アメリカ運輸省(DOT)は2023年6月30日、デルタ航空が提案した「羽田発着枠の柔軟運用」に関する要望書や、それに対するユナイテッド航空の反対意見に対する回答を行いました。DOTはデルタ航空の要望書を却下し、コロナ禍による発着枠未行使の猶予期間が明ける、10月29日の冬ダイヤ以降の行使可否を10月1日までに通知するように求めています。新型コロナウイルス感染症の影響がやわらいだにも関わらず、運航を開始していない、ポートランド線・ホノルル線の開設をデルタ航空に迫っています。
【デルタ航空の要望(5月1日) 詳細記事:デルタ航空 別路線を検討か!?米運輸省へ“羽田発着枠”柔軟運用の要望書提出】
【ユナイテッド航空の反対意見(5月8日) 詳細記事:ユナイテッド、羽田/グアム・ヒューストン線の開設に意欲「デルタが要望した“羽田発着枠”柔軟運用に反対」】
その他にも複数の要望書があり、直近ではデルタ航空が、2021年にバイデン大統領が発令した大統領令「競争を阻害する不必要な参入障壁を作り出す規制を撤廃する」を引用して訴えていたほか、アメリカン航空とハワイアン航空がデルタ航空の要望書への賛成を表明していました。

DOTは、デルタ航空およびユナイテッド航空の要望、アメリカン航空とハワイアン航空の立場を慎重に検討。これまで当局として、市場の状況に応じて就航や再開を柔軟に行うことができるよう、発着枠未行使の猶予期間を繰り返し設定(延長)していました。2019年の割り当て当時、提案資料を基に完全な調査と記録のもとに決定された“就航地縛り”の発着枠は、変更されるものではないとしてデルタ航空の要望を却下しました。
また、デルタ航空は、日本の航空当局が全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)に“就航地縛り”のない発着枠を配分していることを指摘。ユナイテッド航空がANAと共同事業(JV)を行っていることで、ユナイテッド航空が発着枠に関して「二重」の柔軟性を享受しているとの主張に対し、デルタ航空などと同様に、JV関係にあったとしても両社自らの意思で就航地を決めていると回答しています。さらに、DOTは、日米両政府がそれぞれ異なる配分手続きを行っていることに憂慮を示しています。
ヒューストン線とグアム線の開設を、各首長と共に要望していたユナイテッド航空の件は、検討自体が時期尚早として、デルタ航空からの通知に基づき、その後に検討が開始されるものだと回答しています。