔してずらっと座っています。そんなところに1時間も座る気にはどうしてもなれないので、見ただけでくるっとUターンしてカフェの窓際に座り、欲しくもない紅茶とスコーンを注文して居座ることにしました。ガラス張りの見晴らしのいい場所で、ここからは向こうの方にこれから乗る飛行機が停泊しているのが見えます。それ以外にも、色んな飛行機が離陸したり着陸したりする様子も良く見えました。
この空港は標高が1,700メートルと大変高く、気温も高いので、空気が薄くて離陸するのに余計に時間がかかるし、高度を上げるのにも時間がかかります。なので搭載する燃料を減らしたりして、飛行機を減量するのだそうです。日本では、一番標高の高い松本空港でも657メートル程度ですね。アメリカではコロラド州のデンバー空港が約1,650メートルで同じくらい、世界で最も標高の高い空港は中国のチャムド・バンダ空港で、4,400メートルもあります。飛行機が飛び上がるからくりは、スピードを出して前進する際に、翼の上部と下部の形の違いにより空気の流れ方を変え、上部の空気圧が下部よりも低くなるように空気圧の差を作り、後ろに流れていく空気を下に押し下げることで、翼の形がその一番の役割を果たしています。つまり重い空気の上に乗って軽い空気の方に上がっていくのですね。そのため空気が薄ければ機体を持ち上げにくくなります。飛行機の性能仕様は、海抜ゼロメートルで気温15℃を基準にしているため、標高、気温ともに高くて空気が薄く、さらに低気圧に覆われてしまったりすると、飛行機の性能が大きく影響を受け、パイロットは苦労することになります。あと、飛行機が古いとそれだけ性能が悪くなっているし、スポットアウトする頃には雨が降っていたので、やっぱり低気圧だったということですね。飛行機に乗りこんで自分の席につき、そんなことを考えながら、なんだか悪条件が重なっているなと思うと、離陸の時には不安がよぎって、思わず息を呑んでいました。でもそんな場所を根拠地にしている南ア航空のパイロットさんたちは、よほど訓練が行き届いているのだろうなとも思いました。
無事に離陸してほっとした気分でいると、その機長の優しそうな声が聞こえてきました。香港も低気圧で雨のようだが、なるべくスムーズなフライトになるよう努力する、今のところ定刻で到着する予定だが、もしかしたら香港の着陸に少し待たされるかもしれない。だけど安心してフライトを楽しんで欲しい、といった内容です。この便はオンタイム率があまりよくなく、2時間や3時間の遅れも珍しくないので、まあ定刻で出発できただけでもよしとしましょう。機長の言葉を聞いて安心したのか、すこしくつろいだ気分になってきました。
空がすっかり暗くなった頃、機内サービスが始まり、まず飲み物のカートがやってきました。赤ワインをお願いしたら、まず何も言わないのに水のペットボトルと、ワインを気前よくポンポンと2本くれて、しかもカートの引き出しを置くまでごそごそと物色して、違う種類のワインをくれました。メニューカードなどは配られませんでしたが、あらかじめアナウンスで、一つはビーフラザーニャ、もう一つはポークとジャスミンライス、ブロッコリー添えということで、それ以外にベジタリアンのチョイスもあるとのこと。3種類用意しているというのは立派ですね。ポークは中華らしいので、ラザーニャをいただくことに。目の前のテーブルにトレーをポンと置いて、CAさんはカートを前に押していきました。ゆっくり丁寧に注意深くビニールを破って中の紙ナプキンを膝の上に広げ、蓋を取って下に敷き、中身が見えるようにして、横に置いてあったカメラを取ってカシャ。メインの中身を見ると…、ラザーニャだけど、野菜がない…。サイドディッシュもパスタサラダ…。ラザーニャは一応ひき肉たっぷりで、やや脂っこいですけど、一口食べてみると…、まあこんなものか、という感じですね。まずくはないですけど。でも食器類はアルミのメイン以外はちゃんとメラミン製だし、カトラリーも薄いけど一応金属。それだけでも、食べている時の気分はずいぶん違います。
あと嬉しいのは、ワインが全部南アフリカ産です。自分の国のワインを自信と誇りを持って出せるエアラインって、考えてみたら少ないですね。いわゆる5つ星エアラインで、自分の国のワインを出しているのは多分1社もないのではないでしょうか。南ア航空は、ビジネスクラスでも、ちょっと前までフランスのシャンパンを出していたのが、自分の国のスパークリングワインに変えるなど、かなり自分の国をアピールしていて、機内で出すワインを選ぶのに、南ア国内のワイナリーから数百もの銘柄がエントリーされ、ソムリエチームがその中から厳選する、選ばれた銘柄を表彰するなどの大きなイベントを開いています。それだけでも心がこもっているような気がします。カートの引き出しの中を物色した結果赤ワインは3種類出てきて、全部南アフリカ産でした。ケープタウンの周辺は地中海性気候で、ブドウの栽培に適しているし、ワイン作りの歴史は300年以上もさかのぼります。「ピノタージュ」(ピノノワールとエルミタージュを掛け合わせた品種)という、1925年に開発された南ア原産のぶどうもあって、世界に通用する素晴らしいワインが作られています。2本もらったワインの一つもピノタージュでした。ということで、ワインをたっぷりといただいて、ちょっとシアワセな気分になりました。
途中のおやつのサービスがなかったのが、自分としてはやや残念で、長い夜間フライトではやや手持無沙汰を感じる時間もありました。フライトの間機内はかなり真っ暗になっていましたが、読書灯をつけてカチャカチャと物を書いていたら、CAさんがやってきて、まぶしいと文句を言っている人がいるから、消してくれと言われました。でも読書灯を消してしまうと、キーボードの文字が見えない…。しょうがないから、ものを書くのはあきらめて、また睡眠を試みることにしました。
フライトログ
搭乗の詳細データです。
- 座席番号
- 72H
- 搭乗クラス
- エコノミー
- 区間マイル
- 6,640
- 出発予定時刻
- 17:50
- 到着予定時刻
- 12:45
- 予定飛行時間
- 12:55
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