海外の航空会社が成田に来ない、関空、ソウルなどを経由する理由はなぜ?

海外の航空会社が成田に来ない、関空、ソウルなどを経由する理由はなぜ?

ルフトハンザドイツ航空がソウル経由を発表して以降、ヨーロッパ系の航空会社をはじめアジア系の航空会社も成田へのフライトを欠航したり、乗員の交替と給油を理由に途中に目的地をはさむ目的は何か。航空会社関係者に聞いてもナーバスな事態を前に、明確な回答は得られない。そこで今回は事情を知る人たちの話をまとめてみた。

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<strong>航空会社が成田へのフライトを変更するねらいは何?</strong>

どの航空会社も本音は言わない。ただ、一致しているのは地震や津波ではなく、原子力発電所の放射能の問題がポイント。原発の問題が報じられてからすぐに、日本からドイツに戻った機体は放射能の検査を受けている。

今はヨーロッパだけでなく、マレーシアなど、アジアの国でも放射能の検査をしている。空港では、日本からの便に搭乗した旅客に放射能チェックするなど厳戒態勢。こうした厳しい対応を象徴するのが、ヨーロッパをはじめ各国の大使館が東京のオフィスを一時閉鎖していること。外資系企業では、日本人の従業員を自宅待機させている。

<strong>日本でも国土交通省航空局が原子力発電所の上空は飛ばないように通達を出していることも影響している?</strong>

現状は、それ以上の警戒感、危機感で対応している、というのが実情。外資系航空会社の社員には万一、放射線が拡散したときに効果のある薬品リストや対処法などが列挙されたメールがまわっているとか。

ただ、万一の事態が発生した時、乗客や従業員などの補償だけでは済まない大問題になる。大きなリスクを事前に策を講じて避けたい、危機管理上の対応というのが多くの人の意見のよう。

事態は異なるものの、記憶に新しい事例では、エジプトで前大統領が辞任する前後の状況。各国の航空会社が自国民の避難を目的にチャーター便を飛ばしていた。危機的な状況が迫ると、各国の政府が航空会社と協力し、フライトをキャンセルする前に自国民を救出した。日本の原発問題は、政情不安とは別の次元で危機状態として見られているので、現状の原発問題が続く限り、運航路線を変更する航空会社がまだあるはず、との意見もある。

<strong>「乗務員を交替させる」を理由にしているが、それはホント?</strong>

この答えは「Yes」。「ヨーロッパ->成田->ヨーロッパ」のオペレーションがソウル経由になった例を考えてみよう。この場合、同一機材の運航ルートをみると「ヨーロッパ->ソウル->成田->ソウル->ヨーロッパ」になる。このうち、「ソウル->成田->ソウル」間を同じ乗員で運航すると、成田や東京にパイロットや客室乗務員などのスタッフを宿泊させること無く、「ヨーロッパ->ソウル」「ソウル->ヨーロッパ」のアジア/ヨーロッパ間の乗員交替もできる。それで自社の乗員の安全を守る体制がとれるのだ。

「原子力発電所が危険な状態だから」と明言しないのは、あくまで日本で対応する話で、海外の民間企業がどうこう言う話ではない。一連の成田への直行フライトを変更させているのは間違いなく、原発問題が影響している。

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航空会社のルート変更で、成田空港に飛んでいる場合と、成田空港に飛ばずに関西や名古屋を最終目的地にする場合がある。後者の場合、名古屋や関西へ移動する費用は自腹。例えば、3月11日の地震発生時に成田に到着する便に搭乗していたものの、名古屋へダイバートし、成田へ向かうこと無く降ろされた人たちは、「自腹」で東京に帰って来ている。

今回は成田便を欠航し、セントレアや関空を最終目的地にした航空会社の中には、交通費の一部を負担する場合もある。ただ、毎日のように運航ルートや航空券の取扱いの条件が変更されているので、もし、利用する飛行機に搭乗する計画がある場合、事前に各航空会社のウェブサイトなどでフライトスケジュールや状況を確認し、余裕を持って出かけてほしい。

最後に、1日も早く地震と津波の震災からの復興と原発問題が解決に向かうよう、関係者のみなさまの努力を応援します。

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