エアバスD&S、火星探査機エクソマーズの耐熱シールドの製造を完了

エアバスD&S、火星探査機エクソマーズの耐熱シールドの製造を完了

エアバス・ディフェンス・アンド・スペースは2014年7月8日、火星探査機エクソマーズ(ExoMars)計画のひとつ、トレイス・ガス・オービターに搭載される突入・降下・着陸実験モジュール「スキャパレリ」の耐熱シールドの製造を完了したと発表しました。

エクソマーズは欧州宇宙機関(ESA)とロシア連邦宇宙庁(ロスコスモス)が開発中の火星探査機で、大きく2回のミッションが計画されています。

まず最初は、火星軌道を周回して大気を観測する衛星トレイス・ガス・オービターと、火星着陸機スキアパレッリからなる計画で、両機は一緒に2016年1月に、ロシアのプロトンMロケットで打ち上げられる予定です。そして2回目は、火星表面を探査する探査車と、それを火星地表に降ろす着陸機からなり、こちらは2018年に打ち上げが予定されています。

今回製造が完了したのは、1回目のミッションで打ち上げられるスキアパレッリに搭載されるものです。火星の大気圏に突入する際の空力加熱から、内部の機器を保護する役目を担っています。シールドは大きく2枚あり、前部にあるものは直径2.4メートル、質量は80キログラムで、90枚のタイルからなり、1,850度もの高熱に耐えることができます。後部シールドは着陸のためのパラシュートを収納しており、質量は20キログラムで、12種類、93枚のタイルから構成されています。今後このシールドは、探査機本体を製造しているタレス・アレーニア・スペースに送られます。

スキャパレリという名前は、19世紀のイタリアの天文学者ジョヴァンニ・スキャパレリに因んで付けられました。スキャパレリは望遠鏡で火星の観測を行い、当時としては精密な、火星の地図を作りました。その際、火星の表面に見える模様に、「溝」や「水路」を意味するイタリア語の「canali」という名前を付けますが、後に英語へ翻訳されるときに「運河」を意味する「canal」と間違って訳されてしまい、「火星人が運河を造った」という考えが広まりました。その後ヴァイキングなどの探査機による観測により、火星に文明がないことは周知のこととなりますが、H・G・ウェルズの『宇宙戦争』と合わせて、19世紀末から20世紀始めにかけて起こった火星ブームの火付け役となりました。

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