2021年3月17日(水)に退役した航空自衛隊の戦闘機・偵察機「F-4ファントムⅡ」。偵察機としてのRF-4E、RF-4EJは2020年3月までに運用を停止、スクランブル(緊急発進)任務機としてのF-4EJ、F-4EJ改は、空自で最初にF-4部隊として活躍した第301飛行隊(旧百里基地)が2020年12月で運用を終了。岐阜基地の飛行開発実験団の配備機が3月17日(水)、退役しました。
F-4の後継機は、F-35AライトニングIIでレーダーから消えるステルス性能を備え、低視認性が求められ、これまでのような派手な機体塗装は施されません。今回F-4が完全退役するにたり、FlyTeamに投稿された2.2万枚以上の空自のF-4航空フォトの中から、2011年以降を中心に印象に残るF-4スペマ(特別塗装機)航空フォトをご紹介します。
■F-4導入1番機「17-8301」飛行開発実験団
日本で初めて導入されたF-4EJ。1971年にマクドネル・ダグラスから受領し、飛行開発実験団でF-4ファントム全機退役に至るまで、運用されました。任務完遂を記念し、白い文字でさりげなく機体側面に「Phantom Forever」の塗装が施されています。2021年3月に発売されたオリジナルフレーム切手にも登場しました。
■第301飛行隊 最後の記念塗装機「07-8436」 F-4EJ改
全機退役まで1年を切った2020年4月、第301飛行隊の最後の記念塗装機「07-8436」のF-4EJ改が公開されました。メタリックブルーを基本に、垂直尾翼と主翼下面にF-4ファントムのキャラクター「ファントム ザ スプーク」を大胆に描写、インテーク(空気流入口)には、F-4が配備された歴代飛行隊マークが忠実に再現されています。
主翼上面には、「Thank You Phantom Ⅱ」、そして運用された期間を表す「1971~2020」の文字が。
主翼下面に描かれた「スプーク」は、こちら。(下記の写真は、航空自衛隊百里基地の公式Twitterから)
F-4のイメージキャラクター「ファントム ザ スプーク」は、マクドネル社の技術デザイナー、アンソニー・「トニー」・ウォンさんがもともと肩章用に作った、魔法使いのような帽子を被った、お化けのキャラクターです。「スプーク(spook)」は英語で「幽霊」を意味し、F-4のキャラクターとして、F-4やF-4関連アイテムに描かれています。なお、F-4の愛称「ファントム(phantom)」も「亡霊・幽霊・幻」を意味します。
■第301飛行隊 退役記念塗装機 「37-8315」F-4EJ改
機体側面には「Go for it!! 301sq」、垂直尾翼には部隊マークの「カエル」が大きく塗装されています。全体に描かれる黄色は、カエルがまとっている黄色のスカーフをイメージしているそうです。
マフラーの中に描かれた星は、第301飛行隊の所属航空団を示し、左翼の星5つは第5航空団(新田原基地時代)、右翼の星7つは第7航空団(百里基地時代)を表しています。「Go for it」は、日本語で「頑張れ(頑張る)」「目標に向かって最大の努力をする」という意味です。第301飛行隊の気合を感じます。
2019年に販売されたオリジナルフレーム切手「2019百里基地航空祭」にも登場しました。
■第302飛行隊 退役記念塗装機
ブラック:「77-8399」F-4EJ改
ホワイト:「07-8428」F-4EJ改
「ファントムと共に去りゆくオジロワシ」をテーマに、部隊マークのオジロワシを機体全面に描いた派手な塗装機です。これを目当てに航空祭を訪れた方は多かったはず。
胴体には「302sq F-4 Final Year 2019」の文字。主翼上面には「スクープ」も。
これらのオジロワシ塗装も、2019年に販売されたオリジナルフレーム切手「2019百里基地航空祭」にも登場しています。
■第501飛行隊 特別塗装機「57-6909」「47-6905」RF-4E
偵察機RF-4Eの退役前に公開された特別塗装機です。機体後方の尾翼につながる様に茶色のラインで「1961-2020」と飛行隊の歴史を記し、インテーク(空気流入口)付近には「スプーク」がカメラを持って登場。「THANK YOU FOR YOUR SUPPORT」と感謝の言葉を刻んでいます。
■各務原飛行場100周年「デジタル迷彩」塗装機 飛行開発実験団「87-8409」F4EJ
飛行開発実験団が掲げる「空の勝利は技術にあり。」という信念(PASSOPN WIND)を表現し、過去の戦闘機と同系色である暗緑色を基調としたデザインです。2021年3月に発売されたオリジナルフレーム切手にも登場しました。
旧日本軍で運用された三式戦闘機「飛燕」や零式艦上戦闘機「零戦」を思い起こさせると、SNSでも話題になりました。
機体下面には、筆文字で「各務原飛行場百周年」。
■飛行開発実験団60周年記念塗装「ブラックファントム」「47-8336」F-4EJ
飛行開発実験団60周年記念塗装「ブラックファントム」は、2015年10月の岐阜基地航空祭にあわせ、F-4EJ「47-8336」で披露されました。2016年5月には通常の塗装に戻り、およそ7カ月と短い期間でしたが、人気の高い塗装でした。
かつて飛行開発実験団に所属し、2015年7月にロシアのソユーズで国際宇宙ステーションに向かった油井宇宙飛行士にちなみ、宇宙をイメージした塗装が施されました。
機体下部には、飛行開発実験団が掲げる「空の勝利は技術にあり。」という信念(PASSOPN WIND)が描かれています。
「ブラックファントム」は、2021年3月に発売されたオリジナルフレーム切手にも登場しました。
■第302飛行隊 創立40周年記念塗装機「77-8400」F-4EJ改
退役記念塗装と色合いが少々似ていますが、全面ブラックで機体に大きくオジロワシを描いた塗装機です。燃料タンク(増槽)には、オジロワシの足、そして第302飛行隊が創設されてからの期間「1974-2014」が描かれています。40周年を記念して400号機が選ばれ、塗装されました。
■第301飛行隊 創立40周年記念塗装機「77-8398」F-4EJ改
紺色の機体に、赤、白、金によるマーキングが映える記念塗装機です。胴体には大きく「301」、垂直尾翼には「40th ANNIVERSARY」と記されています。第301飛行隊はF-4EJを運用した最初の飛行隊で、胴体にはそれを表す「PHANTOM MOTHER SQUADRON (ファントム・マザー・スコードロン)」の表記も。
■第302飛行隊 F-4飛行隊誕生40周年記念塗装機 「67-8388」F-4EJ改
「日本のファントム40周年」を記念する特別塗装機です。機首にはシャークティース、機体側面にはF-4キャラクター「ファントム ザ スプーク」。そのマントの中に「The origin of 侍 Phantom」の文字が記されています。
また、主翼下の燃料タンク(増槽)には、これまでF-4を運用した部隊マークが9つデザインされています。
部隊マークは以下の通り(写真の左側から)。部隊マーク | 飛行隊 |
---|---|
マフラーをしたカエル「ケロヨン」 | 第301飛行隊 |
尾白鷲 | 第302飛行隊 |
龍(ファイティングドラゴン) | 第303飛行隊 |
天狗 | 第304飛行隊 |
梅花 | 第305飛行隊 |
イヌワシ(ゴールデンイーグル) | 第306飛行隊 |
黒豹(ブラック・パンサー) | 第8飛行隊 |
ウッディー・ウッドペッカー | 第501飛行隊 |
水色の円に稲妻のようなマーク (衝撃波と人工衛星の軌道がモチーフと言われている) | 飛行開発実験団 |
■第8飛行隊 創設40周年記念塗装「67-8384」F-4EJ改
全面ブラック色で、機種には部隊マークのクロヒョウ「ブラック・パンサー」、燃料タンク(増槽)には歴代の部隊マークが描かれています。ブラック塗装にブラックパンサー、カッコイイですね。■番外編 「スペマじゃのーてすまんのぉ。」
この機体!という写真ではありませんが、こんなフォト投稿も。SNSで人気となった、航空自衛隊のF-4EJ改「ファントム」をキャラ化した「ファントムおじいちゃん」がF-4機内に!!! 少々見切れていますが、「スペマじゃのーてすまんのぉ。」の右側に写っているのは「ファントムおじいちゃん」のぬいぐるみだと思われます。「スペマじゃのーて」も撮影する価値がある、あるいはファントムへの愛を感じるフォトです。
数あるF-4塗装機の中から、FlyTeamに投稿された一部の航空フォトをご紹介しました。全機退役を前にした2020年は、新型コロナウイルスの影響で記念行事や航空祭の多くが中止となり、多くの人が直接、F-4を見る機会が少なかったのが残念でなりません。空を飛ぶ姿を見られなくなるのは寂しいですが、およそ50年間に渡り日本の空を守ってくれたF-4ファントムに、航空ファンからは「おつかれさま」との温かい声が寄せられています。