アメリカのユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)は2014年6月16日、同社が運用しているアトラスVロケットに使われているロシア製のロケットエンジン、RD-180に代わる新世代のロケットエンジンをアメリカ国内で開発するため、その可能性の調査と検討を行う契約を、数社と結んだことを発表しました。
アトラスVはロッキード・マーティンが開発したロケットで、同社とボーイングが共同で設立したULAによって運用されています。主にアメリカ航空宇宙局(NASA)の衛星や、アメリカ軍やアメリカ国家偵察局(NRO)の軍事衛星の打ち上げに使われています。
アトラスVには、ロシアのNPOエネルゴマシュで製造されているRD-180エンジンが使われていますが、ウクライナ情勢に起因するアメリカとロシアの関係悪化の影響で、5月にロシアのドミートリィ・ロゴージン副首相が、RD-180の輸出を止めることを匂わす発言から、輸入を継続できるかが懸念されていました。
またかねてより、安全保障の観点からエンジンの国産化を望む声もあり、今回の一件でそれがさらに高まりつつあります。こうした背景から国産化に向けた検討が始まることになりました。
今回検討されるのは炭化水素系の燃料を使うエンジンで、デルタIVロケットなどに使われている液体水素燃料のエンジンは除外されます。また、RD-180はケロシン(灯油)を燃料に使いますが、炭化水素系という括りのため、メタンを使うエンジンなども検討の範疇に入る可能性があります。
今回契約された企業については明らかにされていませんが、2014年第4四半期にも新しいエンジンの概念と、それを開発、製造する会社を決めて開発を始め、2019年にもエンジンを実用化することを目指すとのことです。