7年前の2014年(平成26年)8月7日、ボーイング787-9型機の世界初の定期便を全日本空輸(ANA)が羽田/福岡線で運航しました。いまではANAで最も多い75機の3機種からなるボーイング787ドリームライナーの主力機として37機を運航する787-9型機の初号機、機体記号(機番)「JA830A」に焦点を当てて今回はご紹介します。
■基本情報
「JA830A」はボーイングのワシントン州エバレットにある工場で製造。製造(MSN)/ラインナンバー(LN)は「34522/146」で787として146番目に作られた機体です。787-9としては4機目に製造が手掛けられた機体で、初飛行は2014年4月9日(水)でした。
受領は2014年7月27日(日)。この機種を初めて受領したニュージーランド航空に続き2社目の導入でした。
フェリーフライトでは製造したペインフィールド空港から羽田空港まで直行し、7月29日に到着しました。現在までに国内線仕様の機材として、プレミアムクラス18席、エコノミークラス377席、計395席で運航しています。国内線仕様の787-9は、「JA830A」以外に「JA833A」の2機が国内線で使用されています。
■定期便前の旅客便
世界初の旅客便として、羽田到着後の2014年8月4日(月)に運航。この運航を前に、フェリーフライト直後に羽田で実施された整備で「TOMODACHIイニシアチブ」ロゴが左右のANA「Inspiration of JAPAN (IOJ)」塗装の後方に施されました。世界初の旅客便は、在日アメリカ大使館とボーイングの協力により、日本、日米の小学生を招待して飛行。羽田から離陸し、世界遺産に登録された富士山上空を遊覧し、「次世代を担う子どもたち」が「次世代の航空機」に搭乗し、活発な国際交流につなげてという願いが込められたフライトでした。
定期便に投入された後の多くの人の感想は、それまでに多くの787-8が国内線に投入されており、比較することも多い様です。787-8では一部の座席で騒音があると言われましたが、そうした不具合も解消されたようです。
【FlyTeam 「JA830A」搭乗レビュー】
■特別塗装機
世界初の旅客便として運航される前に施された「TOMODACHIイニシアチブ」ロゴが、2021年8月に至るまでこの機体として唯一の特別塗装です。「TOMODACHIイニシアチブ」ロゴラッピング機は、2014年8月までにボーイング787-8型の2機、ボーイング777-300ER型の1機に施されていました。
「JA830A」にも日米友好関係の強化に取り組む官民パートナーシップ「TOMODACHIイニシアチブ」の理念と活動を広める取り組みとして、ANAの機体に掲出。2014年8月の運航開始時から、2019年10月末までおよそ5年超にわたり掲出されました。現在は、通常のANA IOJ塗装ですが、今後も特別塗装での活躍が期待されます。
■シート配置
「JA830A」は国内線中心に運用されており、搭載する座席はプレミアムクラス18席、エコノミークラス377席、計395席です。プレミアムクラスは、本革素材のゆったりとしたシートが採用されており、シートピッチは50インチ(約127cm)です。国内線でも長距離の羽田/那覇線でもゆっくりとした移動時間を過ごすことができます。
プレミアムクラス利用の場合は、搭乗便の時間帯によって朝食、昼食、軽食、夕食と提供される種類が異なるものの、機内食を楽しめます。軽食の時間帯は、羽田発はANAペストリーシェフが手がけた本格スイーツ、その他は「ANA FINDELISH」の焼き菓子が用意されています。また、夕食の場合は有名料理店とのコラボレーションメニューが楽しめ、787の巡航時の機内の気圧高度は約1,800メートルとなっており、上空にいながらも地上の優雅な雰囲気で移動時の食を楽しむことができます。
■国内線中心の運用
この「JA830A」にはどの路線で乗れるでしょうか?
最近の運航状況を振り返ると、2019年は1,218便、2020年はコロナ禍の影響から1,032便、そして2021年は7月末までに469便が運航されています。各年の運航都市の割合は以下の通りです。
2021年 | 便数 | 割合 | 2020年 | 便数 | 割合 | 2019年 | 便数 | 割合 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
羽田 | 230 | 49.04% | 羽田 | 498 | 48.30% | 羽田 | 556 | 48.06% |
那覇 | 191 | 40.72% | 那覇 | 275 | 26.67% | 大阪・伊丹 | 140 | 12.10% |
札幌・新千歳 | 21 | 4.48% | 福岡 | 117 | 11.35% | 福岡 | 132 | 11.41% |
大阪・伊丹 | 16 | 3.41% | 大阪・伊丹 | 63 | 6.11% | 那覇 | 124 | 10.72% |
福岡 | 6 | 1.28% | 札幌・新千歳 | 42 | 4.07% | 広島 | 69 | 5.96% |
鹿児島 | 2 | 0.43% | 長崎 | 14 | 1.36% | 松山 | 60 | 5.19% |
石垣 | 1 | 0.21% | 石垣 | 13 | 1.26% | 石垣 | 28 | 2.42% |
松山 | 1 | 0.21% | 鹿児島 | 5 | 0.48% | 札幌・新千歳 | 28 | 2.42% |
高知 | 1 | 0.21% | 松山 | 4 | 0.39% | 函館 | 20 | 1.73% |
- | - | - | 函館 | 1 | 0.10% | 長崎 | 20 | 1.73% |
羽田発着は過去3年間、48%から49%となっています。まずは、東京発着の時にチャンスを狙いたいところ。羽田以外は、2019年に伊丹、福岡、那覇が全体の10%以上の便数が運航されていますが、コロナ禍の影響が及ぶ2020年、2021年は那覇線に投入される割合が多くなっています。特に、2021年は那覇線は40.7%とほぼこの路線に固定されているほど高い確率になっています。
コロナ禍の状況を反映した「2021年度ANA 国内線航空輸送事業計画」で、ANAは国内線を収益の柱として、収益の見込める路線にネットワーク再編、収入拡大に取り組む方針を示していたことと関係ありそうです。燃費良く、多くの人が搭乗できるもののコロナ禍を考慮したスペース確保、さらに燃費効率の高い機材の787を那覇線に投入していることが想定されます。
せっかく飛行機に乗る・眺めるなら、その1機ごとの歴史を知れば、偶然出会った、搭乗した機体をよりいっそう楽しめます!