大韓航空HL7534のエンジン火災、製造時に段差で低サイクル疲労

大韓航空HL7534のエンジン火災、製造時に段差で低サイクル疲労

ニュース画像 1枚目:HL7534の左エンジン
© 運輸安全委員会
HL7534の左エンジン

運輸安全委員会は2018年7月26日(木)、羽田空港で2016年5月27日(金)に発生した大韓航空機の重大インシデントに関連し、報告書を公表しました。

これは大韓航空の羽田発ソウル・金浦行きKE2708便、777-300の機体記号(レジ)「HL7534」が12時40分すぎに羽田C滑走路を離陸滑走中、左エンジンに不具合が発生し、離陸を中止し、滑走路上に停止して脱出用スライドを使い、搭乗者を脱出させた事案です。左側の第1エンジンは発煙、破損が確認されています。

報告書では、「HL7534」が離陸滑走時に第1エンジンの第1段高圧タービン・ディスクが破断し、その破片がエンジンケースを貫通し、エンジン火災が発生したと推定しています。この第1段高圧タービン・ディスクの破断は、エンジン製造時に第1段高圧タービン・ディスク後面のU字型溝部分の加工で、許容値を超える段差が生じたと見ています。

この段差がエンジン使用中、低サイクル疲労による亀裂が発生、進展したことが考えられると分析しています。また、段差が発見されなかったことては、エンジン製造者による製造時検査で見逃された可能性、さらに亀裂の未発見は大韓航空がエンジン使用中の整備でディスクの非破壊検査の際に見逃された可能性をそれぞれ指摘しています。

第1エンジンの火災発生は、第1段高圧タービン・ディスクの破片がエンジンケースを貫通した際、その衝撃とディスクの破断で第1エンジンが急停止し、エンジンが受けた荷重でエンジンケースに取り付けられていた燃料滑油熱交換器の外側ケースに亀裂が生じ、その亀裂から漏出した燃料と滑油が第1エンジンの高温部に接触して発火したと見ています。

「HL7534」は1998年1月4日(日)の製造で、搭載していたエンジンはプラット・アンド・ホイットニー式PW4090型です。当該のエンジン搭載時期は2014年11月12日(水)で、製造後は41,594時間、9,832サイクル、オーバーホール後は19,474時間、3,781サイクルを使用しています。破損したタービンディスクは2004年10月23日(土)の製造で、ディスク使用サイクルは9,832サイクルです。

すでにアメリカ連邦航空局は、同系列型エンジンに対し、当該ディスク後面の点検を義務づける耐空性改善命令(AD)を2017年3月9日付けで発出しているほか、プラット・アンド・ホイットニーも情報提供と技術情報を発出し、ディスク製造工程を変更しています。

大韓航空も第1段高圧タービン・ディスクの検査を実施しているほか、飛行前の備え付け書類の搭載状況点検を全運航乗務員へ通達し、エンジン停止後に非常脱出を運航乗務員の訓練手順に反映するなど非常脱出に関連する社内規定を見直しています。

メニューを開く