エアバスは2022年1月25日(火)、ベルーガSTを使用し、特大貨物輸送を専門とする新たな事業を開始したと発表しました。この最初のミッションは、2021年12月にエアバス・ヘリコプターズH225型をフランスから神戸まで輸送したフライトでした。この新規事業は、ベルーガSTを利用し、特大貨物の輸送事業を扱う新たな航空会社の設立、独自の運航証明書(AOC)を取得します。ベルーガの日本飛来は22年ぶりでしたが、今後は国内でもこの大型機を見る機会も増えそうです。
「ベルーガ」は現在、エアバスA300型を改造したベルーガST、A330型を改造したベルーガXLの2機種があります。ベルーガSTは1995年に初号機が導入され、25年超にわたり、エアバスの航空機部品の輸送で使用されてきました。ベルーガXLは2020年から運航されている新しい機種で、こちらもエアバスの航空機部品を輸送。いずれもエアバス・トランスポート・インターナショナル(ATI)が運航しています。特大貨物の輸送事業はエアバス以外を扱うため、新たな航空会社が設立され、運航証明書(AOC)も別途、取得します。
エアバスによると、ベルーガSTはおよそ1,500サイクルを運航。最も古い機材は1995年の運用開始から25年超となっているものの、機体寿命は3,000サイクルのため、さらに倍程度の運航が可能と説明しています。このため、新たな特大貨物を専門とする事業にベルーガSTの5機を使用し、市場のニーズに応える方針です。
この事業開始にあたり、コロナ前から特大貨物を扱うフォワーダーなどから需要の研究を重ね、特に産業機械や宇宙関連の衛星ビジネスの需要があると判断。主に、宇宙産業、ヘリコプターメーカー、石油・ガスなどエネルギー系企業、特殊機械、車両、軍用の輸送などに対応できると判断しています。特大貨物は非常にニッチな市場のため、特大貨物を扱うヴォルガ・ドニエプル航空のアントノフなどとは競合しないと見ています。宇宙関連ではアントノフによるエアバス製造の衛星輸送も実施されており、こうした機会にベルーガSTによる日本飛来の可能性も今後、期待されます。
使用する機材は、A300-600型をベースにした機体上部がバブルのように膨らんだベルーガSTの5機です。計画では、2022年は2機、2023年には3機体制となり、2024年には5機に増加します。これは、A330をベースにエアバス向け部品輸送を担うベルーガXLの新機材の導入に合わせ、ベルーガSTを入れ替えるためです。
神戸へのフライトは、フランスのマルセイユでヘリコプターを積み込み、ワルシャワ、ノヴォシビルスク、ソウル・仁川を経由し、関西国際空港で通関手続きを経て、神戸に到着。神戸では積荷のH225を降ろしたのち、ソウルを経由して、同じ経路を戻りました。マルセイユを12月21日に出発、フランスに戻る12月28日まで丸8日間のフライトでした。神戸でH225を貨物室から取り出した際には、ローターブレードを外したのみで、機体を分解することなく輸送してきました。今後の特大貨物輸送でも、同様に最小限の変更で搭載する積荷に対応します。