カンタス航空は2015年3月8日(日)、同社747-400初号機の機体記号(レジ)「VH-OJA」でシドニー国際空港からイラワラ・リージョナル空港まで、「QF4747」便としておよそ10分超の世界最短ラストフライトを行いました。イラワラでは大勢の航空ファンなどが出迎え、7時47分に着陸しました。
イラワラ空港には歴史的航空機復元協会(HARS : Historical Aircraft Restoration Society)が隣接しており、HARSが明らかにしているラストフライトの計画は7時30分にシドニーを離陸、7時47分にイラワラ着と17分間のスケジュールでした。FlightAwareの記録では、12分間の飛行となっています。
この10分超のフライトを行うため、多くの準備が行われました。特にイラワラはカンタス航空が拠点にしておらず、また同滑走路に初めて747-400が着陸することから、パイロットは特別なシミュレーター訓練を受けました。また、「VH-OJA」にも保存に耐えられる製剤が塗られ、ラストフライトを迎えました。
カンタス航空は、コクピット、客席など旅客便で使用していた状態とほぼ同じ状態で寄贈します。ただし、運航マニュアル、機内食のカートを降ろすほか、ロールスロイス・エンジン3基は同社が引き取り、1基のみ博物館に提供します。なお、正式にカンタス航空からHARSへの引き渡しは3月15日に予定されています。
カンタス航空のアラン・ジョイスCEOは、この歴史を刻んだ747-400によりHARS、イラワラに観光客が来るだけでなく、カンタス航空と航空業界の重要な遺産を残すことができると強調しました。HARSはこの「VH-OJA」を保存するため格納庫を建設中で、同博物館が保有するロッキード・スーパーコンステレーション、コンソリデーテッド・エアクラフトのカタリナ(PBY-6A)、ダグラスDC-3とDC-4、AH-1コブラなどと共に展示されます。
■カンタス航空の「VH-OJA」の歴史と記録
カンタス航空の「VH-OJA」は1989年8月11日にデリバリーされ、1989年8月16日にロンドンからシドニー着で初の営業飛行を行いました。1989年8月17日にはQF7441便として、民間機で最長距離となるロンドンからシドニー間を、最長時間20時間9分5秒で飛行し、現在もこの記録は破られていません。
なお、この機の愛称は「シティ・オブ・キャンベラ」と同国の首都を冠しています。最後のフェリー便を除きこれまで13,833便、106,154飛行時間を記録し、4,094,568人の旅客を輸送しました。飛行距離は月へ110回超の往復ができる8500万キロを飛行しています。
カンタス航空は747を1971年に初めて導入し、2003年7月に受領した「VH-OEJ」が最後となっています。これまで65機を導入し、その内訳は747-100が3機、747-200が23機、747SPが2機、747-300が6機、747-400が31機です。このうち、1979年から1985年はカンタス航空の保有機が747シリーズのみとなる時期があり、747に思い入れのある航空会社の1社でもあります。
なお、カンタス航空は「VH-OJA」の寄付により、12機の保有となります。このうち、VH-OJS、VH-OJT、VH-OJU、VH-OEE、VH-OEF、VH-OEG、VH-OEH、VH-OEI、VH-OEJの9機が客室リニューアルなどがされ、2016年以降も路線に投入されます。
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