【最新型旅客機まとめ #4】将来は“ABC”競合!? 世界中で需要高まる市場に参入した「中国製」機体に迫る

【最新型旅客機まとめ #4】将来は“ABC”競合!? 世界中で需要高まる市場に参入した「中国製」機体に迫る

ニュース画像 1枚目:香港国際空港 2023年12月17日撮影 B-001F 中国商用飛機 C919-100STD 中国商用飛機
© FlyTeam Asamaさん
香港国際空港 2023年12月17日撮影 B-001F 中国商用飛機 C919-100STD 中国商用飛機

現在、世界の”2大航空機メーカー”といえば、アメリカのボーイングとヨーロッパのエアバスを指します。日本を含め、世界の航空会社では、とりわけ小型ナローボディ機以上に関してはこの2社が製造する航空機のどちらかを選択するのが定石。FlyTeamニュース「最新型旅客機まとめ」でもこれまで、ボーイングとエアバスの最新型旅客機を紹介してきました。しかし、日本のお隣・中国では現在、ボーイングとエアバスに対抗しようとする新たな航空機メーカー「COMAC」が開発した旅客機の運用が始まっています。今回はそんなCOMACの新型旅客機・C919について紐解いていきます。

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【最新型旅客機まとめ #3】ANAも発注の翼が折りたためる“トリプルセブン”、 就航はいつ?

そもそもCOMACって?

ニュース画像 1枚目:珠海金湾空港 2024年11月16日撮影  中国商用飛機 ARJ21-700 中国商用飛機
© FlyTeam ユターさん
珠海金湾空港 2024年11月16日撮影 中国商用飛機 ARJ21-700 中国商用飛機

COMAC(中国商用飛機)は2008年に設立された、比較的新しい航空機製造メーカーで、それまで中国に点在していた複数のメーカーを再編する形で発足しています。COMACが最初に手掛けた航空機は、70~90席のリージョナルジェットであるARJ21(現C909)で、2014年12月に中国民用航空局(CAAC)から型式証明を取得しています。初の中国独自開発の旅客機とうたわれているものの、胴体形状やT字翼の構造などが、マクドネル・ダグラスが開発したDC-9シリーズと酷似しています。

ニュース画像 2枚目:JALでも運用されたことのあるDC-9シリーズ 形状が似ている?
© FlyTeam ヘキサゴンさん
JALでも運用されたことのあるDC-9シリーズ 形状が似ている?

C909のローンチカスタマーは中国の成都航空で、現在主に中国南方航空や中国東方航空など、中国系キャリアが運航中。また、中国以外では唯一、インドネシアのトランスヌサが2機運用しています。

ニュース画像 3枚目:トランスヌサで運用されているC909
© FlyTeam たい/Taiさん
トランスヌサで運用されているC909

巨大市場に殴り込み! C919

ニュース画像 4枚目:上海虹橋国際空港 2025年1月3日撮影 B-919F 中国商用飛機 C919-100STD 中国東方航空
© FlyTeam Ari@FUKさん
上海虹橋国際空港 2025年1月3日撮影 B-919F 中国商用飛機 C919-100STD 中国東方航空

そんなCOMACが開発した次なる旅客機が、160~180席級の機体であるC919です。航空市場で最も需要があるものの、現在ボーイングとエアバスの2社による寡占状態となっている小型ナローボディ機市場に食い込んでくる機体で、ベストセラー機である737シリーズやA320ファミリーと直接競合します。構成する部品には中国製のものもありますが、エンジンは737MAXシリーズやA320neoファミリーにも搭載されているLEAP-1を採用するなど、欧米企業の部品も多数取り入れられています。2015年にロールアウトし、2017年に初号機「機体記号:B-001A」が初飛行に成功。その後、2022年に中国民用航空局(CAAC)より型式証明を取得し、2023年5月からローンチカスタマーである中国東方航空により商業運航が開始されました。

ニュース画像 5枚目:北京首都国際空港 2024年8月29日撮影 B-919X 中国商用飛機 C919-100ER 中国国際航空
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北京首都国際空港 2024年8月29日撮影 B-919X 中国商用飛機 C919-100ER 中国国際航空

C919は現在、中国東方航空および中国国際航空、中国南方航空の3社にて運航されており、中国国内線に投入されています。この3社は共に、C919を100機余り発注しており、今後順次納入される予定。また、海南航空や四川航空などの航空会社のほか、ICBCリーシングなどのリース会社も受注を得ています。一方で中国国外の航空会社からの受注は、2025年2月時点で獲得できていません。

日本に飛来する可能性は?

ニュース画像 6枚目:杭州蕭山国際空港 2024年10月15日撮影 B-919J 中国商用飛機 C919-100STD 中国南方航空
© FlyTeam GA142さん
杭州蕭山国際空港 2024年10月15日撮影 B-919J 中国商用飛機 C919-100STD 中国南方航空

お隣の国・中国で開発され、日本にも飛来する航空会社でも運用されているC919。しかしながら、現時点で日本に飛来する可能性は限りなく低いと言えます。というのも、C919はCAACからの型式証明しか獲得しておらず、米連邦航空局(FAA)や欧州航空安全機関(EASA)といった“世界基準“での型式証明を得ていません。したがって、商用運航が可能な範囲が狭く、現時点では中国国内のみの運用に限定されています。一方で、COMACは現在C919について、EASAからの認証獲得に向けて動き出しています。EASAからの認証が得られれば、運用できる範囲も広がり、ヨーロッパはもちろん、日本を含むEASAと型式証明の相互承認の協定を締結している各国での商用運航が可能になります。

”ベストセラー機”737&A320と徹底比較

ニュース画像 7枚目:羽田空港 2024年8月10日撮影 JA219A エアバスA320-271N 全日空
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羽田空港 2024年8月10日撮影 JA219A エアバスA320-271N 全日空

ここでは、C919の直接のライバルである737-8-MAXとA320neoの機体スペックなどを比較していきます。C919には通常型のC919STDおよび航続距離延長型のC919ERが存在しますが、エンジンの型式などに細かな違いがあるのみで、胴体長などの大まかな仕様はほぼ同じです。

-737-8-MAXA320neoC919STD(C919ER)
全長39.52m37.57 m38.9m
全幅35.92m35.80 m 35.8m
座席数162~210※150~194158~192
最大離陸重量82,644kg79,000kg75,100kg
航続距離6,480km6,300km4,075km(5,555km)
搭載エンジンCFMI LEAP-1BCFMI LEAP-1A、PW1100G-JMCFMI LEAP-1C

※210席仕様は737-8-200のみ

ニュース画像 8枚目:成田国際空港 2024年12月29日撮影 HL7218 ボーイング737-8-MAX ジンエアー
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成田国際空港 2024年12月29日撮影 HL7218 ボーイング737-8-MAX ジンエアー

全長・全幅や座席数などはいずれも同じような数字であることが分かります。A320neoとC919の全幅が全く同じ数字であることも興味深いところです。一方で航続距離については、737-8-MAXとA320neoが6,000km超であるのに対し、C919は航続距離延長型のC919ERでも5,500km程度にとどまっています。

ここまで、C919についてまとめてきました。世界的にも需要が大きい小型ナローボディ機市場に参戦してきたCOMAC。商業的にもこれからといったところですが、将来的にはエアバス(Airbus)、ボーイング(Boeing)と並ぶ地位を獲得し、旅客機といえば「ABC」の3社競合、と言われるような日が来るかもしれません。

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