2016年帰国旅行9便目- プレミアムクラスにがっかりした理由 - ANA (全日空) 口コミ・評価

航空会社 ANA (全日空)

2021年09月11日に撮影されたANA (全日空)の航空機写真

© STAR TEAMさん

全日空(ANA)は、日本ヘリコプター輸送と極東航空が1958...
日本
IATA | ICAO
NH | ANA
アライアンス
スターアライアンス

搭乗レビュー
2016年帰国旅行9便目- プレミアムクラスにがっかりした理由

航空会社
全日空
便名
NH648
ファースト
搭乗日
2016/03
路線
熊本 → 羽田(東京)
機体記号
JA810A
機材
Boeing 787-881
総評:3
3ッ星
機内食・ドリンク
3ッ星
座席(シート)
3ッ星
機内スタッフサービス
3ッ星
エンターティメント
無評価
トイレ・洗面台
無評価
機材コンディション
4ッ星
地上サービス
4ッ星
口コミ投稿者
MaplecroftInnkeeperさん
アクセス数
1,317
投稿日
2016/04/06

搭乗写真

  • 写真の種類:搭乗時の写真一般
    九州の鉄道の思い出を胸に、夕暮れ近く... 続き
  • 写真の種類:座席(シート)
    自席2A。最新のビジネスクレードルシ... 続き
  • 写真の種類:機内食・ドリンク
    ポンと手渡されたお弁当。あまりの小さ... 続き
  • 写真の種類:機内食・ドリンク
    お弁当に引き続いて渡されたワイン。フ... 続き
  • 写真の種類:機内食・ドリンク
    お弁当を開けた状態。トレーもなく、ガ... 続き
  • 写真の種類:機内食・ドリンク
    食後のコーヒー。和食をいただいた後な... 続き
  • 写真の種類:搭乗時の写真一般
    機内の様子。JALのような豪華な雰囲... 続き
  • 写真の種類:搭乗時の写真一般
    湿度計は21.6%を指しています。こ... 続き

総評

この日は朝からANAのシステム不具合が生じて、航空便の運航が大変乱れていました。そんなこととはつゆ知らず、僕は2日間に渡る鉄道の旅を終えて、名残を惜しみながら小さな駅で列車を降り、熊本空港に向かう無料シャトルバスを待っていました。そこで初めてこの状態を耳にしたのです。駅の待合室に航空便の掲示板があって、今日はほとんどすべて「欠航」と出ています。天気もいのに、何かの間違いじゃないかと目を疑いました。そして、ゾオ~ッ…と冷汗。たった1週間しかない日本滞在、予定は詰まっていて、どうしても今日中に東京に帰れなくては困るんです。とりあえず空港に向かい、カウンターの列に並びました。最終便は今のところ欠航になっていないのでそれに変更してはどうかと言いながらも、係の人もどう対応したものか迷っているところへ、当初の便は午前中に来るはずだった機材を回して、予定通り運航できる予定とわかり、胸をなでおろす気分。機材変更でもなんでもいいから、ちゃんと飛べればいいと思いながらゲートに行くと、ちゃんとB787が待機していました。僕って運が強いのかな。おかげで心に余裕もでき、きっと職員さんたちは一日大慌てだったのでしょうから、乗りこむときに、「今日は大変でしたね」とCAさんに声をかけてあげました。

さてこのB787は、747や767の受注が鈍ってきた1990年代に、次世代航空機の開発計画が始まって考案されました。しかしもともとの案は、従来型旅客機とは違ったコンセプトの、先尾翼型で巡航速度の速い「ソニッククルーザー」というもので、2001年3月に計画が発表され、話題を呼んでいました。興味を示すエアラインもいくつかあって、期待されたのですが、その年の9月に911事件が起こり、それからエアラインはこぞってスピードよりも運航コストの低い航空機を求めたため、ソニッククルーザーの計画は2002年に断念されてしまいました。そして、B787の計画がそれに代わり、今の「ドリームライナー」が実現することになります。あの忌まわしい911事件さえなければ、今の旅客機のラインナップは大きく違っていたのでしょう。本当にあの事件以来、航空業界の流れが一気に変えられてしまったのですね。

B787は、ANAがローンチカスタマーとして2004年に50機発注しました。767の保有数とほぼ同じ数ということは、総入れ替えのつもりだったのでしょうか。当初の予定では、2007年にデリバリのはずだったのが遅れに遅れましたが、ANAがいち早く世界で初めてB787を飛ばしたのは成田-香港線で、2011年9月のことでした。ANAがB787にこれだけ積極的だった裏にはある事情があります。ANAは初期の頃、国内の各就航地の企業と業務提携して航空券の販売から空港での各種ハンドリングなどを委託する形態を取っていて、中部名古屋地域では名鉄グループと深い関係を持っていました。実際、名鉄グループはANAの最大の株主でした。その名鉄の根拠地である名古屋周辺には、アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区と呼ばれる、航空機製造関連産業が集約した地域があり、日本企業がB787の機体の35%を共同設計、製造するという、ボーイングにとっても異例の体制が取られました。また日本政府がこれに20億ドルの融資を提供したり、東レが長期的な炭素繊維の独占契約をボーイングから勝ち取ったことなども、B787開発の背景にあります。

ちょっと話が横道にそれますが、787の特徴の一つである窓の電子シェードは、実は大昔の1970年代に作られたロッキードのトライスター(L-1011)に装備されるべく開発されていました。このDC10によく似た3発機、1972年に、カリフォルニアからワシントンDCまでを、離陸から着陸まですべて人間の手を使わずに完全自動で飛行したという、すごいテクノロジーを搭載していたことでも有名で、機内デザインも、ギャレーが地下にあったりするユニークなものでしたが、ANAがワイドボディ機導入に向けて機種選定の検討を進めていたことから、B747やDC10との競争で販売不振に悩んでいたロッキードは、これを売り込むため、日本政府からANAに対する優遇措置を求めて、当時の田中角栄首相に贈賄していたという、世界的なショックを呼んだ「ロッキード事件」はあまりにも有名ですね。ANAも無罪ではなく、当時の若狭社長をはじめとして幹部らがロッキード社からリベートを受け取り、それを運輸省官僚などに贈賄していた疑いで起訴されています。ANAは結局1974年にトライスターの納入を受け、21機保有して1995年まで運用しました。(JALはそれとは対照的に、DC10を20機に発注し、1976年から2005年まで運用しました。) 大変優れた機材だったのに、汚点がついてしまったのが残念です。そんなすごい技術を持っていたロッキードはその一昔前の60年代に、連邦政府から大型軍用機開発契約の受注を勝ち取り、同時に入札していたボーイングは、それに敗れたことを背景に、大型旅客機B747の開発計画の実行に踏み切りました。もしあのときにこれが逆になっていたら、ジャンボもなかったし、787もなかったのかもしれませんね。

話をもとに戻しますと、ANAは、多数持っているB767に取って代わる中型機としてB787を位置づけ、国内線、国際線にどんどん投入していますが、それにより運航コストを下げ、客をどんどん取り込もうとしています。それとは対照的に、JALは今のところB787を国内線に投入するつもりはなさそうで、むしろこの機材の航続距離に目をつけて、B777などの大型機を飛ばすほどの需要はない長距離国際線を新規に開設することを主眼に置いていました。意表をついてボストンやサンディエゴに就航したときは、ちょっと期待感が膨らみました。ということで、こんなところでも、ANAとJALは行き方が違うんですね。

さて、せっかく初めて乗ったプレミアムクラスなので、プレミアムの基準でやや厳しい目で見た感想を率直に書いてみます。すごく楽しみにしていたのに、システム不具合の事件でハラハラさせられたのと、欠航した前便からの空席待ちの人たちなどで機内も混雑して、バタバタしていたのとで、残念ながら全体的に落ち着かないフライトとなってしまいました。

飛行機に乗り込み、座席についてカバンを前の席の下に押し込み、ベルトを締めると、CAさんが見回りに来て、まず荷物は前の座席の下に収納できないから離着陸時には膝の上に置けと注意されました。その後上着を預かって、その後で忘れていたかのように機械的に挨拶の言葉をペラペラペラっと早口で述べて行きました。(何を言ってるのか聞き取れませんでした。)でも普通は挨拶が先ですよね。荷物だって、僕は窓側席にいて、隣の通路側席にも人がいたし、シートベルトももう締めていたし、前の座席の下にしまえないのなら、「申し訳ございません。前の座席の下にお荷物をしまっていただけませんので、よろしければ上の棚にお乗せしましょうか」くらい言って、自分が受け取って頭上の棚に入れてくれるくらいの気の利かせ方をしてもいいのに、席に着いて一番先に言われたことが荷物をひざの上に乗せろという冷たい指示というのは、いきなり気分を害してしまします。前日のJALのCAさんの細かいところまで行き届いたサービスに比べると、こちらは全体的に機械的で、心のこもった様子は感じられませんでした。

シートについての感想ですが、最新のビジネスクレードルシートなのに、たまたま自分の座席が不具合だったのかもしれませんが、フットレストの位置がきちんと固定されず、足を載せると上下に動いてしまって落ち着かないので、ないほうがましです。レッグレストも、足のふくらはぎに触りもしないので、ないに等しいです。2つ折りのテーブルは、座りが悪くてガタガタと動くし、平にならなくて使いにくいです。それから、離着陸時に荷物を前の座席の下に収納できないのも不便です。それらの点、JALは完ぺきだったので、余計に残念です。良い点といえば、電源があることくらいでしょうか。個人モニターもありますが、こんな短距離便では エンタメを楽しむ時間はありません。また、フルリクライニングはかなり倒れますが、そもそもこんな短距離で食事があるので、そんなに倒れたポジションにしてくつろぐ時間などありません。

あと、ANAカラーのブルーですが、この色はよく言えば清涼感、悪く言えば冷たい感じを出す色なので、機内インテリアがこれでもかという程ブルーで統一されていると、豪華な雰囲気もなく、暗い感じがして「心休まるくつろぎのひと時」という雰囲気も感じられません。まあこんな短距離便なのでそこまでは求めないとしても、ブルーはまた食欲を減退させる効果もある色で、レストランなどが食器類やテーブル、インテリアなどに好んで使う色ではないのです。ダイエット中の人にはお勧めできても、少なくとも食事をおいしく楽しませてくれる色ではありません。ところが、機内食の際に座席からひっぱり出したテーブルは、思いっきり真っ青。ちょっと前のプレミアムクラスのテーブルはこんなんじゃなかったはずなのに…、せっかく色取りきれいに詰められた和食のお弁当も、このテーブルでは見栄えを引き立ててはくれませんし、逆においしそうに見えるものも見えなくなってしまいます。せめて白いテーブルクロスでもかけてくれたらいいのになと思った瞬間、あっ…。このテーブルって、食事のためだけじゃないし、いろんな人に触られ、いろんな物が置かれたりしてるんだろうな…。毎回拭いてきれいにしてるわけじゃないだろうし、そんなところにお弁当もお箸もじかに置くなんて…、「プレミアムクラス」というにはやけに気づかいの甘いサービスだな…。JALの機内食は、ちゃんと全部トレーに載せて出てきたのに…、とややガッカリしてしまいました。それに、テーブルに置いてくれるのではなく、なんでもポンポンと手渡しするし、全部プラスチックと紙の使い捨てというのは色々見てわかっていましたけど、やっぱり前日にJALを体験してしまったあとでは、差が大きすぎます。

それと、食事の出し方ですが、まず最初に紙のコーヒーカップに注がれた味噌汁をカクテルテーブルに置かれ、それからお弁当を手渡され、飲み物はと聞かれて白ワインと言ったら、ミニチュアボトルとプラスチックのコップを渡され、さらにあられの入ったおつまみもポンと投げるようにして渡されて終わりです。そんな風にせかせかと全部いっぺんに渡すのは、エコノミーと同質のサービスです。それに出す順番が全く逆ですね。自分だったら、まず飲み物とおつまみ、その後飲み物を続けながらお弁当の壱の重、その後で味噌汁と共に弐の重のたけのこご飯をいただき、最後に壱の重に入っていたお餅と日本茶、という順番でいただきたいと思うのですけど、そこまでカスタマイズしたサービスは求めないとしても、飲み物よりも何よりも先に味噌汁を一番先に置くというのはどうなんでしょうか。こぼれやすいものを真っ先に自分の手から放して出してしまいたいというのもあるのでしょうけど、それは出す方の都合だけで、客を無視したやりかたです。お弁当の中に甘味としてお餅が入っていたのですが、お茶を勧めるような気遣いは毛頭なく、食べ終わってからしばらくして食後のコーヒーいかがですかと言いにきました。和食を食べた後にそんなもの合わないとは思いながらも、選択の余地はなさそうだったので、いただきますと言うと、コーヒーと一緒にチョコレートも渡されましたが、ベタベタに溶けていて中身が出せず、食べられませんでした。満員で慌ただしいからそういうぞんざいなやり方になっているのかもしれませんが、出される方にしてみたら、向こうの都合だけで押し付けられているような印象を受けてしまいます。その点JALは大変気が利いていました。

そしてそのお弁当の内容ですが、これはあまりに小さくて「食事」と呼ぶにはやや無理があるし、「御膳」などという大げさな名前に似つかわしくありません。それにお品書きに色々と書いてありますが、各食材に存在感がないというか、一口一口何を食べているのかわからず、たけのこご飯だけが印象に残りました。そういえばCAさんも出すときに、「たけのこご飯です」と言って手渡していました。

もう一つがっかりしたのは、飛行機を予約してから、機内食は何が出るのかな~とウェブサイトを見てみると、JALは上旬、中旬、下旬と月に3回変わるメニューを3か月分、大きな写真付きで出ていましたが、ANAの方は翌月分までしかなく、写真もありません。JALの方は2月初めにはもう4月分のメニューまでとっくに出ていたのに、ANAの方は3月分のメニューがやっと出たのが2月下旬になってからでした。またよく見ると、熊本便はメニューの交代が月2度しかなく、しかも朝食も昼食も夕食も全部まったく同じメニューじゃないですか! さらに見ると、JALがファーストクラスを設定している札幌、東京、大阪、福岡、沖縄路線だけは、メニューの交代もJALにならって月3回で、昼食と夕食が「温かいお食事」となっています。JALを意識してか、2014年12月からこれらの路線に順次「温かい食事」を導入しているようなのですが、形式は相変わらず「お弁当」ですね。で、それ以外は冷たいお弁当で、しかも3食とも同じメニューという路線も多いです。つまり、JALとの競争がある路線以外は手を抜いているということで、そういう差をつけるやり方には、非常にチープなものを感じます。

そういうものをそういう形でしか出せないのなら、いっそのことJRのグランクラスのように、時間帯にかかわらず「和軽食」と「洋軽食」の選択制にして、それに加えてそれぞれに合った飲み物やおつまみ、スープ、和洋スイーツなどを希望に応じて出すような形にすれば、期待と現実とのギャップが少ないのにと思います。ただしそれではきちんとした食事を出しているJALにあきらかに劣ってしまうというのがあるのでしょうね。

あと、プレミアムクラスで出しているお弁当って、1,800円という値段で普通席の人たちにも販売されているんですね。僕はこの2日間駅弁を食べたので、お弁当の買い物を色々しましたけど、この量と内容なら九州あたりでは600円がせいぜいです。それをそんな値段で一般客に売っているというのも印象を悪くしますし、普通席でも手に入るものをこちらで提供しているというのも、せっかく高いお金を払ってプレミアムクラスに搭乗している身としては、あまり気分のいいものではありません。同じお弁当を普通席でも提供するというのであれば、プレミアムクラスではせめてテーブルクロスをかける、お弁当は蓋を開けてすぐ食べられる状態にして全部セットしてトレーに載せて出す、さらには温めた状態で出す、布のおしぼりともう少しグレードの高い割りばしにする、味噌汁はコーヒーカップのようなものではなく、お椀に近い形のものにするなど、普通席と明確な差をつけたプレミアムクラスらしい出し方にすれば、まだ見た目の印象も食べている時の気分もよかったのにと思います。そのあたり、JALはしっかり一線を引いて「ファーストクラス」たる格をきちんと保っているし、「ファーストクラスのお客様」を尊重する姿勢が見えます。座席や食事はJALの方が豪華だということは、以前から色々なところで聞いていましたけど、こういう細かい点も考慮すると、自分としては、どうしてもかなりの大差でJALに軍配をあげてしまいたくなります。

と偉そうなことをだらだらと書き並べましたけど、プレミアムクラスに搭乗したからこそ、そういう厳しい目で見る機会があったわけで、これも思い出に残る自分の社会勉強だったと思うことにします。羽田付近の混雑で管制塔から出発待機を命じられていたこの便、約25分遅れで出発し、羽田に着陸後、予定のスポットに別の飛行機がいたため、また離れたところでいったん待機させられて、結局1時間近く遅れての到着でしたが、欠航が相次いでいた中、最悪の事態は免れたのでよしとしなきゃいけませんね。

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