運輸安全委員会は2017年7月27日(木)、2016年3月1日(火)に朝日航洋が運航するAS332L1、機体記号(レジ)「JA9678」による福井県三方郡で発生した重大インシデントについて、事故報告書を発表しました。
この重大インシデントは、福井県・美浜町内の場外離着陸場を離陸し、作業現場に2個の物資をつり下げて飛行中、山林に1個の物資を落下させたものです。当日は20回の物資輸送を計画、このうち11回目の輸送からカーゴネットで包まれた物資をフックに吊り下げ、インシデントは13回目の輸送時に発生したものです。発生場所は、場外離着陸場から北の約650メートルの山林、北緯35度41分15秒、東経136度5秒で、発生時間は10時8分頃でした。
報告書は飛行中に使用していたフックのキーパーが開き、つり荷が落下したと推定しています。フックのキーパーが開いたことは、キーパーがロックされていない状態でワイヤーのアイのまた掛かりが発生し、つり荷の荷重でキーパーに横方向の力が働いた可能性があるとしています。ワイヤーのアイのまた掛かりの発生は、作業別実施要領にキーパーのロック・インジケーターの位置を確認する手順の記載がなく、地上作業員に時間的な余裕がなく、ワイヤーの長さ合わせやねじれを取る作業が不十分でだった可能性を指摘しています。
再発防止策として、フック製造会社はキーパーのロック状態をロック解除レバーの位置によって確認することを飛行規程に追記、サービスブリテンの発行でプッシュロッドを先端部の厚みを増した約4ミリメートルから約7ミリに交換するよう指示を出しています。また、朝日航洋はインシデント発生直後、運用手順を要領に定め、関係者に対して教育を実施しています。具体的には、インジケーター等の確認を目視や指差しで確認するなどの手順書を作成し、地上作業員と物資輸送従事者に対して教育を実施したほか、物資落下事案の重大さについて再認識する教育を行いました。
朝日航洋は報告書の発表を受け、「今回の事象を真摯に受け止め、再発防止を徹底するとともに、引き続き安全運航に努めてまいります」とコメントしています。