長野県消防ヘリ墜落、要因に機長のマイクロスリープ疑うも特定できず

長野県消防ヘリ墜落、要因に機長のマイクロスリープ疑うも特定できず

ニュース画像 1枚目:事故機の飛行経路と目的地
© 運輸安全委員会
事故機の飛行経路と目的地

運輸安全委員会は2018年10月25日(木)、長野県消防防災航空センター所属ベル412EP、機体記号(レジ)「JA97NA」の墜落事故について事故報告書を公表しました。この事故は2017年3月5日(日)、救助訓練を行うために松本空港を離陸、塩尻市内山中の場外離着陸場に向かって飛行中、松本市鉢伏山で樹木に衝突、山の斜面に墜落した件です。機長をはじめ、同乗者8名していた計9名が死亡しています。

「JA97NA」は墜落の直前、地上に接近しても回避操作が行われず、この要因として機長の覚醒水準が低下した状態となり、危険な状況を認識できなかった可能性が考えられると報告書では指摘しています。

事故の状況は撮影されていた動画を元にすると、離陸した13時33分から3分後の13時36分11秒から撮影が開始され、13時38分50秒に右旋回を開始し、その後は高度1,740メートルをほぼ水平飛行し、訓練予定地をすぎて13時40分50秒に標高1,740メートルで樹木に衝突、4秒後に墜落しました。事故当時、付近に視程障害の現象は無く、天候は良好でした。

報告書では、機体の故障など要因で、衝突の回避操作ができなかった可能性は極めて低く、機長が意図的に回避操作を行わなかった可能性も極めて低い、機長がインキャパシテーション(操縦能力の喪失)に陥った可能性は低い、機長が計器に注意を集中する必要性はなく、計器を注視していたことにより同機が地上に接近していく状況に気付かなかった、という可能性は極めて低い、機長が事故発生時にカメラの操作を行っていた可能性は低い、オートパイロットのATTモード使用の有無が、回避操作が行われなかった要因とはならないとしています。

その上で、潜在的な生理的眠気が発現した可能性が考えられ、機長がマイクロスリープに陥る要因は複数あるものの、実際にその状態に陥っていたかどうかは搭乗者全員が死亡したため、明らかにはできなかったとしています。また、機長が服用していた医薬品による睡眠誘発の影響についても明らかにできなかったとしています。

このほか、事故の遠因としてクルーリソース・マネジメント(CRM)の観点から物件と衝突しないように見張りをしなければならず、機長が見張りできない状況の場合、整備士に一時的に外部の見張りを指示する必要があったと推定、客室内の救助隊員も経路や高度に疑義を唱えなかった場合、機長や整備士が外部状況を把握しているはずと思ったこと、低空飛行に慣れ危険に対する感度が鈍くなっていた可能性が考えられるとも指摘しています。

この報告書を受け、運輸安全委員会は航空局への意見として、航空機乗組員に対して、(1)航空身体検査証明の申請に際して自己申告を正しく行うこと、(2)航空身体検査証明の有効期間中でも身体検査基準への適合性が疑われる身体状態のときには航空業務を中止して指定航空身体検査医等の指示を受けることについて、指導を徹底する必要があるとしました。

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