日本各地に飛来する、アメリカを代表する航空会社、ユナイテッド航空は2019年4月に機体デザインを一新すると発表しました。現在、日本に飛来する機体は新塗装と旧塗装の2パターンを見ることができます。
航空会社の塗装の歴史は、航空会社の歴史でもあります。現在は塗装技術が向上し、さまざまな特別塗装機に代表されるように複雑なペイントも可能になっています。その時代を表すデザイン、塗装があるという目線で見てみると、意外と新たな発見があるかもしれません。
外出しにくい今だからこそ、時間のある時にネット上で、細かな違いを見つけて実際に機体をみる時の予習はいかがでしょうか。今回は、ユナイテッド航空の歴代塗装のうち、日本路線を就航した1980年代の少し前、1970年代を第1世代としてそれ以降の全6種類を一気に振り返ってみます。
■第1世代:〜1974年
こちらが「スター・アンド・バー」塗装です。中でも機首横並びに垂直尾翼に4つの星から「フォースター」とも呼ばれます。青色の真っ直ぐなライン、機体下部から後ろに伸びる赤いラインが特徴で、このデザインはジェット機への移行する前後の1957年ごろから登場し、727、737-200、DC-8などの導入にあわせて確立されてきたデザインです。
また、この時代の特徴として、シルバーボディの「ベアメタル」もアクセントとなっています。日本航空(JAL)は貨物専用機、アメリカン航空も後にシルバーが印象的なポリッシュドスキンを採用していますが、こうした飛行機の塗装は「鉄が空を飛ぶ」という印象を作ったのかもしれません。
■第2世代:1974年〜1993年
通称「チューリップ」と呼ばれるレインボー塗装です。この時から2010年の第4世代まで、ユナイテッド航空のロゴに採用されたチューリップが尾翼に描かれます。このチューリップはユナイテッドの「U」を赤と青で表しています。第1世代から赤と青のラインを引き継ぎ、オレンジを加えたことから、レインボー塗装と呼ばれます。機体全体は前のシルバーボディから白が塗られました。
この時代に「UNITED」のロゴはチューリップと共に、1988年までは小さく、それ以降は大きく描かれるようになりました。この変更は747に代表されるように機体が大きくなったことも要因かもしれません。
この塗装は期間が長く、海外旅行バブルの真っ盛りだったため、「ユナイテッドといえばこの塗装でしょ〜!」という方も多いかもしれません。ロゴの変更にはお気づきでしたか?
■第3世代:1993年〜2004年
第3世代は、通称「バトルシップ」と呼ばれます。この世代はカラーがグレーとなり、赤いラインは細くなっています。また、機体下部は濃紺が塗られ、落ち着いたカラーリングです。
垂直尾翼にチューリップマークは引き続き描かれていますが、若干小さくなっています。第2世代と比べると、レインボーカラーとなったオレンジ、赤、ブルーのラインは細くなり、機体下部の濃紺と青のラインが見分け付きにくい模様です。
最近ではステルス機の被視認性を下げるロービジ塗装のよう考え方でもあり、グレーは「軍艦」を想起させるカラーリングです。
■第4世代:2004年〜2010年
第4世代は、「ライジングブルー」です。第3世代から打って変わり、明るく白を基調したカラーが採用されました。この代から赤のラインがなくなり、青がメインになりました。青も胴体下部は濃紺で、胴体中央部分のレインボーカラーからブルーのみで白に変化していくグラデーションに変わりました。
長らく機体に描かれてきたチューリップは、青と赤のロゴは機体胴体の「UNITED」の文字の前に小さいサイズが配置されました。垂直尾翼は、グラデーション化された大きいサイズの白いチューリップがデザインされました。
■第5世代:2010年〜2019年
第5世代の塗装は、通称「グローブ」あるいは「ユニコーン」と呼ばれています。コンチネンタル航空との経営統合で、長年使用されたチューリップロゴは姿を消しました。垂直尾翼は、コンチネンタル航空が使用していたデザインをそのまま受け継ぎ地球儀が描かれました。尾翼だけでコンチネンタル航空とユナイテッド航空を区別するクイズが出たら、間違いなく正解を出せる人は少ないのではないでしょうか?
また、この第5世代の塗装は、コンチネンタル航空の塗装を引き継ぎ、ロゴはユナイテッド航空を冠していることも特徴です。経営統合時は対等合併とされ、本社はユナイテッド航空の所在するシカゴに置かれましたが、外から見ているとコンチネンタル航空のカラーが強かった理由は、こうした目に見える部分でユナイテッド航空が消えたことが大きいかもしれません。
さらに、2012年に導入された787には、胴体中央に描かれたゴールドのラインが直線から流線型に変更されています。
■第6世代:2019年〜(最新)
最新の塗装は、「ユナイテッド・ブルー」と呼ばれています。第5世代の地球儀を踏襲しつつ、淡いブルーでまとめられています。3種類のブルーをグラデーションで重ね、コンチネンタル航空から引き継ぐ伝統的な地球儀のロゴをスカイブルーで目立つように配置し、約60カ国に就航する路線網を表現しています。
787で採用され、現在では航空各社の機体デザインのトレンドである、機体下部のラインが曲線化され、特に主力機材の787、777とマッチする塗装です。胴体は白ですが、ブルーのラインで区切られた機体の下半分はランウェイ・グレー色になっています。第5世代の787と比べると、機体下部のラインは少し下の位置に移動されていることが分かります。
2021年4月現在、ユナイテッド航空は羽田、成田発着の定期便を運航、中部国際空港(セントレア)と関西国際空港、福岡空港発着のグアム線は運休しています。新塗装と旧塗装が入り乱れる今だからこそ、空港での撮影に新旧どちらが飛来するかを楽しみながら見ることができそうです。