2025年3月11日に41年ぶりとなるロゴ・機体塗装の変更を行った大韓航空。新塗装機は翌12日に早速成田空港に飛来したことでも話題となりました。今回は、そんな大韓航空の創立以来の"塗装遍歴"を紹介します。
大韓航空は1962年、韓国国営の「大韓航空公社」として設立。その後、経営状態の悪化のため、1969年に韓進グループに払い下げられ民営化、現在に至ります。航空機の塗装は細かな変化はあるものの、主に4つの世代に分類可能。今でこそ水色のイメージがある大韓航空の塗装ですが、過去の塗装はどのようなものだったのでしょうか。
■第一世代 大韓航空公社時代
大韓航空がまだ韓国国営だった頃の塗装。白地に機体横に引かれた一本の太いチートラインと機首付近のロゴが特徴的で、現在の水色の塗装ではありませんでした。また、大韓航空のロゴは、赤い円環の模様のようなデザインに青い矢印が描かれており、いずれも現在のものとは大きく異なります。また、垂直尾翼には韓国国旗が描かれているほか、航空会社名の表記は「KOREAN AIR LINES」となっていました。
■第ニ世代 ロゴのバリエーション豊かな民営化後
民営化後の1969年以降、大韓航空は新たなロゴを採用。赤色の円に鳥のようなモチーフの絵柄が描かれたものになり、ロゴ下部には「KAL」という記載が追加されました。航空機の塗装もこれにあわせ変化しており、機体側面には青色の太いチートラインに加え、赤いラインが追加。垂直尾翼についても、大韓航空のロゴと赤色のブーメラン型のデザインが施されるようになりました。航空会社名などの表記は機材や時期によって少しずつ異なり、英語やハングルでの表記のほか、漢字の「大韓航空」という表記も存在しました。
■第三世代 現在まで続く水色の塗装に
民営化から15年が経過した1984年、大韓航空は新たな社名ロゴと塗装の使用を開始しました。これまでの塗装とは打って変わり、機体上部全体が水色に塗装され、機体下部の白い塗装との間には銀色のラインを配置。ロゴも青色の「KOREAN AIR」となり、機首付近には小さくハングル表記がなされています。また、垂直尾翼には水色に韓国国旗の太極文様をモチーフとした赤・青・白のデザインがなされ、機体側面のロゴの「O」の部分も同様のデザインとなりました。機種によりロゴの位置や大小などの違いはあれど、2025年3月まで大きな変更もなく施されていた塗装ということもあり、「大韓航空といえばコレ!」というデザインなのではないでしょうか。
■第四世代 現代の“トレンド”採用の新塗装でアシアナとの統合見据える
大韓航空は2024年12月、韓国第2の航空会社であるアシアナ航空を子会社化、今後2年の移行期間を経て統合すると発表しました。今回発表された塗装はこうした動きを見据えて行われたものとみられ、大韓航空、そして韓国の航空業界の新たな時代の象徴であるともいえます。新塗装については、従来のイメージを受け継ぎつつも、機体背景の水色はメタリック系に、機体下部のラインもウェーブするような形へと変更。銀色のラインはなくなり、垂直尾翼の太極文様は、紺色のシンプルなラインへと変更されました。また、機体に描かれるロゴも「KOREAN」となり、書体も変更、機体前方に大きくレイアウトされています。
機体下部ウェーブしたような塗装はユナイテッド航空やKLMオランダ航空などで、大きなロゴを機体側面前方に配置するデザインはオーストリア航空などの現行塗装でも見られるもの。総じてここ数年の”トレンド”ともいえるデザインであり、大韓航空の新塗装もより現代的なものに見えます。一方、これまでの塗装ではデザインやロゴなどに赤色が採用され続けてきましたが、新塗装では赤色がなくなっています。従来の意匠は引き継ぎつつも、機体全体に占める青色の面積が多くなったことで、かなり新鮮な印象があるのではないでしょうか。
ちなみに、第四世代の新塗装が初めて施されたボーイング787-10型機「機体記号:HL8515」は、2024年7月に引き渡されたばかりの機体。当初は第三世代の旧塗装が施されており、わずか8か月余りで塗装が変わっています。
以上、大韓航空の"塗装遍歴"をまとめてみました。このようにしてみると、節目の年や出来事があったタイミングでロゴなどと含めて一気にデザインを変更する事例が多いことが分かります。アシアナ航空との合併という大きな出来事を機に変わる今回の新塗装も、いずれは「大韓航空といえばコレ!」というものになっていくでしょう。