乗客1人乗せると66ドルの赤字、世界で旅客回復鈍く

乗客1人乗せると66ドルの赤字、世界で旅客回復鈍く

ニュース画像 1枚目:コロナ禍で移動する旅客 イメージ
© IATA
コロナ禍で移動する旅客 イメージ

国際航空運送協会(IATA)は2020年12月9日(水)、10月の全世界の旅客動向について回復が期待外れに鈍い状況にあると発表しました。IATAは現状について、航空会社が乗客1人を乗せて運航すると、66ドルの赤字を垂れ流している状態と、その苦境を説明しています。

需要を示す収入旅客キロ(RPK)を指標とし、2020年10月は前年同月比70.6%減で、9月の前年同月比72.2%減からわずかな改善に止まりました。総座席数に輸送距離を乗じて示す供給量(ASK)は前年同月比59.9%減、搭乗率は21.8ポイント減の60.2%でした。

特に国際線は、パンデミック以降に実施されている各国の検疫が継続しており、旅行需要に壊滅的な状況が続いているとIATAは指摘しています。国内線でみると、中国はRPKが前年同月比1.4%減と、安売り運賃や乗り放題などが提供されていることで、通常時に近いレベルに戻りつつあります。日本の国内線は、アメリカ、オーストラリアの国内線より回復しているものの、11月、12月は感染者数の拡大で、再び落ち込むことが予想されています。

IATAは各国政府に対し、航空会社への財政的な支援と同時に市場刺激策の追加を呼びかけています。財政支援はすでに約1730億ドルが投じられていますが、航空会社の損失額は2020年に1,180億ドル、2021年は390億ドルと想定されています。金融支援にも関わらず負債が膨らんでいる状態で、財政的に厳しい状態にあります。

このため、(1)航空会社や乗客に課す税金、手数料などの一時免除または停止による旅行コストの低減、(2)地方のコミュニティ・ビジネスを支援するリージョナル路線への補助金、(3)一定の搭乗率を下回る場合の搭乗補償のようなインセンティブの提供、(4)将来の旅行に利用できるバウチャーなど前売り券購入による財政支援と観光業支援、(5)バウチャーやキャッシュバックなど旅行費補助などを各国政府に提案しています。

日本では、GoToトラベルの実施により、因果関係は不明とされるものの11月から第3波で全国的にコロナ陽性者が増加し、旭川では医療崩壊とも言われるほど深刻な事態を招いています。人の動きにブレーキをかけると航空・観光・飲食には大きなダメージ、アクセルを踏めば医療に深刻なダメージを与え、早期に既存薬や新薬による治療、新ワクチンによる予防体制の確立が期待されています。このうち、ワクチン輸送では、各国への輸送に対応できる輸送体制を航空会社も整えています。

■世界の国際線 市場動向 2020年10月
10月世界全体のシェアRPK(前年同月比)ASK(前年同月比)搭乗率(前年同月比)搭乗率
国際線市場63.80%-87.80%-76.90%-38.30%42.90%
アフリカ1.80%-78.60%-67.50%-23.80%45.50%
アジア太平洋19.10%-95.60%-88.50%-49.40%30.30%
ヨーロッパ24.00%-83.00%-70.40%-36.70%49.50%
南米2.70%-86.00%-80.30%-23.50%57.70%
中東8.70%-86.70%-73.60%-36.60%37.00%
北米7.50%-88.20%-73.10%-46.20%36.20%
■世界の国内線 市場動向 2020年10月
10月世界全体のシェアRPK(前年同月比)ASK(前年同月比)搭乗率(前年同月比)搭乗率
国内線市場36.20%-40.80%-29.70%-13.20%70.40%
オーストラリア国内線0.80%-86.30%-80.30%-25.70%58.00%
ブラジル国内線1.10%-44.50%-41.70%-4.10%79.90%
中国国内線9.80%-1.40%7.60%-7.10%78.30%
日本国内線1.10%-45.30%-34.10%-13.10%64.50%
ロシア国内線1.50%-10.00%0.40%-8.70%76.00%
アメリカ国内線14.00%-60.70%-45.30%-23.80%60.90%
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