ハイフライ航空のA330、3方向の新たな翼端装着 テストフライト

ハイフライ航空のA330、3方向の新たな翼端装着 テストフライト

ニュース画像 1枚目:新たに開発された翼端部品、上・中・下に分かれたマルチフィンガー・ウイングチップ「TRINITAIR」
© Hi Fly
新たに開発された翼端部品、上・中・下に分かれたマルチフィンガー・ウイングチップ「TRINITAIR」

民間航空機の翼端は、燃料消費量を削減する鍵を握る部分として、飽く無き研究・探求が続けられています。チャーター便運航で知られるハイフライ航空は2021年5月31日(月)、保有するエアバスA330型機に新たな翼端「TRINITAIR(トリニトエア)」を装着し、テストフライトを実施すると発表しました。消費燃料の削減と二酸化炭素排出量の削減を目指す取り組みです。

翼端には従来から、小さなウイングチップが取り付けられていましたが、消費燃料の削減を目的に2000年代にはボーイングの製造機、特に737シリーズに「ウイングレット」を装着する機体が多く見られるようになりました。これはウイングチップと比べると第2の翼とも呼べる大型の部品で、主翼先端に上向きで取り付けられ「ブレンディッド・ウィングレット」と呼ばれています。形状に若干の違いはあるものの、エアバスでは「シャークレット」と呼ばれています。

さらに、2013年ごろにブレンディッド・ウィングレットが発展。上方向だけでなく下方向にも同様に大型の翼を装着し、翼端を真横から見ると三日月型に見える「スプリット・シミタール・ウィングレット」が登場しました。このウィングレットは737 MAXに標準で搭載され、燃費性能を高める特徴の1つとされています。

ニュース画像 1枚目:TRINITAIR 装着イメージ
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TRINITAIR 装着イメージ

今回、発表された新たな翼端「TRINITAIR(トリニトエア)」は、画像や「TRI」から想起できるように3本で構成された部品、マルチフィンガー・ウイングチップです。横から見ると前方は上、中央は主翼から少し上向き、後方は下向きの角度に配置されています。発表によると、燃料消費量を最大で2%削減でき、特定の用途ではさらに削減が可能と紹介されています。燃料を1キログラム(kg)節約すると、二酸化炭素排出量は3.16kg削減できることから、特に環境問題を意識した取り組みでもあります。

例えば、フランクフルト/香港間を90トンの積載量で飛行する場合、飛行時間は11時間、消費燃料は83トンです。翼端「TRINITAIR(トリニトエア)」を装着すると、燃料は1.2トン節約でき、二酸化酸素排出量は3,800kg分を削減できます。

「TRINITAIR(トリニトエア)」の開発は、ドイツのエアクラフト・パフォーマンス・カンパニー(The Aircraft Performance Company GmbH:APC)が手掛けました。まず、エアバスA320型機向けに2017年から、マルチフィンガー・ウイングチップを念頭に初期設計に着手。A330向けマルチフィンガー・ウイングチップの設計は2018年に着手し、2019年には風洞試験に移行。特許を2020年に取得し、APCがプロトタイプの製作をはじめ、テスト飛行に向けた準備、追加型式証明(STC)の取得に向けた手続きを始めていました。

この新たな翼端「TRINITAIR(トリニトエア)」の搭載作業は1日程度で、機体の稼働時間を高めたい航空会社にとっても作業が簡単で、すぐに燃料削減や環境面で効果のある施策を講じることができる施策として、今後広く提案される予定です。ハイフライの機材を使ったテストフライトには、エアバスA380型を導入時に特別塗装を施したミルプリ財団も参加し、地球温暖化防止・温室効果ガス削減プロジェクトとして環境問題に取り組みます。

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