運輸安全委員会、調布飛行場のPA-46墜落事故で報告書 安全勧告も

運輸安全委員会、調布飛行場のPA-46墜落事故で報告書 安全勧告も

運輸安全委員会(JTSB)は2017年7月18日(火)、2015年7月に調布飛行場を離陸後に墜落したパイパーPA-46-350Pについて、事故報告書を発表しました。この「JA4060」は調布飛行場滑走路17から離陸した直後の10時58分頃、調布市富士見町の住宅に墜落しました。この機体には機長のほか同乗者4名、計5名が搭乗しており、機長と同乗者1名が死亡、同乗者3名が重傷を負い、住民1名が死亡、住民2名が軽傷を負った事故でした。

運輸安全委員会がまとめた資料によると、事故機の離陸滑走は10時57分12秒、離陸は10時57分41秒で速度73ノット、時速にすると135キロで、脚上げは10時57分52秒でその時点の上昇角は4度、最高高度を190フィート、高度27メートルを記録したのは10時57分55秒で時速124キロでした。その後、離陸上昇中の速度低下による失速に伴い、飛行場周辺の住宅地に墜落しました。

報告書は速度低下の要因について最大離陸重量の超過を要因の1つとして指摘しています。離陸時の最大離陸重量1950キログラムを58キロ超過していましたが、機長が認識していたか否かは、調査では明らかになりませんでした。また、標準78ノットで離陸のところ73ノットと低速で離陸したこと、さらに過度な機首あげの継続により失速に至ったと推定されています。

調査で、機長が事故時の飛行前に重量超過を認識していたかは明らかにできなかったとしつつ、その状態で飛行する危険性について機長の認識が不足していたとこと、法令や規定を遵守する安全意識が十分でなかった可能性を指摘しています。また、低速での離陸は、滑走路末端に近づいてきたため機長が反応して離陸した可能性、過度な機首上げ姿勢の継続は速度より上昇を優先させて機首上げ姿勢を維持したなどの可能性を指摘しています。

こうした分析と、過去5年間に重量及び重心位置が不適切であったことが関与した自家用小型機の死亡事故が2016年3月に八尾空港内で着陸復行時に墜落したムーニーM20Cの「JA3788」、2012年8月に茨城県・大利根場外離着陸場でのセスナ172Nラムの「JA3814」の事故が発生していることから、自家用小型機の運航の安全性の向上を図るため、出発前確認で最大離陸重量や重心位置限界の遵守や、飛行規程に規定された性能上の要件を満たしたことを確認する重要性について、国土交通大臣に対して勧告を行いました。

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