搭乗レビュー
2019年春の旅4 便目-・・・完全民営化をかろうじて免れたエアライン
- 口コミ投稿者
- MaplecroftInnkeeperさん
搭乗写真
総評
この前の3便目のレビューはリスボンまででした。今回の旅では、リスボンから列車を乗り継いでスコットランドまで行ったんです。UK内で乗った列車も含めると、約5,500キロに及ぶ列車の旅になりました。この便に搭乗した前日は、ちょうどイギリスがEUから脱退する予定日で、ロンドンで暴動などが起こらないかと心配していたのですが、直前になって延期になり、平穏無事な日となりました。そして楽しかった旅の行程をほぼすべて終え、帰路につくときが来てしまいました。
さて、ロンドンからリスボンまで戻るのに利用したのは、初めて乗るTAPでした。
TAPはアジア方面には就航していないので、日本ではあまりなじみがないかもしれませんね。でも日本とポルトガルとは、1543年に種子島にポルトガル船が上陸して鉄砲が伝来したり、1549年にフランシスコ・ザビエルがキリスト教を伝えたりと、古くから重要なつながりがあるんですよね。それと、バスコ・ダ・ガマが1499年にヨーロッパから初めてインドに到達したことが知られている通り、ポルトガルは古くから優れた航海技術と探検精神を持っていました。
ポルトガル航空は、第2次大戦後の1945年に国営のTransportes Aereos Portugueses(TAP)として設立され、翌年、リスボン-マドリッド路線が初めて就航しました。この時使われた機材は、21人乗りのDC3だったとのことです。そのほんの3か月後には、「帝国路線」として、植民地のアンゴラとモザンビークをリスボンと結ぶ長距離路線を就航させます。ちょくちょくと停泊しながら、往復15,000マイルあまりを15日間かけて飛ぶ、双発機での路線としては世界最長距離でした。そんなところにも、ポルトガル精神が現れています。
その後、国内や欧州内にも次々と路線を開拓し、ロンドン線は1949年に就航しました。今年でちょうど70年ですね。南米の植民地だったブラジルに初めて就航したのは1960年で、リオ・デ・ジャネイロまで、ブラジルの航空会社との共同運航便として、「フレンドシップ・フライト」の名前で運航しました。その後、ボーイングなどのジェット機をどんどん導入し、1967年にはヨーロッパのエアラインとして初めて、フリートすべてをジェット機で固めたエアラインとなりました。
さて、TAPは1953年にいったん民営化されていますが、1974年の革命政権成立とともに、企業の国営化がすすめられ、TAPもその中に入って翌年75年に再び国営化されました。
80年代は、就航地を次々と増やし、機材の更新を進めるなど、TAPにとって成長の時代となりました。が、90年代に入って不況が訪れると、TAPもそのしわ寄せを受けて、戦略的対応を迫られることになります。1994年には、大西洋航路のコードシェア協定をデルタと結び(これは2005年に終了)、1997年にはあのスイスエアーと同盟を結びます。TAPはスイスのマイレージプログラムを導入、スイスはTAPのシェアを34%買収するなどの合意内容でした。ところが、この時期スイスはすでに経営難にあり、資金不足で合意を果たすことができずに、2000年に同盟関係を一方的に破棄してしまい、TAPは大きな損失を被ってしまいます。(別のレビューで書いた通り、スイスエアーは2002年に倒産しています。)2005年には、デルタとの協定を終了し、スターアライアンスに加盟、大西洋航路でユナイテッドとコードシェアを進めます。
一方、ポルトガルは2000年代から深刻な経済危機へとはまっていき、巨額な財政赤字と負債を抱えて、2011年にはIMFとEUから780億ユーロの救済措置を受けることになります。そして、厳しい財政引き締め策を要求され、その一環として国営企業のシェアの売却が求められ、TAPも例外ではありませんでした。これに対するビッドがいくつかあり、売却先をどこにするか、いろいろと揉めた結果、アメリカのジェットブルーの創設者デビッド・ニールマン(ブラジル系アメリカ人で、ブラジルのアズールブラジル航空の創設者でもあります)と、ポルトガルのビジネスマン、ウンベルト・ペドローサがパートナーを組んで創設した企業コンソーシアム、アトランティック・ゲートウェイ社が61%を買収することで話がまとまり、2015年に買収が成立しました。その時、2018年に残りの34%も買収する方向で、その可能性を残していて、ついに国営エアラインも完全民営化かと思いきや、2015年10月に成立した新政権が方針を変え、政府が買い戻すことになり、翌年2月に覚書が締結されて、政府のシェアは50%、ゲートウェイのシェアは45%に減少、5%は従業員が保持することになりました。また政府は50%を超えて株式を保有しないことも約束に盛り込まれました。完全国営ではなくなったものの、民間の力をてこにしながらも、国のフラッグキャリアとして政府の権限も保有することになったわけです。以前にちょっと書きましたけど、フラッグキャリアと言いながらも、民営化、さらにスイス航空のように吸収合併によって無国籍化していくエアラインが増える中で、TAPはポルトガルの顔として守られたわけですね。
そんなエアラインですが、ちょっと興味があるのは、TAPはA330-900neoのローンチカスタマーとして21機発注しており、その第1号機が去年の11月にデリバリされていることです。ビジネスクラスの新設計に加え、エコノミーも、3席を全部つなげて平らにし、ちょうど寝台列車のベッドのような感じにできる設計になっているみたいで、そんな選択肢の幅が広がっているのも面白い点です。現在運用しているA330-300やA340-300に代わる新鋭機として活躍が始まっており、最初はいくつかのブラジル路線、アメリカではマイアミ線にも3月から投入されています。それ以外も、トロントやニューヨーク、サンフランシスコなどにも次々と就航予定です。次世代のA330として、将来に希望をつなぐ機材ですね。(アメリカではデルタが4月に第1号機を受領する予定で、大西洋航路と西海岸からのアジア路線に投入予定とのことなので、もしかしたら日本にも飛んでくるかもしれませんね。)2020年代がTAPにとって明るい時代になるといいと思います。
色々な思いを抱きながら、ロンドンを飛び立ったのは夜8時でした。奮発してビジネスクラスにしたのは、機内食が目的でした。もちろん、ターミナル内で簡単に夕食を済ませれば、ずっと安く上がったでしょうが、多少時間をずらしてでも、機内でいただく食事というのは是非とも体験したいというのが自分としての心情なのです。それに加えて、初めて乗るエアラインということもあって、ワクワクして乗んでみたら、なんと新品ピカピカのA321-neo で、座席もビジネスクラス仕様です。ヨーロッパでは、ビジネスクラスもエコノミーと同じ座席で、ただ中央席を空けておくだけというのが普通だと思っていましたが、 ちゃんと2x2の広々とした座り心地のいい座席で、かなりラッキーな気分でした。飲み物のお代わりが一切なしだったのがやや気になりましたが、食事そのものはとてもおいしくいただけたし、機内はいたって静かで平和な雰囲気で、座席を深くリクライニングしてフットレストに足を置くと、気分よくしばしの休息が得られました。
さて、ロンドンからリスボンまで戻るのに利用したのは、初めて乗るTAPでした。
TAPはアジア方面には就航していないので、日本ではあまりなじみがないかもしれませんね。でも日本とポルトガルとは、1543年に種子島にポルトガル船が上陸して鉄砲が伝来したり、1549年にフランシスコ・ザビエルがキリスト教を伝えたりと、古くから重要なつながりがあるんですよね。それと、バスコ・ダ・ガマが1499年にヨーロッパから初めてインドに到達したことが知られている通り、ポルトガルは古くから優れた航海技術と探検精神を持っていました。
ポルトガル航空は、第2次大戦後の1945年に国営のTransportes Aereos Portugueses(TAP)として設立され、翌年、リスボン-マドリッド路線が初めて就航しました。この時使われた機材は、21人乗りのDC3だったとのことです。そのほんの3か月後には、「帝国路線」として、植民地のアンゴラとモザンビークをリスボンと結ぶ長距離路線を就航させます。ちょくちょくと停泊しながら、往復15,000マイルあまりを15日間かけて飛ぶ、双発機での路線としては世界最長距離でした。そんなところにも、ポルトガル精神が現れています。
その後、国内や欧州内にも次々と路線を開拓し、ロンドン線は1949年に就航しました。今年でちょうど70年ですね。南米の植民地だったブラジルに初めて就航したのは1960年で、リオ・デ・ジャネイロまで、ブラジルの航空会社との共同運航便として、「フレンドシップ・フライト」の名前で運航しました。その後、ボーイングなどのジェット機をどんどん導入し、1967年にはヨーロッパのエアラインとして初めて、フリートすべてをジェット機で固めたエアラインとなりました。
さて、TAPは1953年にいったん民営化されていますが、1974年の革命政権成立とともに、企業の国営化がすすめられ、TAPもその中に入って翌年75年に再び国営化されました。
80年代は、就航地を次々と増やし、機材の更新を進めるなど、TAPにとって成長の時代となりました。が、90年代に入って不況が訪れると、TAPもそのしわ寄せを受けて、戦略的対応を迫られることになります。1994年には、大西洋航路のコードシェア協定をデルタと結び(これは2005年に終了)、1997年にはあのスイスエアーと同盟を結びます。TAPはスイスのマイレージプログラムを導入、スイスはTAPのシェアを34%買収するなどの合意内容でした。ところが、この時期スイスはすでに経営難にあり、資金不足で合意を果たすことができずに、2000年に同盟関係を一方的に破棄してしまい、TAPは大きな損失を被ってしまいます。(別のレビューで書いた通り、スイスエアーは2002年に倒産しています。)2005年には、デルタとの協定を終了し、スターアライアンスに加盟、大西洋航路でユナイテッドとコードシェアを進めます。
一方、ポルトガルは2000年代から深刻な経済危機へとはまっていき、巨額な財政赤字と負債を抱えて、2011年にはIMFとEUから780億ユーロの救済措置を受けることになります。そして、厳しい財政引き締め策を要求され、その一環として国営企業のシェアの売却が求められ、TAPも例外ではありませんでした。これに対するビッドがいくつかあり、売却先をどこにするか、いろいろと揉めた結果、アメリカのジェットブルーの創設者デビッド・ニールマン(ブラジル系アメリカ人で、ブラジルのアズールブラジル航空の創設者でもあります)と、ポルトガルのビジネスマン、ウンベルト・ペドローサがパートナーを組んで創設した企業コンソーシアム、アトランティック・ゲートウェイ社が61%を買収することで話がまとまり、2015年に買収が成立しました。その時、2018年に残りの34%も買収する方向で、その可能性を残していて、ついに国営エアラインも完全民営化かと思いきや、2015年10月に成立した新政権が方針を変え、政府が買い戻すことになり、翌年2月に覚書が締結されて、政府のシェアは50%、ゲートウェイのシェアは45%に減少、5%は従業員が保持することになりました。また政府は50%を超えて株式を保有しないことも約束に盛り込まれました。完全国営ではなくなったものの、民間の力をてこにしながらも、国のフラッグキャリアとして政府の権限も保有することになったわけです。以前にちょっと書きましたけど、フラッグキャリアと言いながらも、民営化、さらにスイス航空のように吸収合併によって無国籍化していくエアラインが増える中で、TAPはポルトガルの顔として守られたわけですね。
そんなエアラインですが、ちょっと興味があるのは、TAPはA330-900neoのローンチカスタマーとして21機発注しており、その第1号機が去年の11月にデリバリされていることです。ビジネスクラスの新設計に加え、エコノミーも、3席を全部つなげて平らにし、ちょうど寝台列車のベッドのような感じにできる設計になっているみたいで、そんな選択肢の幅が広がっているのも面白い点です。現在運用しているA330-300やA340-300に代わる新鋭機として活躍が始まっており、最初はいくつかのブラジル路線、アメリカではマイアミ線にも3月から投入されています。それ以外も、トロントやニューヨーク、サンフランシスコなどにも次々と就航予定です。次世代のA330として、将来に希望をつなぐ機材ですね。(アメリカではデルタが4月に第1号機を受領する予定で、大西洋航路と西海岸からのアジア路線に投入予定とのことなので、もしかしたら日本にも飛んでくるかもしれませんね。)2020年代がTAPにとって明るい時代になるといいと思います。
色々な思いを抱きながら、ロンドンを飛び立ったのは夜8時でした。奮発してビジネスクラスにしたのは、機内食が目的でした。もちろん、ターミナル内で簡単に夕食を済ませれば、ずっと安く上がったでしょうが、多少時間をずらしてでも、機内でいただく食事というのは是非とも体験したいというのが自分としての心情なのです。それに加えて、初めて乗るエアラインということもあって、ワクワクして乗んでみたら、なんと新品ピカピカのA321-neo で、座席もビジネスクラス仕様です。ヨーロッパでは、ビジネスクラスもエコノミーと同じ座席で、ただ中央席を空けておくだけというのが普通だと思っていましたが、 ちゃんと2x2の広々とした座り心地のいい座席で、かなりラッキーな気分でした。飲み物のお代わりが一切なしだったのがやや気になりましたが、食事そのものはとてもおいしくいただけたし、機内はいたって静かで平和な雰囲気で、座席を深くリクライニングしてフットレストに足を置くと、気分よくしばしの休息が得られました。
フライトログ
搭乗の詳細データです。
- 座席番号
- 2A
- 搭乗クラス
- ビジネス
- 区間マイル
- 972
- 出発予定時刻
- 19:55
- 到着予定時刻
- 22:30
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