全日空(ANA)はいよいよ2022年7月1日から、世界最大の旅客機エアバスA380型「フライング・ホヌ」を成田/ホノルル線で運航再開します。ホノルルへ向かう前、6月24日から25日にかけてA380の機体洗浄が実施されました。作業はANAが保有する3機のうち、2号機(レジ:JA382A)で、1号機(レジ:JA381A)も6月27日に実施します。隅々まで磨き上げられた2機は、7月1日に1号機、7月2日に2号機がそれぞれ成田からホノルルへ飛び立ちます。深夜に行われた2号機の洗浄作業は実に1年2カ月ぶり。作業にあたった羽田空港グランドサービスの井上氏は、旅客に綺麗な飛行機を楽しんでもらうのはもちろん、「(空飛ぶウミガメの名の通り)楽しんで飛んでもらえるよう送り出したい」と思いを込めて業務にあたったと言います。今回は、その超大型機の作業に密着した様子をレポートします。
そもそも機体の洗浄作業はA380を含め多くの場合、通常100日程度のサイクルで実施されています。2号機の洗浄は定期便運休にあわせお休みし、2021年4月29日以来です。洗浄作業の人数・時間は、ANA保有機種でボーイング737型が9名で2時間、ボーイング777/787型が9名で4時間のところ、A380は15名で約6時間です。作業人数・時間が多く、使用する水量も増えます。作業内容や汚れによるものの、1回の洗浄に使う水だけで737の3.5倍、量はおよそ20〜30トンです。人も作業量も超大型機ゆえに大変です。
今回の2号機は、洗浄のプロ・井上氏の目にから汚れの特徴は大きく3つあるそう。第1に、成田空港周辺のピーナツ畑からの土埃、杉の木の花粉の付着による汚れが多いこと。第2に、汚れが縦に着いていること。第3に油汚れが少ないこと。井上氏によると汚れは飛んでいないことを端的に示しています。定期便で運航されている場合、飛行時の油汚れとともに、汚れは流れるように横につくのが一般的です。特に、油汚れは降着装置(ランディング・ギア)の潤滑油が着陸時の衝撃で飛び散り胴体に付着する傾向があります。汚れが縦、油汚れより土の汚れが目立つ状態は、洗浄のプロたちからすると、飛ぶ機会が少なかったことが分かるそうです。
洗浄作業は、センサーやビトー管などのカバーを済ませてから始まります。
洗浄そのものは、水をかけて汚れを落ちやすくし、薬剤をつけて長さが異なるモップ、パット、ブラシの3種類を使い分けて磨き上げます。再び水をかけて綺麗ならば次のエリアへ、汚れが残っている場合は再び薬剤をつけて磨き上げと、綺麗になるまで繰り返します。土埃や花粉が付着しているため、薬剤は土埃が落ちやすいものが多く使用されました。
A380の洗浄作業で大変な部分は、垂直尾翼の最高点は約24メートル、かつ水平尾翼が複雑に絡みあう場所。ここはオペレーターと監視員が普段より細心の注意を払いながら高所作業車の位置を細かく確認しながら、作業を進めています。主翼は表面積も大きく、最大6メートル伸びるパットを使いこなしながら、丁寧に汚れを落としていきます。
A380導入当初は7〜8時間かかった洗浄作業でしたが、現在は何度かの作業を経て6時間と短くなったものの、深夜から明け方までと長丁場の作業です。
■洗浄作業の前 ■洗浄作業の後6月27日にももう1機が洗浄されます。
■ANA「フライング・ホヌ」3機並び磨き上げられた綺麗な姿の「フライングホヌ」は7月1日、いよいよホノルルへ向かいます。