新型コロナウイルス感染症の影響で旅客輸送よりも貨物輸送に脚光が集まっている航空業界ですが、日本航空(JAL)は貨物専用機を所有していないことをご存ですか?かつて、JALは21機のボーイング747貨物専用機を運航。2010年の経営破綻により、経営再建の一環で貨物専用機をすべて売却。現在は旅客機の客席下に設けられている貨物エリアを使った輸送を行なっています。このコロナ禍であれば、貨物専用機で大きな収益を上げられていたかもしれません。JALのボーイング747貨物機、中でも印象的で、航空ファンにも注目された3機しかないシルバーに輝く機体を中心に振り返ります。
JALが運航していた大型のボーイング747貨物機は、1974年に747-200型の貨物専用機の導入でスタート。その中でもシルバーに輝く印象的な機体は、1992年8月に登場しました。シルバーの機体は、一般に「ポリッシュドスキン」や「ベアメタル」と呼ばれますが、JALでは前者の呼び方が使われていました。
このポリッシュドスキンは、燃費改善につながる効果があり、現在の環境に優しいフライトを目指す先駆けでした。塗装を省き、機体軽量化により、年間4万リットルの燃料削減につながりました。747の胴体塗装はドラム缶3本分相当、およそ600リットルの塗料を使用。塗装は約0.1ミリ厚さしかないものの、大きな機体全体に塗ると、その重量は150キログラムに相当します。大人2〜3人分が毎回のフライトで軽量化されます。
ただし、塗装には、機体の劣化を防ぐ機能もあります。ポリッシュドスキン仕様機は、アルミ合金の胴体に機体の腐食を防ぐ酸化被膜の保護材をコーティングし、機能を代替しました。これにより、磨き上げられたシルバーに輝く機体は、空港でファンの目を奪う注目の存在でした。
初めてのポリッシュドスキン仕様は、747-200型の機体記号(レジ)「JA8180」で登場。その後、2004年10月に747-400型貨物機として初めて導入したレジ「JA401J」と「JA402J」の計3機が747のポリッシュドスキン仕様として運航されました。2010年9〜12月ごろ、このポリッシュドスキンの747を含め、経営再建のために全機、JALから退役、売却されました。
旅客便を運航する日本の航空会社で貨物専用機を導入しているのは、全日本空輸(ANA)のみです。ANAは2002年に貨物専用機を導入し、現在はボーイング767型9機、ボーイング777型2機、計11機を運航。コロナ禍で、旅客機だけでなく貨物専用機もフル活用した航空輸送に取り組んでいます。
■JALのボーイング747型貨物機機体記号 | 機種 | 塗装 | 現在 |
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JA8107 | 747-146/SF | 白 | スクラップ |
JA811J | 747-246F | 白 | 保管 |
JA8123 | 747-246F | 白 | スクラップ |
JA8132 | 747-246F | 白 | スクラップ |
JA8144 | 747-246F | 白 | 2001年事故・大破 |
JA8160 | 747-221F | 白 | 保管 |
JA8161 | 747-246B/SF | 白 | スクラップ |
JA8165 | 747-221F | 白 | スクラップ |
JA8169 | 747-246B/SF | 白 | スクラップ |
JA8171 | 747-246F | 白 | スクラップ |
JA8180 | 747-246F | 白->シルバー | スクラップ |
JA8193 | 747-212B/SF | 白 | スクラップ |
JA8937 | 747-246F | 白 | JA8151から改番、保管 |
JA401J | 747-446F | シルバー | HL7616 |
JA402J | 747-446F | シルバー | G-CLAA |
JA8072 | 747-446/BCF | - | N742CK |
JA8902 | 747-446/BCF | 白 | N344KD |
JA8906 | 747-446/BCF | 白 | N743CK |
JA8909 | 747-446/BCF | 白 | N744CK |
JA8911 | 747-446/BCF | 白 | N356KD |
JA8915 | 747-446/BCF | 白 | N745CK |