【航空自衛隊 那覇基地】F-15機付長に1日密着(1)、“最強”たる飛行隊のプリフライト・チェック

【航空自衛隊 那覇基地】F-15機付長に1日密着(1)、“最強”たる飛行隊のプリフライト・チェック

ニュース画像 1枚目:航空自衛隊 那覇基地 第304飛行隊 F-15機付長に1日密着
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航空自衛隊 那覇基地 第304飛行隊 F-15機付長に1日密着

南西方面の防空任務を担当する航空自衛隊 南西航空方面隊の第9航空団は那覇基地に所在し、F-15戦闘機の部隊である第204飛行隊と第304飛行隊がその防空任務にあたっています。那覇空港では国内外の民間機のほか、F-15戦闘機などの自衛隊機の姿をよく目にします。その那覇基地のF-15の任務は、南西域の領空を侵犯するおそれがある外国籍の航空機に退去を警告したり、場合によっては飛行場へ強制着陸させるなどの対領空侵犯措置(スクランブル)です。その対領空侵犯措置のために、24時間365日、F-15のパイロットと整備員は常に那覇基地でスタンバイしています。

通常、平日に1〜3回程度の飛行訓練を行なっています。そのF-15の飛行訓練を行う第304飛行隊の整備小隊に1日密着取材しました。今回は、F-15戦闘機 948号機「航空機番号:42-8948」の「機付長」である第304飛行隊整備小隊 近藤3曹の姿を追いました。

機付長とは?

航空自衛隊では、航空機1機に対してひとり、整備責任者=「機付長」(きづきちょう)が割り当てられています。いわゆる“マイ戦闘機”を持つ「機付長」は、若手の目標であり優秀な整備員なのです。「機付長」になると、自分の名前が担当するF-15の機体に記されます。かつて、民間航空会社でもこの制度が導入されており、日本航空(JAL)では2000年代初頭まで導入されていました。

ニュース画像 1枚目:コックピット横「CC SSgt KONDO,Y.」:F-15戦闘機 948号機の機付長である近藤3曹の名が!【CC:機付長(Crew Chief) SSgt:3等空曹(Staff Sergeant) 】
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コックピット横「CC SSgt KONDO,Y.」:F-15戦闘機 948号機の機付長である近藤3曹の名が!【CC:機付長(Crew Chief) SSgt:3等空曹(Staff Sergeant) 】
ニュース画像 2枚目:第304飛行隊 整備小隊 近藤3曹
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第304飛行隊 整備小隊 近藤3曹

第304飛行隊 整備小隊の整備とは?

今回取材する第304飛行隊 整備小隊は、F-15が日々安全に問題なく運用することができるように点検や簡易な修理など、運用面をささえる「列線整備」と呼ばれる整備を担当しています。その他の”整備”として、飛行時間や年数で行う定期的な点検や整備は「支援整備」と呼ばれ、整備補給群 検査隊が、その役割を担っています。(現在、列線整備と支援整備の一元化に向けて、整備小隊は飛行隊から検査隊に移行中です。)

ブリーフィングからスタート

F-15の飛行訓練を前に、整備小隊でのブリーフィングからスタートします。ブリーフィングの開始は、当日の訓練のフライトスケジュールにあわせて、開始されます。約30名ほどの隊員がブリーフィングに参加し、1日のスケジュール、使用する機体、連絡事項、注意点など伝えられ、身が引き締まります。

ニュース画像 3枚目:航空自衛隊 那覇基地 第304飛行隊 飛行前点検のブリーフィングに潜入
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航空自衛隊 那覇基地 第304飛行隊 飛行前点検のブリーフィングに潜入

整備員待機室の壁には、『第9航空団 司令指導方針「最強」が示され、格納庫へ続くドアには、第304飛行隊の部隊マークの“天狗”の姿と共に、当日の安全強調項目「相互補完 積極的な声かけ」とのスローガンが掲げられていました。

ニュース画像 4枚目:第304飛行隊 整備小隊 整備員待機室
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第304飛行隊 整備小隊 整備員待機室

F-15 ハンガーアウト

ブリーフィング後、最初の作業は、飛行訓練に向け、F-15を格納庫から駐機ポイントへ移動させます。作業に入ると、「訓練は常に本番のため」との意識のもと、気持ちを引き締めた様子で、黙々と準備に取り掛かっていました。

ニュース画像 5枚目:第304飛行隊 F-15戦闘機 飛行訓練へハンガーアウト
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第304飛行隊 F-15戦闘機 飛行訓練へハンガーアウト

作業開始の合図とともに、格納庫のF-15が次々と牽引車(トーイングカー)を使って、駐機ポイントへ並べられました。トーイングカーを運転するのは整備員の役割。また並行してさまざまな準備も行われました。

ニュース画像 6枚目:飛行訓練に臨むF-15戦闘機
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飛行訓練に臨むF-15戦闘機

F-15戦闘機 飛行前点検

駐機ポイントに移動したF-15は、飛行訓練のための飛行前点検(プリフライト・チェック:PR)に入ります。基本、1機に対して2名の整備員で担当。点検項目が書かれたハンドブックサイズの技術指令書を所持し、現場でも確認できるようになっています。そのハンドブックは文庫本サイズで厚さ10cm弱、そのチェック項目は数百項目にのぼります。

飛行前点検では、これまでの機体の整備記録を確認し、燃料、オイル、酸素などの補給状況を確認します。通常、飛行訓練の終了後に不具合箇所の修復や給油を完了させていますが、時間の経過による問題が発生していないかなどを確認することも、重要な確認事項です。

整備員は、機体の各部を目視、触手、打音などで点検しながら、ネジの緩み、オイルの滲み、小さな亀裂(クラック)などのささいな異常も見逃さないように入念にチェックを重ねます。ささいなことであっても見落としてしまうと、重大な事故に至る可能性があり、そのチェックは重要とのことです。

ニュース画像 7枚目:F-15戦闘機 飛行前点検の様子
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F-15戦闘機 飛行前点検の様子

タイヤの空気圧を測定し、規定値であるか確認します。一般的な車に使われるタイヤには空気が使われ、水分や酸素を含みます。水分は劣化や膨張、酸素は火災や爆発の危険性があるため、過酷な条件の戦闘機のタイヤにはメンテナンス性に優れている窒素ガスが使われています。

ニュース画像 8枚目:F-15戦闘機 タイヤの窒素圧チェック 飛行前点検の様子
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F-15戦闘機 タイヤの窒素圧チェック 飛行前点検の様子
ニュース画像 9枚目:F-15戦闘機 飛行前点検の様子 目視、触手、打音などで点検
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F-15戦闘機 飛行前点検の様子 目視、触手、打音などで点検

整備点検項目で定められている項目を、一つ一つ確実に確認・点検を行います。

ニュース画像 10枚目:F-15戦闘機 飛行前点検の様子 コックピット内
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F-15戦闘機 飛行前点検の様子 コックピット内

コックピットでは、各スイッチが所定の位置に設定されているのかなどの確認のため、整備員も着座してチェックを行います。飛行前点検では電源車を用意せずチェックします。

ニュース画像 11枚目:F-15戦闘機 飛行前点検 エアインテーク内へ入り確認する
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F-15戦闘機 飛行前点検 エアインテーク内へ入り確認する

F-15には、F100ターボファンエンジンが2基搭載されています。飛行前点検ではエアインテーク内部にも入りこみ、目視によるファンの確認などが入念に行われます。

ニュース画像 12枚目:F-15戦闘機 飛行前点検 整備記録をつける様子
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F-15戦闘機 飛行前点検 整備記録をつける様子

近藤3曹が今回担当したのは、F-15 927号機「航空機番号:12-8927」。数百にのぼるすべての整備項目を確認・点検を行い、終了後1機ごとに用意されている整備記録に整備内容を記載します。その後、整備小隊長 川岸2尉による確認が行われます。整備記録の報告・確認を受け、飛行前点検が完了しました。

ニュース画像 13枚目:第304飛行隊 整備小隊長 川岸2尉による整備記録のチェック
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第304飛行隊 整備小隊長 川岸2尉による整備記録のチェック

F-15戦闘機 予備機のプリタクシー・チェック

飛行訓練に使われる機体以外に、予備機も用意されます。エンジンスタート後に故障や不具合が確認された場合に、すぐに乗り換えて訓練を継続するためです。飛行前点検の直後に、予備機のみ離陸前の作動確認としてプリタクシー・チェックを行います。エンジンをスタートさせ、タクシーアウトする前までの一連のチェックを行います。パイロットと整備員が連携し、スタビレーター、ラダー、フラップ、スピードブレーキなどの動作点検を行います。

ニュース画像 14枚目:F-15戦闘機 プリタクシー・チェック 後方からエンジンの様子をチェック
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F-15戦闘機 プリタクシー・チェック 後方からエンジンの様子をチェック
ニュース画像 15枚目:F-15戦闘機 プリタクシー・チェック 異常がないか入念にチェック
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F-15戦闘機 プリタクシー・チェック 異常がないか入念にチェック

F-15戦闘機 飛行前点検 完了後は?

予備機のプリタクシー・チェックが終わると、F-15の飛行訓練が開始されるまで、束の間の休憩が整備員に訪れます。当日は30度を超える暑さの中で駐機場はそれ以上の暑さに。整備員待機室に戻り、水分補給を行い、フライトの時間を待ちます。この時間は、和気あいあいとした普段の隊員の笑顔が戻っていました。

この日は、米空軍の演習「レッド・フラッグ・アラスカ23」に参加した隊員からのお土産を配るシーンもあり、休憩時間はアットホームな雰囲気で先ほどまでの作業とはまったく違った空気です。整備小隊では男性の整備員が多いですが、近年女性整備員も増えているとのこと。4年目になる藤堂士長は、整備小隊内でもムードメーカー的な存在で、地元沖縄出身。小さな頃から空飛ぶF-15を見ながら育ち、その整備に興味をもったそうです。その希望通りにF-15整備を担当し、責任感も持ちつつ楽しくその任務に取り組んでいるようでした。

ニュース画像 16枚目:航空自衛隊 那覇基地 第304飛行隊 整備員待機室での様子 | 笑顔の藤堂士長
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航空自衛隊 那覇基地 第304飛行隊 整備員待機室での様子 | 笑顔の藤堂士長

次回は、いよいよ飛行訓練に向かいます。飛行前点検を終えたF-15に、パイロットたちが乗り込ます。エンジンを始動させますがすぐに飛行することはなく、さらに様々な安全へのチェックや確認が行われます。整備員とパイロットが連携して行う点検の様子をお伝えします。

次回:【航空自衛隊 那覇基地】F-15機付長に1日密着(2)、プリタクシー・チェックから離陸へ

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