イスラエル空軍博物館が所蔵する「エゼル・ワイツマンのスピットファイア 57番」が、大規模な修復作業を終えて4年ぶりに飛行しました。イスラエル空軍が2015年5月12日に公式サイトで紹介しています。
ワイツマンは、イスラエル空軍の父と呼ばれる人物で、第二次大戦中にイギリス空軍で戦闘機パイロットとなり、戦後はイスラエル建国運動に参加、イスラエル建国直後の第一次中東戦争をスピットファイアで戦い、空軍総司令官にまで昇進しました。45歳で空軍を退役すると政界へ身を転じ、運輸相や国防相を務め1993年から2000年までイスラエルの第7代大統領となりました。
イスラエルは、建国前から合法・非合法を問わず第二次大戦終戦により余剰化した戦闘機を買い集め、このスピットファイア 57番も1948年10月にイスラエルが購入した機体です。もともと1945年5月にイギリス空軍が運用を開始したスピットファイアLF Mk.IXeで、のちにチェコ空軍で使用されていた中古機です。
スピットファイア 57番は、1949年11月にイスラエルに到着し、ファースト・ファイター飛行隊に配備され、その後スコーピオン飛行隊、現在のオレンジテール飛行隊となる第3スピットファイア飛行隊などで使用されました。
イスラエル空軍は、1954年にほとんどのスピットファイアをビルマへ売却しましたが、当時ラマト・デビッド基地司令だったワイツマン少将のイニシアチブで数機が残され、スピットファイア 57番はワイツマンの個人所有機になりました。ワイツマンは、イギリス空軍在籍時の基地司令搭乗機に似せてスピットファイアを真っ黒に塗装し、イスラエルのエアショーなどで飛行させ、2005年の葬儀の際にもスピットファイア 57番が飛行しています。
2011年11月から大規模な修復作業が始まり、完全に分解されラジエターや燃料ポンプ、タイヤなどが交換され、イスラエル空軍博物館へ戻されました。飛行試験で問題が生じなければ、イスラエル空軍のパイロット・コース卒業式から展示飛行が再開されます。